転校生 (Zeppブルーシアター六本木)

8月23日(日)に、Zeppブルーシアター六本木で

「転校生」

(脚本:平田オリザ、演出:本広克行)

を観劇。

午後1時開演。前日の夜が初日で、これが2ステージ目。

公演プログラムは、600円。

上演時間は、1時間20分ぐらい。

Zeppブルーシアター六本木の客席は、12列が最前列になっていた。11列までの客席中央ブロックの位置に張り出してつくられた舞台には「教室」のセット。女子高生たちの机と椅子が並んでいる。この教室の生徒たちの机は、場(この芝居は、全4場)が変わると向きを変える。

客席から見て、舞台の後方=「教室」のセットの後ろ(奥)側は、出演者の楽屋になっていて、化粧前が横一列に並んでいる(ただし両端は縦に3席ずつあるようだ)。

開演前に、観客が客席に入ると、その楽屋と近辺のスペースで、出演者たちがウォーミングアップをしていたり、下手側にあるピアノを弾くキャストがいたり、あるいは鍵盤ハーモニカやリコーダーなど、楽器を奏している子がいたり、数人でおしゃべりをしていたりと、それぞれに開演前の時間を過ごしている様子。早々に衣裳の制服姿になっている出演者もいれば、そうでない出演者もいるが、その客席から見える楽屋は、あくまでも舞台上のそれであって、じっさいにそこで制服にお着替えしたりはしていなかった。

開演が近づくにつれて、衣裳に着替えたメンバーが増えて行き、決まった時刻が来ると、担当のキャストが観客へ向けてのお願いや注意事項などをハンドマイクでアナウンスもする。


セットの上方に吊られたスクリーンの3つが使用され、開演前は、生徒役のキャストの顔写真などが映し出されていたが、開演すると、客席から見て中央の大きなスクリーンには、上演台本が映し出される。「教室」を両サイドから挟むかたちで、カメラがあって、上手と下手に吊られたスクリーンには、主に横から撮った舞台映像が生中継されるが、その左右のスクリーンは、ときに、客席後方からの映像や、舞台真上からの映像にも切り替わる。また、あるときは、そのシーンには出演していないキャストによって、記事(世界の高校生という発表のためのものという設定)の文字が映し出されたりもする。

つまり、この舞台は、客席から見えるものと、スクリーンに映される(別方向からの)生中継の映像と、台本とが同時進行して行く。たとえば、顔と名前が一致しないが気になったキャストを、セリフと(スクリーンの)台本で確認することも可能だし、座席からでは見えないキャストの表情をスクリーンで見ることも出来るのである。多視点で、文字情報もあるので、観客は、そのなかから、そのときに自分が必要と思う情報を取捨しながら、この舞台を見ることになる。


役柄としては、最後のシーンをふたりで演じる「大西由美」と「野本小百合」がやはり印象的だから、桜井美南ファンと清水葉月ファンなら、とくに、見どころも多く、満足度が高いと思う。清水葉月さんのピアノも、開演前と劇中とで、聴けるしね。

この舞台では、「転校生」の大西由美だけがベストを着て登場するのだが、途中から大西由美はベストを着なくなり、その代わりに、舞台の終盤では、転校するかも知れない野本小百合がベストを着て現れる。「転校生」というポジションを、ふたりの間で、視覚的に移動させている。

舞台写真↓参照
https://deview.co.jp/News?am_article_id=2057999


清水葉月さんが演じている「野本小百合」という役は、7月に演った「墓場、女子高生」の「日野」さんと、どこか重なるところが感じられて、それが私には見ていて興味深かった。

「転校生」で野本小百合が大西由美にいう『本当は、そんなに仲良くもないんだよ』というセリフを聴いたとき、「墓場、女子高生」の日野ちゃんがいう『みんなのせいで死ななきゃいけないほど、仲良くはなかったよ』というセリフを思い出して、帰ってから、台本を確認しちゃった。


それにしても、今回の「転校生」の小百合と由美は、客席(観客)からと、舞台上の楽屋(のキャスト19人)からとで、サンドイッチになってラストシーンの演技を凝視されるというかたちでもあり、なかなかシビアな演出をするものだ、と思った。


このテキストは、複数回の観劇後に、少し加筆修正をしてあります。




「転校生」雑感 - かむろのたより