中高年ブラック派遣 人材派遣業界の闇


中沢彰吾「中高年ブラック派遣 人材派遣業界の闇」(講談社現代新書、800円+税)

http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062883146

を読んで、働くということが、どうしてこんなにも困難で屈辱的な時代になってしまったのかと、暗澹たる気分になった。

タイトルや内容に合わせて、表紙カバーも「ブラック」である。


本の内容は、講談社現代新書のサイト(→http://gendai-shinsho.jp/)で、担当編集者氏が分かりやすく紹介している。

『編集担当:MK』とありますが、この本の「おわりに」で、著者が、『本書は、企画構成に関わった講談社現代新書ウルトラマンが泣いている』(円谷英明著)、『向き合う力』(池上季実子著)に続き、講談社学芸部の丸山勝也さんにお世話になりました。』と書いている。

ちなみに、私は、その「ウルトラマンが泣いている」も「向き合う力」も、以前に買って読んだ。


「向き合う力」には、『この本の構成では、ライターの鎌田正明さんにお世話になりました。』とあったから、
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20140813/p5

著者の中沢彰吾というのは、つまり、鎌田正明氏の筆名ですね。経歴(→http://s-enterprise.com/?p=1827)も、合致します。

読みはじめたときは、著者が、中高年の派遣労働の現場に潜入取材して書いた本なのかと思っていたが、「中高年ブラック派遣 人材派遣業界の闇」のなかで、自身のことを、『二〇一四年の年収が一〇〇万円に満たず、預金を食いつぶしている』と書いているので、取材のためという以上に、必要にも迫られて派遣で働いたのだと分かって、ちょっとおどろいた。

ということは、『講演料金の目安 50万円〜100万円』(→http://s-enterprise.com/?p=1827)というギャラで講演を依頼されることはなかったということなのでしょうね。講演料の設定が高すぎますよね。

でも、この本が出たことで、今後は、中高年の派遣労働の現実や人材派遣の問題点についての講演や出演依頼が来るかも知れないから、もっと目安のギャラを下げたほうがいいと思う。(って、これは、まぁ、余計なお世話ですけど)


大阪のテレビ局でアナウンサー、記者をしていたのだから、かなりの収入もあっただろうに、介護のために退職すると、この本に書かれたような状況に陥ってしまうというのが、なんともおそろしい。

著者は、1956年生まれで東京大学卒業だから、その学歴だけでも、いまとは比較にならないほどのエリートだったともいえるよね。テレビ局に在職中は社会問題とも向き合っていただろうに、そんな人物でも、派遣労働の現場では、学歴や職歴を活かすどころか、労働者に対する日常的な違法行為や人権蹂躙に対しても、抗議することすらむずかしく、ほとんど泣き寝入りすることになってしまうという状況が、じつに絶望的である。