芸能人の帽子


中山千夏は、昨年刊行の著書「芸能人の帽子 アナログTV時代のタレントと芸能記事」(講談社、2500円+税)の第3章で、東宝時代のことを書いていて、そこから菊田一夫のひととなりの一端がよく窺える。

「放浪記」の初演時のエピソードもあって、あくまでも、著者の立場と記憶をもとに書かれているので、どこまで真実なのかは分からないが、当初は、林芙美子の同僚の女給の役だといわれていたのが、いざ台本を見ると、行商人の子というだけで名前も付いていない役になっていた、という件りや、その理由についての憶測など、前後の記述には興味深いものがある。

いまの舞台と同じに考えるべきではないとしても、当時の中山千夏さんは、もう13歳になっていたのだから、たしかに、行商人の子を演る年齢ではなかっただろう。

この「芸能人の帽子」という本は、青島幸男について書かれた部分がいちばんの読みどころだと思う。