放浪記(シアタークリエ) 3月25日


3月25日(火)は、シアタークリエで「放浪記」を見た。午後1時開演。


座席は2列目だったが、端に近い位置で、見たいキャストが他のキャストの影になって見えない、というシーンがたびたびあり、やや欲求不満を感じる観劇だった。前方の端の座席からは、普段見えないものが見切れる面白さがあるのだが・・・この日についていえば、第三幕で、ご飯を食べている子役がほとんど見えないのには、困った(苦笑)。

その、行商人の子役は、今津凪沙さんの出演だった。


第二幕のカフェー寿楽の場。日夏京子(黒柳徹子)が遅れてやって来て、白坂五郎(米倉斉加年)の提案で女ふたりの同人雑誌を出さないかという話になったところで、芙美子(森光子)と京子で上野山光晴(丸山博一)をめぐる会話になる。ふたりはかつて伊達春彦(原康義)という役者をめぐっていわくがあったが、いまはともにその役者とは別れて、京子は詩人の上野山と付き合っている。ここで芙美子が「上野山さんさんていいね」というので、京子が「あんたも好きなの?」、芙美子は「いいと思ってるだけ」と笑って冗談にして、このあと「二人」を出すことで意気投合となるのだが、この日は、「上野山さんていいね」のセリフが出なかったのか、間が長過ぎたのか、黒柳お京さんが「あんたも好きなの?」のセリフをいって先へと運んだものだから、そこからアドリブになって、さっき会ったばかりで「いいと思ってるだけ」のはずの上野山のことを芙美子が(京子に)「返すよ」などといって、面白いやりとりになった。

座長さんは、この日は、総じて、セリフをいい直すことが多かった。


「たとえば、この、留置場に入りますね。豚箱。牢屋ですね。そのなかにいる間中、しるこを食べたいとか豆大福を食べたいとか思う。…」
アナトール・フランスだったか、バーナード・ショーだったか、書いてますね。シルクハットに燕尾服の紳士が馬車に乗って走っている。…」

第五幕での菊田一夫のセリフは味わい深いが、上記の、しるこ・豆大福と、シルクハットに燕尾服の紳士の話は、とにかく面白い。(そのうち時間があれば、2005年の舞台中継から、セリフを文字に起こしてみたいものだ) この芝居の菊田一夫役は前任の小鹿番さんがそっくりだと評判だったけれど、私はいちどしか見ていないせいか、いまの斎藤晴彦氏の同役を堪能している。


第五幕といえば、日夏京子から(白坂五郎の死後、彼の友人だった)実業家の後添えになっていると聞いて、芙美子がそのひとはいいひとかと尋ねると、京子が「可もなく不可もなし」と答えるのだが、このとき、日夏京子と安岡信雄(山本學)が顔を見合わすという面白いシーンがあった。
黒柳版お京さんではこの安岡信雄とのちょっとしたシーンはなくなっている模様。




ところで、シアタークリエの劇場スタッフ(案内係)のひとたちは、休憩時間には客席を回ってゴミ(お客さんが食べ終わった弁当やコーヒーなどの容器類など)の回収までしていて、新幹線のグリーン車アテンダントみたいなサービスぶりで、他の劇場にはないことだが、上演作品が「レベッカ」とか、ミュージカルになっても、同じようにするのかしら?

と思いつつ、シアタークリエで「放浪記」を見るのも、いよいよあと1回である。

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シアタークリエ公演の観劇雑感。
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20080315/p1(3/14)
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20080304/p1(2/28)
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20080303/p1(2/19)
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20080221/p1(1/31)
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20080125/p1(1/24)
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20080108/p1(1/7)