放浪記(フェスティバルホール) 初日


10月23日(木)に、フェスティバルホールで、

森光子主演「放浪記」大阪公演の初日を見た。


3月、シアタークリエでの千秋楽以来の「放浪記」観劇である。

今回の大阪公演は、梅田芸術(コマ、飛天)劇場ではなく、クラシックコンサートやバレエの会場として知られるフェスティバルホールでの上演。(新聞記事によれば、フェスティバルホールは、年内をもって閉館し、その後、新しい超高層ビルのなかに新設オープンする予定という)

新大阪で地下鉄の御堂筋線に乗り替え、淀屋橋駅で下車すると、地上へ出てすぐの橋の上からはフェスティバルホールの建物がのぞめる。それを目標に歩いて同ホールまで。


公演プログラムは、1500円。

「放浪記」フェスティバルホール公演の初日は、午後3時開演(大阪公演は、初日以外は午後1時開演)。
25分、10分、5分と普段どおりの幕間があって、上演時間は3時間40分と表示されていたが、初日は、カーテンコールが終了したのが、6時53分くらいであった。


報道によれば、この10月23日の大阪初日で、「放浪記」は、1960回。


出演の子役は、すでに書いた(http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20081023/p2)とおり。近年の「放浪記」ではおなじみのふたりで、初日は、竹内祐稀さんの出演


フェスティバルホールはオーケストラピットが常設されているようで、そこはカバーで覆い、また、舞台の左右を黒い幕で狭めてあって、舞台間口は、1階の座席位置でいうと、L16番〜R16番の間の幅ぐらいになっていた。それよりも外側になってしまう座席(とくに前方の)からはちゃんと舞台が見えたのか、不詳。

舞台の手前、両端にはスピーカー。森光子さんと有森也実さんだけでなく、他の主なキャストもマイク使用。

シアタークリエと同様に盆が回るセット。これは、回り舞台も含めて「放浪記」による仕込みでしょうか。


日夏京子(山本陽子)は、第一幕、本郷の下宿の場は、和服での登場。今年は、シアタークリエ公演での日夏京子役ふたり(高畑淳子黒柳徹子)が、ともに、最初の出の衣裳が洋服だったので、和装がかえって新鮮な印象。

第二幕第一場の、カフェー寿楽でも、日夏京子は和服。これは意外の感。というのも、7月に山本陽子さんが「生活ほっとモーニング(この人にトキメキっ!)」に出演したとき(これ。→http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20080711/p3)に、博多座公演の舞台写真が出て、そこに男装のいでたちで写っていたので、てっきりその衣裳で出ると期待していたので。

その後、第四幕の世田谷の家でも和服、出版記念会が洋服(割りと地味な装いで、ここもちょっと意外の感)、第五幕の落合の家の場は和装、といった変遷。

山本陽子版日夏京子は、第四幕の世田谷の家、南天堂での出版記念会と、いずれも煙草を吸う演技。
第五幕では、庭に出たとき、舞台奥のほうまで歩くなどしていた。

黒柳徹子出演中は「二人」となっていた小道具の同人雑誌は、「ふたり」と従来のひらがな書きの表紙に戻っていた。


他に配役で、シアタークリエ公演と較べて目立った異同は、土木建築の田村伍平役が変更になっていた(若杉宏二→助川汎)こと。助川汎という役者さんは以前から「放浪記」ではおなじみのバイプレーヤーのひとりだけれど・・・若杉宏二さんはどうしたのかしら?

カフェー寿楽の、学生風の客はシアタークリエと同じふたりが演じていたが、田村伍平に喧嘩を売る役が入れ替わっていた(板倉歩→西村雄正)。


座長さんのセリフは不安定で、すぐにセリフが出て来なかったり、詰まったりが何度も。それをひとつひとつ書くことは控えるが、もう、芙美子のセリフに遺漏のない「放浪記」を見ることはむずかしくなってしまった、と思う。とくに、第二幕第二場の女給部屋で、芙美子が悠起(有森也実)を相手に身の上話をする長台詞のときは、ハラハラした。

この日は、第三幕の尾道の場に、いちばん安定感があった。

尾道の場の変更点としては、香取恭助(中島久之)へのお土産を取りにいったん戻るところで、舞台奥から玄関へと回らずに、すぐ下手側にあたる、家の裏手から土産を持って来るように変えていた。これで、芙美子が歩く距離は短くなったことになる。


行商人の子は、この役としては、もうずい分大きい気がするが、竹内祐稀ちゃん、なかなか爽快に食べていたし、そのあと、石垣にも元気よく上がっていた。
恭助が訪ねて来て、芙美子が話をしに外へ出て、舞台が回るのをきっかけに子役のセリフになる。ここの流れは、何度見ても、いい。

いいといえば、第五幕の菊田一夫(斎藤晴彦)も、楽しみどころだ。


それにしても、上演中、客席で携帯電話が鳴り過ぎである。最近の大阪の劇場は、これが普通なのかな?! 私の耳に聴こえただけでも、バイブ音も含めると、あちこちで20回近くも鳴っていた。さらには、上演中に客席で通話しているひとまでいた。


次の私の観劇は、中日劇場。なにはともあれ、また名古屋で見られるのを俟ちたい。