放浪記(帝劇) 5月13日


5月13日(水)に、帝国劇場で、

森光子主演「放浪記」
(林芙美子作品集より、菊田一夫 作、三木のり平 潤色・演出、北村文典 演出)

を観劇。

通算上演回数2003回目になる。午後1時開演。

ダブルキャスト行商人の子は、初日(→http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20090508/p1)と同じ、竹内祐稀さんであった。


第一幕、本郷の下宿・大和館の場の最後について、『電灯を消した芙美子が、横にならずに座って演じるのは昨秋の中日劇場からの変更のまま。』と書いたが、座って演じるのは同じだが、昨年の名古屋の舞台とは演技を変えている。

田村伍平役は、若杉宏二(5月5〜9日)・助川汎(11〜29日)のダブルキャストになっているので、この日は「助川伍平」。(昨秋の「放浪記」も、大阪・フェスティバルホール公演が助川伍平、中日劇場公演が若杉伍平であった)

「助川伍平」は、カフェー寿楽の場で、子分の西原(河合佳昭)にビンタをかましていなかった。喧嘩を売った学生風の客(西村雄生)の帽子を取ったりもしないようだ。


初日と同じで、「森芙美子」が煙草を吸うシーンでは、火は点けていなかった。だからなのだろう、第二幕の女給部屋で、芙美子が煙草に火を点けると、後ろで寝ているともちゃん(松村朋子)が咳き込み、自分の煙草のせいだと思った芙美子が「あ、これだ」といって立ち上がり、煙りを払って下手の椅子に移動する、というところで、「あ、これだ」というセリフをいっていない。

第一、二幕が、予定より数分早く終わった。昨年公演に較べると、座長さんの動きが明らかに軽快なので、それでテンポがよくなっているのかも知れない。4時55分となっていた終演予定も、4、5分早く終わった。


竹内祐稀ちゃんの行商人の子は、ご飯を食べながら茶碗を持ってる左手でときどき口を拭う。


この日は、女給部屋での芙美子の長ゼリフの途中の、楠木正成を祀っている湊川神社のあたりがあやしくなった。
落合の家では、出て来た芙美子が、菊田一夫(斎藤晴彦)へ「あんた、また、すすけたしじいになったね」というところで、なかなかセリフをいわずに笑ったりしているのでどうしたのかと思ったら、「シワシワの顔になったね」。

その第五幕は、含蓄のあるセリフが多い場だが、芙美子が寄付を求めて来た慈善事業について、「貧乏人を助ける会なの。それだったら断わって頂戴。貧乏人は働くよか、しょうがないよ。一個人が個人の力でひとりやふたり助けたってどうにもしょうがない。せいぜいその団体の職員の給料の助けになるだけだから」

というセリフも、しかりである。慈善事業に寄付しても、せいぜいその団体の職員の給料になってしまうのがオチ、ということを、菊田一夫昭和36年にセリフとして書いていたのだねぇ…

いつだったかテレビで、街頭募金の実態を追った特集をやっていて、取材に応えた関係者が、集めた募金から経費(要するに街頭に立っている人間の食い扶持だ)を差し引いた残りをちゃんと寄付している、というようなことをいっていて、大いに呆れたことがある。つまりは募金集めを商売にしているのだが、菊田一夫はそんな現実がいくらでもあるということを芝居のセリフに書いて(林芙美子にしゃべらせて)、何十年も前から見事に批判している。


それにしても、「放浪記」は、面白い。

初日もこの13日も、1階前方のS席での観劇だったが、どちらかひとつの金額でB席を3回分買えばよかったと後悔しきり。今回、「放浪記」の切符を買い控えたのは、取り返しのつかない失態であった。
残るチケットは、あと1回。


今回の公演プログラムの後半「上演二〇〇〇回記念特集」には、(故人を除く)歴代の日夏京子女優のメッセージや色紙が、登場順に載っているが、

過去ログ(http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20050327/1111849495)を参照して、南風洋子さんを入れると…

浜木綿子原知佐子加茂さくら奈良岡朋子いしだあゆみ南風洋子大空眞弓有馬稲子樫山文枝黒柳徹子池内淳子高畑淳子山本陽子

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http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20090610/p1(5月29日千穐楽)