フェアリーバレエ(Fairy Ballet)「くるみ割り人形」雑感


12月15日(土)に、メルパルクホールで、

フェアリーバレエ(Fairy Ballet)「くるみ割り人形を見た。

(台本:本間直樹、演出・振付:膳亀利次郎、大森博史、本間直樹)

過去ログのこの(http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20071201/p2)公演である。


15、16の両日、計2ステージあったうちの、1回目の公演。

公演プログラム、1000円。(表紙込みで、16ページ。今年は、出演の子どもたちが、ひとりずつの写真付きで載っている)

15日は、午後6時開演。上演時間は、(休憩を含めて)2時間30分。


舞台は、昨年同様に張り出し舞台を設置していた(要するに、幕前を、オケピットになる位置まで前方に広く舞台をつくっている)。これは、左右の短い花道(脇舞台)までが広く張り出し舞台の一部になり、花道にあたる部分を使ったキャストの出入りが自然で、また効果的だということが、今回、舞台を見ていて分かった。


昨年見たのと同じような「くるみ割り人形」なのだろうと予想していたが、とんでもない、前回の「くるみ割り人形」よりもいちだんと面白い舞台になっていた。

2006年は、バレエの「くるみ割り人形」の一部シーンを演劇的にして、セリフがあったり、うたをうたったりという場を創っていたのだが、2007年の今回は、もっと、全般に演劇的なシーンや手法が織り交ぜられて、よりバレエと演劇を融合させた舞台になっていた。

第一幕のシュタールバウム家のパーティのシーンで、俳優によるセリフがあったり、子どもたちがうたをうたうのは、昨年の舞台と同様だが、今年は、第二幕に楽隊が登場して舞台で楽器を演奏したり、ハンドマイクでうたうシーン(大森博史、優花えりのおふたりだったでしょうか)があったり、また、パントマイマーの起用や、第二幕の各国の特徴のある踊り(ディヴェルティスマン)で、踊りの間をつなぐ寸劇ふうのやりとりが入るなど、よりエンターテインメントな趣向が加わった。そこまでやるのはちょっと余計では?、と思うシーンがなくもないのだが、全体に、昨年よりも、バレエと演劇の融合度が増して、楽しい舞台になっている。


第一幕のパーティでの、子どもたちの踊りがとてもいい。楽しい!
フェアリーバレエの「くるみ割り人形」では、シュタールバウム家のパーティには、スペイン、アラビア、中国、ロシア、フランス、(それにアフリカと、)各国のお客様が子ども連れでやって来る。「行進曲」の途中に、その各国の子どもたちが、それぞれの国の特徴のある踊り(第二幕のディヴェルティスマン)をダイジェストふうに踊るシーンが挿入されて、これがなかなかの見どころである。

第二幕でも、大人のダンサーによって各国の特徴のある踊りが披露されるが、そこでは曲のアレンジに工夫をして、子どもたちのそれとはちがった雰囲気を出していた。


ねずみたち vs くるみ割り人形(+子どもの兵隊人形たち)の対決シーンも、今年は、ねずみを大人のダンサーで、兵隊人形たちを子どものダンサーと、大人対子供の図式にして対照化したことで、両者の対比が明瞭になって、子どもたちの踊りのかわいらしさもより強調された。ねずみに襲われそうになったクララをくるみ割り人形が助けに入り、ねずみ vs 兵隊人形のダンスになるあたりは、音楽とあいまってなんともエキサイティング。子どものくるみ割り人形&兵隊人形たちの人形振りのユニゾンがたまらなく魅力的なシーンだ。

子役(女の子)が演じるくるみ割り人形(15日は、山口莉花)の愛らしさは、いまさらいうまでもなく、カチャカチャ動く、このかわいいくるみ割り人形が、第一幕の幕を開け、第一幕の幕を切る役目。とても、好演。第二幕でも、ねずみたちとの再戦(と、クララの仲介による休戦)があったり、お菓子の都ではクララの介添え役として、また「ディヴェルティスマン」の各国の踊りを挟むかたちで踊られる、お菓子の精の子どもたちの踊り(いわゆるキャンディーケーキ=ジゴーニュおばさんと道化の曲)に加わって踊ったりと、かわいいくるみ割り人形の存在が、観客の目を飽きさせない。

クララ(15日は、西川美寿々)は、子役ではなくもう少し年長の女の子が踊るため、第一幕では、夢の王子とのパ・ド・ドゥになるが、第二幕のグランパ・ド・ドゥの金平糖の精は、ゲストダンサーが踊るかたちで、第二幕のクララはお菓子の都のお客様である。


最後は、プレゼントの本を読んで眠ってしまったクララが目醒めると、時刻はまだ夜の7時で、これからお客様が来てクリスマスのパーティがはじまるところ。本のなかの世界をクララが夢に見ていたという設定で、舞台は、再び最初の、パーティがはじまる前のシュタールバウム家の広間に戻って、幕、という仕掛けも、まさに夢のようで、上手く効いている。


ドロッセルマイヤー(膳亀利次郎)に連れられて、くるみ割り人形がクララの家へやって来る道行きのシーンをはじめとして、雪の降るクリスマスの夜の出来事として、雪の精たちを何度も登場させるあたりは、フェアリーバレエ版「くるみ割り人形」の特長として印象的だ。


第一幕のナンバーに歌詞を付けた「ドロッセルマイヤーおじさんのうた」は、録音だったと思うが、なかなか楽しい歌詞なので、ぜひプログラムに歌詞を載せて欲しい。

今年1月に博品館劇場での「くるみ割り人形」を見て以降、私は、「くるみ割り人形」を見ていると「雪のワルツ」の合唱のところでは、西島千博版「くるみ割り人形」の歌詞を頭のなかでうたってしまうのが常だが、フェアリーバレエ版の「ドロッセルマイヤーおじさんのうた」も、歌詞を憶えてさらに楽しみたいものである。


2007年のフェアリーバレエ(Fairy Ballet)「くるみ割り人形」、もう1回見たいと思ったが、スケジュールが許さず、残念。2回見れば、15日には気がつかなかった発見があったり、見落としていたシーンの意味が理解出来たりと、より鑑賞が深まったのだろうけれど・・・。
来年を期待して俟つことにしたい。


Fairy Ballet のサイトは、↓
http://www.geocities.jp/fairyballet/


また、関連の過去ログ(抜粋)は、
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20071029/p1
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20071026/p3
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20061217/p1



(ところで、ねずみ役で出演の籏野彩香さんは、かつて子役として映画などに出演していたひとでしょうか?)