小林紀子バレエ・シアター「くるみ割り人形」雑感


昨年末、12月28日(金)に、メルパルクホールで、

小林紀子バレエ・シアター「くるみ割り人形」全幕(監修:ジュリー・リンコン、演出・再振付:小林紀子)

を見た。

28日は、午後5時開演。上演時間は、25分の幕間を含めて、2時間10分。

公演プログラム、1000円。

渡邊一正・指揮、東京ニューフィルハーモニック管弦楽団の演奏で、オーケストラピット使用(1階客席は、5列が最前列)。


小林紀子バレエ・シアターの「くるみ割り人形」は、チラシやプログラムには、原振付・ワイノーネンとあるが、クララは少女で、2幕の主役は金平糖である。なのに、なぜワイノーネン版がもとになっているのか?と思ったら、バレリーナへの道 別冊「くるみ割り人形」(文園社、1999年)を読み返すと、それについての解説があった。最初(1977年の上演)は、ワイノーネン版をもとにして、クララもマーシャの役名だったのが、その後、クララを子役に変更、また子役も小学生から選んでいたのを中学生の起用へと変えて来ている、などの経緯が書かれている。


さて、プログラムを見ると、第1幕の舞台が『クララの家』となっていて、登場人物も『クララの父』『クララの母』などとされ、シュタールバウムという名称は出て来ない。

このバレエ団の「くるみ割り人形」は、クララの家の客間の時計が、午後8時からはじまる。(多くの「くるみ割り人形」では、時計の針が午後7時からのスタートだ)


1幕のパーティのシーンが楽しい。クララ(28日は、谷川千尋)やフランツ(菅さくら)だけでなく、友だち役の子どもたちも、ひとりひとりにきちんと表情があって細かく演技をしているのが分かる。女の子がぬいぐるみを抱いていたりと、そんな様子も愛らしい。
人形劇や、人形たち(ピエロ人形、ピエレッタ人形、ムーア人形)の踊りに加えて、ドロッセルマイヤー(中尾充宏)が鬼になって子どもたちと目隠し鬼で遊ぶシーンも織り交ぜられる。

ねずみとくるみ割り人形の戦いでは、客間で眠っているクララを、ねずみたちがえさにしてしまおうとするのが面白い。ねずみの王様は、お腹が出過ぎだ(笑)。
おもちゃの兵隊が大砲を撃つと、ピカッと閃光が!

くるみ割り人形(冨川直樹)が王子(ロバート・テューズリー)に変身して、クララとのパ・ド・ドゥ。つづく雪の国は合唱は入らずに、管弦楽団の演奏のみで。(雪の女王:高橋怜子、雪の王:中村誠)

雪のワルツが終わって幕が下りたあと、1幕に出演した子役たち(パーティの少女役、少年役、おもちゃの兵隊役)がカーテン前に登場して、ミニカーテンコールがあったのは、なかなか行き届いたことである。


2幕。最初の曲(情景=魔法の城)は、第2幕の序曲的に使われ、オーケストラの演奏だけで終わり、次のナンバーで幕が上がると、そこはお菓子の国、という運び。

2幕は、すっきりと進行するが、金平糖の精(島添亮子)と王子の踊りになるまでが、単調。2幕のクララにしどころがない物足りなさも感じた。
クララは、お菓子の国のお客さまとして、上手の椅子に腰かけて、踊りを見ているのがほとんどで、特に踊りどころもなく、マダムバウンティフル登場のときに、その方向を指さすぐらいしか印象に残らない(マダムバウンティフルのスカートのなかから出て来る子どもの数は、20人)。

「終幕のワルツ」の群舞に紛れるかたちで、ドロッセルマイヤーが現れて、クララをもとの世界へと連れ戻す。

2幕の最後は、クララが客間で夢から醒めると、もう朝になっていて(時計の針は、7時)、クララの乳母が起き出して来ていて、クララは客間の椅子で、くるみ割り人形といっしょに、ひと晩すっかり眠ってしまっていた、という幕切れ。(時計が、ここで朝の7時だから、まぎらわしくないように、前夜のパーティのシーンが、8時からはじまるのだろうか…)