日本バレエ協会「くるみ割り人形」全幕(ゆうぽうとホール)


2月21日(木)に、ゆうぽうとホールで、2008都民芸術フェスティバル参加公演 社団法人日本バレエ協会公演「くるみ割り人形全幕(改定振付・構成:児玉克洋、芸術監督:薄井憲二)を見た。

過去ログのこの(http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20071106/p3)公演である。


2月20日、21日で計2回あった同公演の2ステージ目で、午後6時30分開演。

公演プログラム、1000円。

上演時間は、休憩を含んで2時間15分。

ロイヤル・メトロポリタン管弦楽団の生演奏で、オーケストラピット使用。1階客席は、1列が最前列だった。


開演前から、舞台には(大人の)ネズミが出ていて、何やらパフォーマンスしておった。

序曲がはじまると、幕にはくるみ割り人形の映像、タイトルや主要スタッフのクレジット。幕が上がると、雪の中をパーティーへと向かう人々。子どもたちが雪合戦をしたり、スノーマン(=要するに雪だるまなのだが、なかに子どもが入っていてシーンの終わりには立ち上がって歩き出す)がいたりする。
ドロッセルマイヤー(桝竹眞也)は眼帯を付けているが、なかなかユーモラスなキャラクター。

シュタルバウム家のクリスマスパーティでは、子どもたちひとりひとりの演技がしっかりしていて、舞台のどこを見たらいいかと目移りするほど丁寧に演出されていたのが、楽しかった。

クララ(生方さくら)は、場面場面での表情がよく出ていて、とてもいい。ドロッセルマイヤーにもらったくるみ割り人形を持って踊るところも、クララの愛らしさがあふれていた。フリッツ(外山元気)とは目立つほどの身長差はなかったが、プログラムに掲載の児玉克洋版のあらすじを読むと、フリッツは弟ということでよいようだ。


深夜に到り、目が赤く光るラジコンカー(?)のねずみが走り出て来る。そのあと、くるみ割り人形のことが気になったクララが広間に現れると、ドロッセルマイヤーの魔法でクララの夢の世界がはじまる。

広間のクリスマスツリーは置き物だったので、そのツリーが大きくなって行くのではなく、広間の壁が取り払われて、その奥に巨大なクリスマスツリーが出現という転換。クリスマスツリーの大きさだけでなく、シュタルバウム家の広間そのものが奥行きまで広がったかたちの装置で、クララがくるみ割り人形のサイズになってしまったことを見せる趣向である。

ネズミの軍団は、子ネズミたちも含めて、着ぐるみの衣裳。対する兵隊人形たちには、ウサギやクマもいるのがおもしろい。クララがくるみ割り人形(武中志門)とネズミの王様(ヴァレンティン・ヴァルデス)の一騎討ちに加勢するところでは、クララはシューズでネズミの王様を叩いて、またそのシューズを履いていた。

このあと、下手奥に再登場したくるみ割り人形(ここから、近藤悠歩。とてもスレンダーで中性的な顔立ちの男の子だ。※くるみ割り人形とその王子は、両日で武中・近藤の役替わり)の衣裳やマスクが引き抜かれて、美しい少年の王子に変身。それを見たクララは大喜び!

雪の女王(奥田花純)、雪の王(鈴木裕)の登場で「雪の国」になって、つづく「雪のワルツ」では、下手側脇花道で、ゆりがおか児童合唱団による児童合唱(揃いの白い衣裳で出ていた)が加わる。粉雪たちの群舞も見ごたえがあり、クララと王子が、2匹のトナカイがひくそりに乗って雪の国を後にしたところで、胸躍る第一幕が終了。


第二幕は、女の子たちによるエンジェルのシーンではじまり、金平糖の精(西田佑子)とその小姓(青木崇)の登場、そして、トナカイのそりに乗ったクララとくるみ割り人形の王子(実は、お菓子の国の王子)が、お菓子の国に到着する。

クララは歓迎され、お菓子の国の王子は、ネズミの王様との戦いでクララに助けられたことを語って見せる。

第二幕はピエロが進行役だが、配役を見ると、このピエロがお菓子の国の王様(大谷哲章)のようだ。クララは、王子と並んで、舞台奥の中央、階段上に高くなったところの椅子に座り、各国の踊りでもてなされる。

各国の踊りでは「スイス」が特徴的。いわゆる「キャンディボンボン」ではなくて、羊飼いの踊り(男性ダンサーの羊飼いと、少女ダンサーの黒い羊1匹&白い羊3匹)として振り付けられていた。

「終幕のワルツ」では、曲の終盤、お菓子の国のキャラクターたちが勢揃いで、ユニゾンで踊るシーンに厚みが感じられて印象的だった。

別れの時間が来て、王子やお菓子の国のみんなの見送りをうけたクララがトナカイのそりに乗って去ったところで、幕。クララがもとのシュタルバウム家の広間に戻っての場はカットされていた。
(クララ役の生方さくらちゃんの演技がよかっただけに、最後は、クララがくるみ割り人形を抱いての幕切れにして欲しかったとも思うが、ドロッセルマイヤーが第二幕には登場しない構成では仕方がないか…)


瑣末なことだが、金平糖とグランパ・ド・ドゥを踊る相手役を「金平糖の精の小姓」としているのには、どんな意図やねらいがあるのだろう。


第二幕の出演者たちで、カーテンコール。(第一幕に出ていた)ウサギとクマから、指揮者(堤俊作)と主役の金平糖の精へ花束の贈呈があった。

この日の「くるみ割り人形」もずい分と楽しいステージで、堪能出来た。何はともあれ、「くるみ割り人形」はいいものである。