時代の証言者 中村吉右衛門 4



読売新聞朝刊に連載の「時代の証言者」

歌舞伎俳優 中村吉右衛門の第「4」回(5月15日付)は、『優しく怖い祖父・吉右衛門



今回は、1954年9月に68歳で亡くなった初代吉右衛門の晩年のこと。最晩年は、楽屋では布団に横になっていた。



 『優しいおじいさんでしたが、時々怖いところを見せました。時播磨(三代目中村時蔵)が演じる「重の井」の子役・三吉に出していただいたとき、弟子の先代中村吉之丞にいろいろ教わったあと、麹町の初代の前でやったんです。それを見て初代が気に入らなかったらしく、「役者なんかやめちまえ」と怒鳴られました。



また、実父にもらった古銭を見せたら、役者が金なんぞいじるなと怒鳴られた。

 『あとで聞いてみると、その当時の役者さんは多くの方がそうだったらしいんですけど、お金で苦労しているんです。派手な生活をしなければならない。金は切らなきゃならない。ご祝儀なんかですね。それでいて遊びもしなきゃならない。弟子もいて大所帯を維持しなければならないから、借金だらけ。



初代と最後の共演は「佐倉義民伝」

私は佐倉宗吾の長男役で出ていました。宗吾役の初代は、わらじが自分ではもう履けないので、結んであげました。







・・・紙面には、歌舞伎座の着到板の前に初代といっしょにいる写真が掲載されているが、なかなかいい写真である。