1984 (新国立劇場小劇場)


5月2日(水)と、5月6日(日)に

新国立劇場小劇場で、

1984
Nineteen Eighty-Four

原作:ジョージ・オーウェル
脚本:ロバート・アイク、ダンカン・マクミラン
翻訳:平川大作
演出:小川絵梨子

を観劇。

過去ログのこの舞台。
 →http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20180221/p2

両日とも昼公演で、

2日は午後2時開演、6日は午後1時開演。

上演時間は2時間と告知されていたが、じっさいは、もう少し短くて、1時間52分前後。途中休憩なし。

公演プログラムは、800円。


配役は、

井上芳雄(ウィンストン) ともさかりえ(ジュリア) 森下能幸(パーソンズ) 宮地雅子(パーソンズ夫人) 山口翔悟(サイム) 神農直隆(オブライエン) 武子太郎(マーティン) 曽我部洋士(チャリントン) 堀元宗一朗(党員) / 青沼くるみ(子ども)・下澤実礼(子ども)・本多明鈴日(子ども)

 ※子ども役は、交互出演。→http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20180505/p1


この舞台は、翻訳された戯曲が「悲劇喜劇」2018年5月号に掲載されたので、観劇前に読んでみたが、ちっともおもしろくないし、理解が及ばないところが多いしで、これ何だ?って感じ。原作を読んだこともないので、そもそも、何人かの人物たちが、読書会のようなサロン(?)で、近未来から過去である「1984」のことを振り返るかたちになっているのが不可解だったし、出演者の顔ぶれと人数からして、複数の役を演じるキャストがいるらしいと考えると、ますます分からない。

それが、いざ舞台を見てみたら、意外や!これがおもしろかったというか、なるほど、こういうことなのかと、翻訳戯曲の字面を追っていたときにはよく分からなかったことが、やっとその内容のおおよそが見えて来るなど、あの戯曲を、私程度のレベルの低い観客にもそれなりに分かるように舞台の上に立ち上げて見せた演出家の腕はなかなかのものだなぁ、などと思ったのだった。

プログラムの対談のなかで演出家は、この戯曲が難解な理由として、ワークショップをしながら創られたものだからではないかと指摘している。


ステージの上手には、机と椅子が置かれていて、それがウィンストンの机で、主人公がそこに座ると、客席上手ブロックの観客はウィンストンとほぼ正対するようなかたちになるので、上手側の席がけっこう良席だったのではないか。

2度の観劇で、私が座ったのは、その上手ブロックの7列目と8列目だったので、このあたりは、なかなか井上芳雄ファン向けの席位置かも・・・と思ったりした。

中央の前方席だと、終盤に、ウィンストンが拷問される場面を間近に見ることが出来る。


ステージの下手側には、斜めにガラス張り(アクリルなのかな)の仕切りがあって、それが通常は窓や鏡に見えるのだが、向こう側に明かりが入ると素通しのガラス状になって仕切りの向こう側も演技スペースになる仕掛け。

たとえば、ウィンストンの回想がその仕切りの向こう側で演じられて、子ども役の子役がウィンストンの妹を演じるシーンがある。そのシーンでは、ベッドの上で布団をかぶって寝た妹の、その掛け布団をウィンストンが剥ぐと、そこに寝ていたはずの妹が姿を消している、という子役の消え芸がある。(最初に見たとき、ちょっとびっくりしたので、2度目の観劇のときにはベッドから目を外さずにいたら、妹役の子役は布団をかぶるとすぐにベッドから抜けているのが分かった)


子ども役というのは、そもそもは、ウィンストンが書いたとされる1984年の日記を読んでいる読書会(?)の参加者の子どもで、その場にいっしょにはいるが、この子はタブレットをいじっていてゲームなどをしている。

5月2日の本多明鈴日さんと、5月6日の青沼くるみさんとでは、客席から見えた範囲では、タブレットで開いている画面がちがっていたが、演技に支障がないならタブレットは自由にいじれたのかな?

トリプルキャストの子役は、揃って同じ学年だが、本多明鈴日さんと、青沼くるみさんとでは、本多さんのほうがはっきり大きかった。なお、一部プロフィール写真では、本多明鈴日さんの髪が短いが、この舞台の出演時はもっと髪が長かった。

きいろのパーカ、グレーのタイツに黒のローファー。ローファーは、なんか歩きにくそうにも見えたけど・・・

劇中、少しうたうシーンがある。

また、この舞台では、戯曲の最初のナレーション的な「声」を子役が担当していた。


映像が使われるのだが、ウィンストンとジュリアのシーンでは、その映像があらかじめ収録されたものなのか、生の映像なのか、その両方が混在していたのかが分からないくらいに、映像と実演がリンクしていたのが印象的。

たとえば。幕開きで、ウィンストンが日記を書くときの映像は、公演当日の日付(月日)が書かれていたから、あれは生の映像を映し出していたってことなのかな。

劇中での食べ物や飲み物は、じっさいに出演者が飲み食いしていたが、拷問シーンのネズミは偽物だった。