浅草の百助
森光子主演でおなじみの、菊田一夫 作「放浪記」の第四幕第一場は、世田谷の家。(括弧内は、5月帝劇公演の予定キャスト)
林芙美子(森)が福地貢(大出俊)と暮らす借家に、日夏京子(山本陽子)と白坂五郎(米倉斉加年)が訪ねて来る。折悪しくいらえはないが、そこは気安く留守宅に上がり込み、隣家の村野やす子(青木玲子)や旧知の上野山光晴(丸山博一)も加わってのやりとりがあるうち、やがて芙美子が番傘を手にしたスタイルで帰って来る。芙美子は『女性芸術』に原稿を届けて戻ったのだが、原稿の売り込みにでも行っていたのかと訊かれて、とっさに、浅草まで口紅を買いに行ったとウソをつく。
ここで芙美子が口紅を買ったというセリフに出て来る店の名が、「百助」である。
私は、この「百助」という化粧品を商う店が実在することを、少し前まで知らなかったのだが、さらに、浅草の「百助」は江戸時代からの老舗で、いまもあり、演劇等のメイク用品を扱っていることでむかしから有名だということを、このたび、遅まきながら知った。
のなかで、杉村春子が築地小劇場の頃を語った件りに、この百助が出て来るのである。
大笹吉雄「女優 杉村春子」は、かなり以前から、読もう読もうと思いつつ買いそびれていたが、ようやく手にして、読んでいるところ。杉村春子さんの生前に刊行された(1995年8月第1刷)インタビュー本だが、私が読んでいる第4刷では、巻末の年譜が、1997年まで書き足されてある。丁寧な本である。
百助というのは、↓に紹介されているお店ですね。
http://www.asakusa-e.com/dentokoge/ha.htm