中村勘三郎春暁特別公演「吉野山」「仇ゆめ」(ゆうぽうとホール)


3月4日(火)は、新宿コマ劇場で斉藤晶ちゃんの舞台を見た後、
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20080305/p1
どちらへ行こうか迷っていたが(池袋で「長崎ぶらぶら節」or五反田で「仇ゆめ」の二者択一)、とりあえずは、銀座へ。歌舞伎座で筋書を買ってみたら禿が出ていなかったので、
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20080305/p2
それなら、ゆうぽうとホールで鶴松さんの禿を見ようとて、

中村勘三郎春暁特別公演「吉野山」「仇ゆめ」

へ。東銀座から都営浅草線を使うと意外と早く着いた。


午後6時30分開演の回である。

当日券を購入したが、先月バレエを見たときと1列しかちがわない、見やすい座席だった。

20分の休憩を含めて、上演時間は、2時間程度。

公演プログラムは、1500円。名題下の出演者まで、生年月日入りのプロフィールがあるが、中村鶴松さんの場合、とくに目新しいことは載っていない。

ロビーでは、オリジナルグッズとして、エコトートバッグを1000円で、クリアファイルを500円で売っていた。休憩中は、売り子が、客席まで売りに歩いていた。


吉野山は、下手側手前に、短い脇花道を置いた舞台。

勘太郎の狐忠信に、七之助静御前。後見が、小山三、仲二朗、仲四郎。(延寿太夫のあの白い髪は、もはやトレードマークなのかしら)

忠信の登場は、静御前が鼓を打って、照明をいったん落としたところで、脇花道に姿を現す、というやり方。


「仇ゆめ」(北條秀司 作・演出)は、2004年の歌舞伎座、納涼歌舞伎で見ていて、幕開きで禿(かむろ)が踊ることはよく憶えていたのだが、他は記憶も曖昧になっていた。禿(鶴松)の出番が多くて、楽しんだ。声が少女っぽくて、よかった。(いまの時期にあの声を使うのは、それなりのものだと思った)

動物の女性が人間の男のもとにやって来る異種婚姻譚のパターンに較べると、男の狸(勘三郎)が深雪太夫(波乃久里子)に懸想するこの芝居は、悲・喜劇、どちらと見ても中途半端で、徒夢にしても後味がいいとはいえないが、「けもの」の狸が太夫(こったい)にお客として遇されるためには、あんなふうに最期を看取ってもらうしかないのかも知れない。舞台が吉原でなく島原にしてあることも狸に辛いストーリーと関係していそうである。

配役は他に、舞の師匠に七之助揚屋の亭主に彌十郎。店の者に、勘之丞、山左衛門、いてう、國久、彌七、井上恭太。

いちど下りた緞帳が上がって、カーテンコールが付いた(勘三郎と久里子のご両所が登場)。


今回の中村勘三郎春暁特別公演は、前日の3月3日にスタートしたが、3年前の3月3日に中村勘三郎襲名披露興行が歌舞伎座で開幕しているから、それに合わせた日取りでしょうか。

3月3日のお昼に日本テレビを見ていたら、「きょうは何の日」で、2005年に、十八代目を襲名した日として取り上げられていた。
http://www.ntv.co.jp/omoii-tv/today/back/0803/0303.html


これは蛇足になるが、この内容のホール公演で、11000円のチケット代はちょいと高い気はした。価格に照らせば、狸だけでなく狐もやって欲しかったところ。それが無理なら、花四天が出ての立ち回りを入れてくれなきゃ、いまひとつ見足りない気持ち。

終演後、ホールの外に出ると、五反田界隈では、ちょうど観劇の間だけ雨が降った様子。すでに雨は上がっていて、こりゃぁ、きっと、空もたぬきにでも化かされたのだろう。


(余談だが、来月の歌舞伎座、四月大歌舞伎は「勧進帳」が出て、十八代目の富樫だから、当然、太刀持音若は期待していていいよね)