トントンギコギコ図工の時間 (DVD)



以前から気になっていた、ドキュメンタリー映画「トントンギコギコ図工の時間」(野中真理子監督)のDVDを購入。

「特典」まで見終わったので、雑感など。



まず、最初にいってしまうと、これは、見て面白い映画ではない。ドキュメンタリーとしても、統一感がなさ過ぎる。とりとめのないものを見せられている、といった感じだ。一部でとても評判がいいようだが、その理由が私には分からない。玄人(教育関係、図工関係、子ども関連の仕事に携わるひとたち)ウケがいいのだろうか。



品川区の公立小学校で、図工専科の先生が教える図工の時間の子どもたちを撮っているのだが、子どもたちがしていることは、図工というよりも(中学校の)技術・家庭科の技術の時間にする作業に近い。それで、トントンギコギコである。一般的な図工のイメージとは趣を異にする授業に、子どもたちは淡々と参加していて、作業を行なう。その様子をメリハリもつけず、だらだらと撮って(編集して)いる。



これが、NHKの「わくわく授業」あたりなら、先生が、私の教え方はこうこうですと考えを披露したりするのだろうが、この映画では、図工の先生はあまり映らないし、授業の意図を語ることもない。



それなら、トントンギコギコする子どもたちにじっくり迫るのかといえば、そうでもない。図工という以上のハードな作業をしている(させられている)子どもたちが、ひとつの課題を創り上げる様子を丹念に追うという訳でもないから、子どもたちが、この図工の授業をすんなり受け入れているのか、あるいは悪戦苦闘しているのかといった、授業を受ける側のナマな気持ちはよく分からない。いつの間にか作品が出来上がっていて、それで遊んでいるといった編集。

たとえば、「特典」映像のなかにある、ツーバイフォー工法で家(というか、小屋)をつくる「カーペンターズ」(本編よりもこの特典映像のほうがまとまりがいい)は、スケールが大きくて驚かされるが、肝心の、つくる過程がどんなものかは、さっぱり分からないのだ。



特定の子をクローズアップすることがあっても、アプローチは中途半端。どういう基準か、数人の子だけの対面式インタビューがあるのも、見ていて居心地が悪い。「図工の時間」といいながら、運動会の映像が挿入されたり、男の子が外で遊んでいる様子をだらだらと見せたりするのは、何のためだろう。注目した子をカメラで追うにしても、図工の作業の過程でするべきなのでは。



私は、子どもの頃に、図工も美術も、技術も大嫌いで下手だったから、もし小学生のときに、こんな授業を受けることになっていたら、堪らないな、と思うのだが、この映画の子どもたちのなかには、そんな感情はないのだろうか?



上澄みだけを撮った(編集した)ような、かゆいところがあっても掻かないドキュメンタリーという印象だ。