「簪マチ子 幸せのとなり」雑感(千穐楽カーテンコールなど)


(2003年)10月28日(火)昼の部、芸術座で「簪マチ子 -幸せのとなり-」千穐楽を観劇。

子役のおもんは石川楓ちゃん。お蕎麦屋での居方に風情があり、姿に子役としての「旬」を感じさせた。


下里翔子さんのおもんは感情の表出がストレートで、母(マチ子=佐久間良子さん)を拒み、うけ入れ、悲しい別れへ、という流れを高いテンションで演じてドラマティックだったのに対し、石川楓ちゃんのおもんには柔らか味があり、心の揺らぎが透けるような、情緒に訴える力があった。

下里おもんの声は観客の胸を衝き、石川おもんは切ない余韻を残す。ともに、いいものを見たと思う。


(まだ自分の母とは知らない)マチ子が蕎麦に手をつけていないのを見て、おもんちゃんが「食べないんですか、のびちゃいますよ」というセリフがあるのだけれど、このセリフを自然に押しつけがましくなくいうのはむずかしそうだし、お運びや唐辛子、割りばしの補充を次々こなしながら、セリフの調子やニュアンスを乱さずに演じていたふたりのおもんちゃんは、上手いなぁ、と改めて思った。

おもんちゃんが、お運びをすると、鈴が ころんころんと鳴る。切ない音色である。


公演プログラムの写真からも ("アマデ"のときと較べてずっと)成長を感じさせた石川楓ちゃん。
じっさい 舞台では、赤木春恵さんよりも背が高そうだった。


さて、普段はお芝居の幕が下りるとそのまま終演となる「簪マチ子」。この日は千秋楽とあって、カーテンコールが行われた。

原口警部(植草克秀さん演じる新米刑事の上司)役の三原邦男さんが、上手側カーテン前に登場して司会をつとめ、幕が上がると、出演者全員が一同に勢ぞろい。

前列に、佐久間良子さんを真ん中にしてメインキャストのみなさん、その列の上手端に石川さん、下手端に下里さんのWおもんちゃん、という並び。(身長は、楓ちゃんのほうが大っきい)


赤木春恵さんから、前列の俳優さんたちが、一言ずつ挨拶。(ただし、おもんちゃんたち子役の挨拶はなくて、)最後に、主演の佐久間さん。

挨拶の内容はおおまかにしか憶えていないので、ひとつだけ紹介すると、
(松山政路さんが)・・・ (演出の)石井ふく子先生は厳しくて、蕎麦は本物を食べろ、ということで、おもんちゃんを引き取りに行った先の蕎麦屋のシーンでは、毎回毎回蕎麦を食べつづけた(蕎麦屋の客を演じる他の役者さんたちも)、とのこと。




ちなみに、2か月間 全83回の公演中、おもん役は、石川さんが51回、下里さんが32回の出演だったようだ。


このエントリーは、2003年10月29日(水)に書いたテキストを、当ブログ内に転載したものです。