春や春


森谷明子「春や春」(光文社、1600円+税)

http://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334910259

これ、おもしろい。

『少女たちの友情と成長がまばゆい、圧倒的青春小説!!』という惹句は、決して大げさではない。


俳句好きの女子高生が、仲間を集めて同好会をつくって、ほぼ初心者のチームで俳句甲子園への出場を目指すストーリー。章ごとに、メインというか視点になる人物を替えてえがくかたちの連作方式を採っているので、おのずと群像劇の趣きになっている。

俳句というのは、ジャンルとしては文芸だが、自分を表現し過ぎてはダメだとか、作句の基本を踏まえたほうが点を稼ぎやすいとか、俳句に縁の薄い人間には、えっ?!とおどろくこともあり、俳句甲子園にしても、対戦相手の俳句を、批評したり褒めたり、反論したり、自分たちの句をPRするなどして「鑑賞」する、ちょっとしたディベートがあって、そこでの「鑑賞点」も勝敗を決めるポイントになる。つまり、ただ俳句をつくるだけではなく、ひと前でしゃべったり、上手く自己主張をするスキルも必要になるのだ。

スリリングな勝敗の行方や駆け引きは、スポーツ顔負けのおもしろさで読ませるが、俳句同好会のメンバーがそれぞれに個性的で、揃って魅力的なのが、それ以上の読みどころ。

近年は、ライトノベルから一般向けまで、こうした部活小説が花盛りで、むかしだったら小説の題材にはならないようなマイナーなスポーツや、文化部の活動などもいろいろと小説になっているが、この「春や春」も、俳句甲子園という名称ぐらいは聞いていても、どんなことをしているのか、具体的なことまでは知らないひとたちへのレクチャーとしても効果的だろう。