十八代目中村勘三郎襲名披露 三月大歌舞伎、昼の部



今月の歌舞伎座は昼の部は見ない、その墨跡も乾かぬというのに・・・



18日(金)に、十八代目中村勘三郎襲名披露 三月大歌舞伎昼の部を観劇。

観劇日の前日の朝、チケットWeb松竹にアクセスしたら出ていたので、ついつい買ったる次第。かなりよい席とはいいながら、(子役の出ない昼の部なのに)2万円もはり込んでしまった(のは、いささか痛い)。





11時の開演。

5分前に歌舞伎座に着くと、救急車が来ていた。入り口で救急隊員のひととすれちがったが、何かあったのかしらん…



まず、「猿若江戸の初櫓」

昼の部では、これがいちばん楽しめた。春風駘蕩、闊達な雰囲気の猿若(勘太郎)の、軽妙な身ごなしの爽快感に、出雲の阿国(福助)のそれらしい存在感。



次が、俊寛

女形秀太郎の少将成経、(女形で見ることがほとんどだった)東蔵の判官康頼。ともにすっきりした男前が、私の目にはとても新鮮だった。



俊寛(幸四郎)は、千鳥(魁春)の身代わりに自分が島に残ると覚悟を決めたものの、解かれたとも綱を引っぱるなど、すぐに未練な様子になり、最後、岩の上から船を見つめる幕切れまでにメリハリが薄い気がした。

動きを溜めて、孤高なままのほうが、この方にはお似合いではないだろうか。



十八代目中村勘三郎襲名披露「口上」

列座の俳優は、下手から上手へ

富十郎 又五郎 秀太郎 福助 弥十郎 東蔵 玉三郎 仁左衛門 勘太郎 (勘九郎改め)勘三郎 芝翫 幸四郎 我當 魁春 扇雀 段四郎 左團次 梅玉 雀右衛門 の19人。

(女形の正装は、秀太郎福助玉三郎魁春雀右衛門)



富十郎丈のニューヨーク公演の思い出話は、分量が多いため早口で、何年何月何劇場の、というフレーズが何度も出て来るので、上演史の解説みたいだった。

雀右衛門丈の口上は、残念なことに、何をいっていたのか、ほとんど聴こえず。隣の席のお客さんが笑ってらしたのは、聴こえたのか、あるいは、何度も通っている方で内容が分かっていたのかな…。



東蔵丈は「口上」でも、落ち着きのあるいいおじさまぶりで、巧い役者には華がないというが、(新勘三郎)は華もある、…といった内容。



「口上」での並びを見ると、梅玉丈は、かなりえらいひと なのだね。



「一條大蔵譚」

昼の部の最後が襲名狂言のこれ。

「檜垣茶屋」と「奥殿」の二幕。



歴史小説や時代劇だと、一条長成は単なる端役。その人物を主役にして、阿呆を装っているがじつは源氏に心寄せる思慮深き公卿、といわれても、話自体、また舞台の上の一條大蔵という人物も胡散臭く思えて、舞台で演じられる世界に入り込めなかった。



たとえば、妻のお京(玉三郎)とともに忍び入った吉岡鬼次郎(仁左衛門)が、常盤御前(雀右衛門)を打ち据えるという件りには違和感をおぼえる(「鬼一法眼三略巻」における両者の関係はいかばかりなのか。お京というのは、弁慶の姉らしいが…)。



新・勘三郎の大蔵卿は、作り阿呆の部分があまりにぴったりで上手いせいか、本性に返ったときがどことなく白々しく見える。





三月大歌舞伎は、昼・夜見て、面白かった順に、

 「盛綱陣屋」

 「猿若江戸の初櫓」

 「俊寛

 「鰯賣戀曳網」

 「口上」

といった感じ。