二代目中村錦之助襲名披露 四月大歌舞伎 夜の部

17日(火)は、歌舞伎座で、四月大歌舞伎の夜の部を観劇。

4時30分の開演で、この日の終演は、9時20分だった。

開演前、東銀座に着くと雨足が強まった頃で、喫茶店に避難して開場を待った。

さて、4月の歌舞伎座は、中村信二郎改め二代目中村錦之助襲名披露。
その夜の部は、まず仁左衛門、千之助で「実盛物語」、襲名披露「口上」、襲名狂言の「角力場」、勘三郎の「魚屋宗五郎」。いずれも面白く、5時間近い上演時間は苦にならない。

襲名した新・中村錦之助丈の姿が、春風のこの季節に似つかわしくもある。


今月歌舞伎座に出演の子役については、4月3日のエントリーに書いたので、子役の配役などはそちらでも。
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20070403/p5


「実盛物語」は、実盛と太郎吉のじじ・孫共演が微笑ましく、仁左衛門丈の風姿で明るく気持ちよく魅せる実盛。小さいが堂々とした太郎吉に、ウルトラマンをやっていた子が、もうこんなにしっかりしてきたのだなぁ、とついつい歌舞伎の観客っぽい感想が湧いて来てしまう。(じじ・孫共演といえば、前回歌舞伎座で見た「実盛」も仁左衛門丈で、このときは、瀬尾と太郎吉が「じじ・孫」だった)
腕を継がれた秀太郎丈の小万には、いかにも、幽明の境にいる感じが見えて、なるほど、この役はこういうものかと、認識を新たにした。

鳥屋が斜め後方という座席だったので、馬に乗っての実盛の引っ込みも堪能。(そういえば、海老さまの実盛の馬は、引っ込みが速足で、スピード感があった)

腹にかいなのあるからは、胸に思案がなくちゃかなわぬ、っての、何度聴いてもいいな。


幕間には、舞台写真を物色。

鶴松さんの酒屋丁稚の写真が欲しかったのだが…なかった(残念)。
で、つらつら見ていたら、梅玉さんと梅丸さんの頼家と侍童(昼の部の「頼朝の死」)があったので、これを1枚土産に購入。


襲名披露「口上」は、23優が列座。
下手から、吉右衛門歌六歌昇獅童、種太郎、隼人(前髪のかつら)、七之助勘太郎勘三郎時蔵信二郎改め錦之助富十郎雀右衛門仁左衛門秀太郎福助、門之助、彌十郎東蔵魁春我當梅玉芝翫

新・錦之助の子役時代は、いまとちがって(?)、とてもやんちゃだったらしい。
梅玉丈が、時蔵丈を気遣う言葉を述べて、兄として自分も見習いたいといったのが、おもしろかった。


襲名狂言の「角力場」は、錦之助丈の放駒長吉、山崎屋与五郎の二役に、富十郎丈の濡髪長五郎。

角力場」は、はじめて見た。与五郎と茶屋亭主(東蔵)、長五郎と弟子の閂(隼人)とのやりとりに、襲名らしいセリフがちりばめられ、それがスパイスになっての面白さも加わる。
・・・腰掛け方ひとつで、濡髪がぐっと力士らしい大きさに見えるのだねぇ。

「双蝶々曲輪日記」は、「引窓」が有名でよく出るが、私は苦手な演目なので敬遠している。が、今回「角力場」を見てみて、通しで見れば「引窓」も楽しめるかも知れない、と思った。


最後は、勘三郎丈で「魚屋宗五郎」。(おはま:時蔵、三吉:勘太郎、おなぎ:七之助、太兵衛:錦吾)

酒屋丁稚与吉は、中村鶴松
この酒屋丁稚の役は、子役の幼さから来る愛らしさと、そんな丁稚が、灘の生一本だの、酒が好きだから酒屋に奉公しているんだのというセリフとのギャップが見せ場のように、なんとなく思い込んでいた。だから、鶴松さんでは大きいのではないかとも思ったのだが、今回のこの酒屋丁稚を見て、キャリアのある子役が演じれば、その上手さで充分にこの役を見せられるのだと分かった。

鶴松さんのセリフには工夫が感じられたし、声もよく、挙措にもその役らしさが窺えた。

磯部の殿様が錦之助丈で、最後を締める。が、このお殿様、いささか誠実に過ぎる気もする。そこが持ち味なのは承知だが、このお殿様なら、酒が入っていても、手討ちにする前に我に返るのではないか。そんな磯部主計之助。
子役の小姓(吉村海)は、私の席からは、ちょうどお殿様の影になり、ほとんど刀の柄しか見えなかった。


有名写真家の篠山紀信氏の姿があったので、ご見物かと思いのほか、「魚宗」になると、花道の外の鳥屋前から舞台写真を撮っていた。


「魚屋宗五郎」が終わって歌舞伎座の外に出ると、雨はすでに上がっており、どうやら傘を使わずに済んだ。