平成26年度水戸子どもミュージカルスクール発表公演「パーフェクト・ファミリー!?」(水戸芸術館)


3月29日(日)は、水戸芸術館ACM劇場で、

平成26年度水戸子どもミュージカルスクール発表公演
「パーフェクト・ファミリー!?」

を観劇。

過去ログのこの公演。→http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20141125/p1

昨年に続いての、水戸子どもミュージカルスクールの発表公演。昨年度が一期生だったので、今回が二期目となる。

水戸へは、往路は、上野で11時ちょうど発の特急「ひたち」に乗って、帰りは、15時53分水戸発の「ときわ」で。3月14日のダイヤ改正で、水戸、日立方面への特急は、自由席がなくなったらしい。
余談だけれど・・・・座席が売れていると緑ランプが表示されて、車内検札は省略。座席未指定で乗車した場合は、赤ランプが点いている空席に座ることが出来るが、間近の駅からその席を買っているひとが乗車して来る場合には、ランプが黄色に変わるので、指定券がない場合はその座席からは退かないといけなくなる。


「パーフェクト・ファミリー!?」

脚本・作詞:高橋知伽江
作曲:山下透
演出・歌唱指導・振付:高城信江
演出補佐・歌唱指導:松本昌子

今回の発表公演は、2日間で、3ステージが上演され、私が見たのは、3ステージ目で、3月29日の午後1時開演。

今年は、割りと早くチケットを買ったので、1階席で見られた。

水戸子どもミュージカルスクールは、小学校4年生から中学校3年生を対象にしていて、『茨城県内各地から集った33名』の受講生が出演した。

上演時間は、70分。

終演後には、受講生の卒業式が舞台上で行なわれ、卒業式では、水戸子どもミュージカルスクール校長でもある水戸市長から、ひとりひとりに卒業証書が手渡された。卒業式が終わったのが、午後2時42分ぐらいだった。


「パーフェクト・ファミリー!?(パーフェクトファミリー!?)」というミュージカルについては、
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/archive?word=%A5%D1%A1%BC%A5%D5%A5%A7%A5%AF%A5%C8+%A5%D5%A5%A1%A5%DF%A5%EA%A1%BC

過去ログ(http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20150317/p2)にも少し書いたとおりで、この作品は、作劇としては「青い鳥」や、それをもとにしたミュージカル「ドリーミング」を下敷きにしているといえる。


昨年の「ここは命の星」がとてもいい舞台だったので、今年も期待していたが、冒頭のチャランとポランの登場から、もうヤラレた。狂言回しでもある、スウィートエンジェル・チャランポランのコンビが、とにかく傑作だった。

チャランにつっこまれて、いきなりやり直しになるところとか、初っ端からおもしろい。天使の羽根はもちろん、衣裳もかわいくて。チャランポラン♪のダンスの振りもかわいい。ふたりでハートマークつくるところとか。
すばらしい、としかいいようがなかった。

チャランポランは、ふたりとも昨年も出演していたメンバーで、ポランは、「ここは命の星」でアッコ役だった子だね。チャランの髪が大きなお団子にしてあったのは、ポランのほうが少し身長が高いので、そのバランスを取るためもあってなのかな。

チャランが斜めにかけていた、あの大きな星はポイントが高いな。あそこから、ナビを取り出すのね。「もしもしナビよ、ナビさんよ」のときのあの振り、というかポーズがかわいい。


とっても仲の悪い6人家族・一本木家は、水戸に住んでいる設定になっていた。また、空襲のシーンは、東京大空襲ではなくて、昭和20年8月2日の水戸空襲にしてあった。(水戸の駅前には、復興の象徴だという大銀杏の木がありますね。観劇後、帰りにその大銀杏の前を通ったときに気がついた)

一本木家の3姉弟(梢、若葉、幹太。ちなみに、父は茂、母は緑、祖母は花。梅が曽祖母かな。揃って、木に関する名前が付いている)は、しあわせを運ぶ天使・チャランとポランに導かれて、理想の家族=パーフェクトファミリーを探すため、時空を超えた旅に出る。

まずは、生まれる前の子どもたちがいるバースデー・ゲートへ。子どもは、みんな、その手のなかに、「夢」と「約束」を握って生まれて来るのだって。トランペットを吹く少年は、バースデー・ゲートの門番役

別のカンパニーが上演した「パーフェクトファミリー!?」のダイジェスト動画を見ると、この次は、クローン博士の研究室のシーンになるはずだが、今回の水戸での上演ではクローン博士はカットされていた。
で、ヒップホップとラップのナンバーは、3姉弟チャランポランといっしょに出立する直前のシーンに持って来ていた。
(クローン博士のシーンがあると、姉弟たちが、クローンで理想の家族をつくって欲しいと頼むが、そのためにもモデルになる家族が必要だといわれ、パーフェクトファミリーを探す旅が続く、という流れになる模様) 


戦時中の水戸空襲。ここで3人は、少女時代の祖母・花が爆撃に遭い、花をかばった曽祖母が命を落とす場面を目撃する。少女・花役の女の子がうたうソロナンバーが胸を衝つ。うたの上手い子で、それ以上に気持ちが伝わる歌唱でもあり、涙なくしては見られないシーンになっていた。
一本木家の姉弟は、もし祖母が空襲で死んでいたら、いま自分たちは存在していないのだと気づく。

ここで、3姉弟チャランポランが、危うく空襲に巻き込まれそうになるアクシデントが発生。行方不明になりかけたところを、仲間の天使たちが捜索に現れるという場面が挿入される。

続いて、お母さんの国へ。ここで「母」たちの愛に癒された3姉弟は、忘れていた言葉「ありがとう」を口にし、感謝の気持ちを思い出す。

その次は、夢の修理工場。そこでは、バクたちが、傷ついた「夢」を修復している。3姉弟は、若き日の父の夢を知り、社会人野球の選手だった父の挫折と、命がけで長女を出産した母の姿を見る。(ここでは、姉弟の父・茂の夢の修理をしているバクの役を、少女・花役の子が演じているのもポイントだ)

こうして、両親や祖母こそが、自分たちの大切な家族だと分かった3姉弟は、無事に一本木家に帰って来て・・・フィナーレ。


途中、アクシデントで、未来に来てしまったときに、未来の世界は何もない、これから作り出すものだから何もない、と説明するチャランポランのセリフがあって、それがなかなか興味深かった。そういう未来の見せ方もありなのだな、と感心した。(じっさいには、未来の世界を舞台の上にえがき出すのは、けっこう面倒だからなのかも知れないけど、でも、ちゃんと説得力のある定義をしていると思った)

今回の、水戸子どもミュージカルスクールの「パーフェクト・ファミリー!?」は、衣裳がかわいかったな。チャランとポランはもちろん、生まれる前の子どもたちや、天使たち、バクたちなど。それに、総じて、ステージングが目に美しい。

昨年の「ここは命の星」では、トビたちの飛行シーンや、ムクドリの襲撃など、ダイナミックで印象的なダンスシーンがあったが、「パーフェクト・ファミリー!?」では、かわいく振り付けられた群舞が多かった。今年は昨年よりも、メンバーに小さい子が多いように思った。

卒業式を見ていたら、チャラン役の子は「あむ」ちゃん、ポラン役の子は「えのん」ちゃんというらしい。(最近の子の名前は漢字だけだと正しく読むのはむずかしい。チャラン役の子は、今期のレッスンをただひとり皆勤、と紹介されていた)


それにしても、「ここは命の星」「パーフェクト・ファミリー!?」と、2年続けて、おもしろかった。こんないい舞台には、そんなには出会えない。ポイントになる役にひとを得てもいるので、私のような一般のミュージカルファンが見ても、充分楽しめる舞台になっている。(今年は3ステージあったので、2回見ようかどうしようか、かなり迷ったのだけれど、映画の舞台挨拶付き上映や下北沢での観劇を入れてしまったため、結局、1ステージになったが、2回見ればよかった、とちょっと心残り)。