スコア!(シアターグリーン BIG TREE THEATER)


10月10日(水)に、池袋・シアターグリーン BIG TREE THEATERで

エミューエッグミュージカルカンパニー「スコア!」

を見た。

この日は初日で、午後6時30分開演。終演が8時25分頃だったので、上演時間は、2時間弱(途中休憩なし)。


横着をして、事前にほとんど情報を得ずに見に行ったために、開演前にプログラム(700円)を読んではじめて知ったことには、このミュージカルは、今回公演のために書かれた新作ではなくて、東京ミュージカルキッズの発表会用の作品として、もともとは、その発表会の出演者に宛て書きされたものであるらしい(びっくり!)。じっさい、音符の精と数字の精のひとりひとりに、セリフや小さな見せ場が割り振られているあたりは、発表会っぽいつくりだし、開演前に、拍手の練習なんてやらされるのも、しかりか。

オープニングの、案内人がひとり演じるシーンが長く(感じられ)て、冒頭から、飽きてしまった…。ミュージカルナンバーにはいい曲があって、終盤を中心に、歌唱シーンではミュージカルらしい高揚感があったけれど、ストーリーも舞台の運びも重たくて、リピートして見たくなるような舞台ではない。

子どもメインのミュージカルにしては、ダイナミックで弾むようなわくわくするシーンはほとんどないし、子役が22人も出演しているのに、小劇場の舞台をさらに狭く使っているのも気になった。立体感のある舞台装置よりも、たとえば、ステージをいっぱいに使った躍動感のある場面を織り込んで欲しいところ。

ペンライトだったか、手持ちのライトを使うシーンが何度かあるからなのかも知れないが、毎回毎回、暗転になるのもテンポを削ぐ印象。最近は、明転、もしくは、ミュージカルなら音楽でシーンをつないで行く舞台が少なくないから、暗転が多過ぎるとそれだけで時代に逆行した旧臭さに思えてしまう。


この「スコア!」では、主人公がふたりいて、ともに天才キッズ番組の常連で、女の子・カノンは音楽の才能、男の子・アルゴは数学の才能で注目されているが、ふたりとも、親からの強い期待とプレッシャーに押しつぶされそうになっている。このふたりが、それぞれに、母親との葛藤を乗り越え、一歩自立へと踏み出して、自分の目標を見出すまでがえがかれる。そんなふたりを見守り、手助けをする妖精たちが、音符の精と数字の精。主役のふたり以外の子役はみな妖精役だが、他に天才キッズ番組の出演者の子ども役がある。

この舞台のいちばんの特徴は、ふたりの主役・カノンとアルゴがシンメトリーになっていることだ。それも、杓子定規なくらいに、ふたりは公平な扱いになっていて、両者のシーンが交互にえがかれる構成が目立つ。カノンと母親のシーンがあると、同じようにアルゴと母親のシーンが来る、ステージを2分割した上手側でカノンのシーンがあると、そのあと下手側でアルゴのシーンになる、というような場割が繰り返されるなど、出演シーンの比重までが対称になっているようだ。

カノンとアルゴが「対照」的な設定ではなく、「対称」であるために、だんだんと、似たシーンを2度ずつ見せられている気分になって来る。カノンとアルゴには、それぞれに、音符の精と数字の精が付いているのだが、これも10人ずつで対称である。
ふたりの主役が並立的にえがかれる場合、両者の出会いが大きなドラマに発展することを期待してしまうが、この舞台では、必ずしもそうならないのが物足りなさのひとつ。カノンとアルゴが直面する、自分の才能を失ってしまいそうになる危機は、それぞれに付いている音符の精、数字の精が解決へといざなってくれるからで、あくまで両者はシンメトリーになっている。

娘を自分の思いどおりに支配したいカノンの母親にしても、夫の意向に逆らえずに息子を病院の跡取りに育てようとするアルゴの母親にしても、その母子関係の設定自体があまりにありきたりなので、見ているほうが恥ずかしくなってしまうのだが・・・もともとが発表会用の作品だから、あえて類型的にしていると見るべきなのかな?


このジャンルの舞台にしては、チケット代が高く設定(前売5400円、当日6000円)された公演だったが、所見の回は、私の予想以上にお客さんが入っていた。出演者の家族や熱心なファンは何度でも見る訳だし、数日にわたって公演があればお客さんを呼びやすいだろうから、大ホールでの1日公演よりも、小劇場でステージ数を多くするほうが集客しやすいという実例のひとつかも…

終演後に、出口で配られたコナカのお土産は、使い勝手がよさそうなので、けっこううれしい。