平成25年度水戸子どもミュージカルスクール発表公演「ここは命の星」(水戸芸術館)


3月23日(日)は、水戸芸術館ACM劇場で、

平成25年度水戸子どもミュージカルスクール発表公演
「ここは命の星」

を観劇。

過去ログのこの公演。↓
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/archive?word=%A4%B3%A4%B3%A4%CF%CC%BF%A4%CE%C0%B1

水戸芸術館へははじめて行くので、JR水戸駅から会場までの往路は、タクシーに乗って、道を憶えて、帰りはのんびり駅まで歩いた。


「ここは命の星」

原作:ひのくまなおみ「海の見える丘」
脚本・作詞:高橋知伽江
作曲:宮崎誠
編曲:福井小百合
演出・振付:木村かなえ
演出補・歌唱指導:高城信江


水戸芸術館(https://arttowermito.or.jp/)が、2013年6月から新たに開校した水戸子どもミュージカルスクールの第一期生発表公演。私が見たのは、2日間で計2回行われた公演の、2ステージ目で、午後1時開演。

同ミュージカルスクールは、小学校4年生から中学校3年生を対象にしていて、『茨城県内各地から集った33名』の受講生が出演。


上演時間は、1時間。

この23日は、ミュージカル上演終了後に、10分ほどのインターバルをおいて、出演した第一期スクール生の卒業式が舞台上で行なわれ、卒業式では、水戸子どもミュージカルスクール校長でもある水戸市長から、ひとりひとりに卒業証書が手渡された。

これが終わったのが、2時半ぐらい。
(卒業式は、終演後、観客はそのまま客席に残って見ていていいとのことだったが、卒業式まで残っていたのは、出演者の家族や関係者以外では数人だったと思う)


会場の水戸芸術館ACM劇場は、3階席まであり、1階席は座席表示が後ろからC→I列になっているらしく、最前列はI列になっていた。後方のサークルエリアは、1階から3階まで前列がA、後列がB。なぜか座席表が公開されていない小劇場なので、これが通常の座席配置なのか、今回の演目のための仕様だったのかはよく分からないが、円形をほぼ半分に切ったような、半円形のかたちの客席スペース。

チケットを買ったのが遅かったので、私の席は上階だったのだが、上から見ると、客席よりも舞台面のほうを広くとっているような感じもした。

サークル状の3階席は、舞台側の一部を演技スペースとして使い、そこに出演者が登場するシーンがあった。


「ここは命の星」は、こんなお話だ。

都会で母と暮らしていたアッコという女の子が、祖父のもとに引っ越して来た。アッコの母には仕事もあり、アッコとは離ればなれに暮らすことにしたのだ。祖父はみかん畑を営んでいたが、人手もなくなり、いまでは荒れ果ててしまっていた。

淋しいアッコだったが、ある日、母鳥を失くした3羽のトビの雛を保護する。アッコがみんなに呼びかけて、トビの雛は学校で育てられることになり、アッコは新しい仲間たちと打ち解けて行く。

3羽の雛鳥はすくすくと成長し、夏が来て、群れに戻らなければならない季節になった。死後も星になって雛トビたちを見守っていた母トビは、このままアッコたちと別れたくないという3羽に、恩返しの機会を与える。3羽のトビは人間に姿を変え、アッコたちの前に現れると、荒れ果てたみかん畑の再生に力を貸す。

1年が経ち、みかんや諸々の作物が立派に実った。アッコの母も畑の仕事をすることになり、また母娘がいっしょに暮らせるようになった。そんなとき、みかん畑がムクドリの大群に襲われる…。


ツルの恩返しならぬトビの恩返し・・・人間に助けられた動物の報恩譚をモチーフに、鳥の母子の絆と、人間の母子のストーリーとを重ねた展開で、生きて行く上では避けて通れない「別れ」と「出会い」とを、とても感動的にえがいていて、胸が熱くなった。

トビたちの群れの飛行シーンの群舞がなかなかいいなぁと思っていたら、一転、親子トビの母鳥が撃たれて、雛トビたちとの別れの場になり、そのすぐあとにアッコと母の人間側の別れのシーンが来るあたりは、その運びの振幅と、無駄なシーンを挟まないテンポのよさとで、一気に舞台に惹きつけられる。

トビの雛鳥3羽には、それぞれ3人ずつが配役されていて、これはある意味、いかにも発表会的キャスティングとも思えるところだが、バトンタッチで演じることで雛鳥の成長を見せるとともに、3羽のトビが人間に変身するシーンでは、ひと役に複数のキャスティングを活かした見せ方をして、舞台らしいおもしろさにもつなげていた。

終盤、人間から鳥の姿に戻った3羽のトビが、みかん畑を襲ったムクドリを撃退するクライマックスシーンに到っては、見ていて、もはや滂沱の涙。
作品そのものに感動のツボを押さえたようなところがあって、むやみに涙腺を刺激されるミュージカルなのだった。


出演者のなかでは、語り手でもある「みかんの精」の女の子が、扇の要的な立ち位置(みかん畑が再生すると、衣装や髪に花が咲いていた)。
アッコ役の子にはうた声も含めて愛らしい華があり、トビが人間に変わるシーンのダンスでソロを踊った女の子も目を惹いた。

トビと人間それぞれの母親役、祖父、先生と、大人の役を演じたメンバーが、いずれも好印象。大人役としてあまりつくり過ぎずに、それでいて、大人の役だということが分かるさじ加減で演っていたのが、よかった。


往復で、約8000円の交通費(乗車券と特急券)がかかったが、見る価値のあるすばらしい舞台だった。キャリアのある子役が出演する舞台でも、ここまで率直に大きな感動が得られる公演にはなかなか出会えないだろう。

(2007年の大分や、昨年のJOYKIDS MUSICAL SCHOOLの「ここは命の星」は、どんなだったのかなぁ?・・・「ここは命の星」は、別のカンパニーのものも見てみたいと思う)


なお、5月にスタートする平成26年度水戸子どもミュージカルスクールの発表公演は、2015年3月28日(土)、29日(日)に、同じ会場で行なわれる予定。