The River ザ・リバー 二本の櫂2011(戸田市文化会館)

12月4日(日)は、戸田市文化会館

戸田市制施行45周年記念事業 戸田市文化会館文化推進プロジェクト
市民ミュージカル「The River(ザ・リバー) 二本の櫂2011」

(作・演出:犬石隆、音楽:玉麻尚一、振付:岸田有子、テーマ曲:小椋佳)

を観劇。


2回公演で、

1回目(青組) 13時00分開演
2回目(白組) 16時30分開演

※出演者のうち、一部配役は、青組・白組のダブルキャスト。(ただし、役付でない別組公演にも他の役で出演する)

出演者は、小学3年生以上で、今年は全47名。


3年にわたって、「ザ・リバー」からの派生エピソードとして「パック・ザ・リバー」を上演、完結させた戸田市民ミュージカル。6年目の今年は、原点にもどって(?)、「ザ・リバー 二本の櫂」を再々演した。2007年の同演目再演以来の有料公演(全席自由 一般1000円、高校生以下500円)でもあった。


上演時間は、途中休憩なしの、1時間30分(場内アナウンスによる)で、これは前回の2007年再演と同じ。基本的には同じ筋書き、構成で、ミュージカルナンバーも戸田市民ミュージカルのテーマソングとなった「漕ぎ出そう未来へ」が増えただけだったようだが、再演とでは、登場人物の年齢設定などは出演者に合わせて少し変えられていた。

また、今年の「ザ・リバー」は、「おみつ」がこのミュージカルのヒロインであることをより強く打ち出していた印象。おみつと川上弘史少年との時間を超えたボーイ・ミーツ・ガール=初恋譚ふうに、一歩踏み込んだえがき方もしていた。このあたりが、洪水に苦しむ村の話を大きな震災があった年に上演するという時宜とも相俟って、特徴的、かつ効果的であった。


再演時の舞台では、昭和39年と昔むかしの過去とをストーリーの表・裏にして、鉄工所を営む川上一家と町の人びと、オリンピックのボート選手候補・アキラをめぐる加代と町子の恋の鞘当て、水害に苦しんだ受難の歴史のエピソードとが、三者鼎立するような感じだった。

洪水で両親を失くし、再び迫る大水の前に、人柱として沈む少女の話は、昭和39年を「いま」とする視点で舞台を見た場合、過去の逸話であり、おみつの存在もストーリー内ストーリーのヒロインのようだったし、東京オリンピックと高度成長に活気づく昭和に対して、歴史のかなたの悲劇ともいえた。

それが、今回の舞台では、むしろ、おみつのエピソードのほうが、ストーリーの表・裏の表側になったようだった。

今年の「ザ・リバー」を見たとき、はるかむかしの水害&少女の人柱譚のほうが、昭和39年の世界より以上にリアルで、切実に感じられて、それはやはり、3月の震災の影響が舞台を受けとめる側の心理に大きく影響していたからだろう。自然災害の大きさとこわさを実感してしまったからこそ、おみつという少女の犠牲的言動と存在感は、圧倒的だ。
その結果、昭和39年から見た過去の話というにとどまらず、おみつが生きた時代から昭和へ、そしてさらに、いま私たちが生きている時代やその先に続く未来へという視点が通って、そこに、今回の「ザ・リバー」の新しさと感動があったと思う。


「ザ・リバー」は、昭和39年のシーンと過去のシーンとが、いろんな意味で対照的につくられている訳だが、この両者を交互に展開させることでさらにコントラストをつけて観客の感情をゆさぶる中盤以降の流れが、とってもよく出来ている。

私が好きなのは、昭和39年の場は大勢の子どもたちが登場して舞台を彩るのに対して、過去の場では、子役をおみつと(妹の)お染だけにしてあるところ。(過去のシーンには、加代役や町子役のキャストも出ているので、そういうのを見るおもしろさもあるが)。


再演時の舞台のエネルギッシュな躍動感が思い出される「キャッチ、ロー」や「Big Rivers 1964」のダンサブルなシーンが、今回は、とてもキュートに、そしてハートウォーミングな雰囲気が感じられるものになっていて、これも、今年の舞台のひと味ちがう趣き。

子どもたちによる群舞やミュージカルナンバーには、ボート競技を応援するという劇中の設定を離れても、広く応援歌的な魅力があって、これもこの作品が呼び起こす感動の源泉のひとつだ。


青組のおみつは「パック・ザ・リバー」総集編のメイン子役らしく華があり、白組のおみつは、聴く者の心に深く沁み通る声の持ち主で、それぞれの持ち味が活きていた。

川上姉弟のなかでは、真弓ちゃんがおもしろくて、いいな。見ていて、あの子が、後年、あおいちゃんとみどりちゃんの母親になるのか…とか思っちゃうよね(笑)。

カッパやカワウソから昭和の子どもになって、けっこうイメージが変わるのがおもしろい。子どもキャストの場合は、1年経っていて成長しているということもあろうけれど、「パック・ザ・リバー」のときはほとんど見ていなかった子に注目したりと、ふつうに人間の役を演じるよさというのも感じた。


出演者は、毎年のように出演しているおなじみの名前が多いようでいて、顔ぶれはけっこう入れ替わってもいる。
今回も、4年前と同じ役を演じていたり、年齢が上の役柄にステップアップしたキャストもいれば、抜擢、あるいは新人の登場もあって、このあたりも見る側の楽しみになっている。

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