第80回日本音楽コンクール 本選 バイオリン部門(東京オペラシティコンサートホール)


10月23日(日)は、東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアルへ。

第80回日本音楽コンクール本選会 バイオリン部門


午後4時開演。

終演は、8時10分頃。

プログラム(本選会共通)、1200円。


本選出場者と、演奏曲目は、演奏順に下記のとおり。※カッコ内は、演奏後の審査結果


城戸かれん (3位) ベートーヴェン:バイオリン協奏曲 ニ長調 作品61

藤江扶紀 (1位) チャイコフスキー:バイオリン協奏曲 ニ長調 作品35

  〜休憩〜

寺内詩織 (入選) ベートーヴェン:バイオリン協奏曲 ニ長調 作品61

宮川奈々 (入選) チャイコフスキー:バイオリン協奏曲 ニ長調 作品35

  〜休憩〜

篠原悠那 (2位、岩谷賞) ブラームス:バイオリン協奏曲 ニ長調 作品77


いずれも共演は、渡邊一正指揮 日本フィルハーモニー交響楽団


城戸かれんちゃんの1位を期待していたけれど、なかなか上手くは行かないものだね…。

演奏順が最初だったことは、予想以上に不利に働いた気がする。個性が強いとかインパクトのある演奏をするといったタイプではないから、会場全体がまだ手探りな段階で演奏したことで、後に続く演奏者の露払いをしたみたいになって、なんだか損をした感じ。順番が後ろのほうだったら、またちがっていたのではないか。プログラムが進むにしたがって、印象が薄れてしまうようで、ハラハラした。

城戸かれんちゃんの、あの銀ねずのドレスは似合っているのだけれど、でも、今回の出場者のなかでは、地味だったよね。審査会とはいっても、観客(聴衆)の前でコンチェルトを演奏する以上は、ステージに出たときからソリストらしい存在感を見せる部分があってもいいのでは、と思った。


今年のヴァイオリン部門の本選は、昨年より出場者がひとり多くて、5人が演奏したが、出場者それぞれの「色」が感じられる演奏が続いたことで、昨年よりも面白くて、見ごたえ、聴きごたえがあった。


1位になったひとは、アグレッシブというか、攻めの演奏でお客さんを惹き込んだ。岩谷賞(お客さんの投票で決まる聴衆賞)が、2位のひとに行ったのは、演奏順と選曲が奏功したということもありそう。(もちろん、私が投票したのは、1位のひとでも、2位のひとでもなかったけれど)

昨年もそうだったけれど、同じ楽曲を複数の出場者が演奏した後に、ちがう曲が来るとそれだけで新鮮だし、ガラッと雰囲気が変わる。

2年続けて、このコンクールの本選会場に足を運んで思うのは、観客(聴衆)の反応というのは正直で、ちゃんと的を射ているってこと。いい演奏には、拍手も大きい。演奏後の、オーケストラのひとたちの反応や表情も、また注目点で、そこに共演したプロ奏者の評価を穿つのもおもしろさのひとつだ。


5人の出場者のうち、いちばん印象的だっのは、寺内詩織さん。城戸かれんちゃんと同じベートーヴェンを弾いたのに、全くちがうといっていいくらいにソリストの持ち味が発揮されていて、その演奏に魅了された。少女っぽいルックスなのに、演奏中の姿や表情には独特の艶があって、楽器の音だけでない魅力もたっぷり。

あの黒のドレスが、素敵に過ぎた。黒というより、漆黒という感じの地に、和服テイストの花柄のデザインがすばらしくて、目を奪われる。また、あのドレスで演奏するのを見たいな。

プロフィールを見ると、寺内詩織さんは、過去にも2度本選に出場していて、聴衆賞に選ばれたこともあるから、聴き手の気持ちを掴む資質があるのかも。今回も、トータルなパフォーマンスとして見れば、もっとも表現力に優れていたと思う。純粋なクラシックファンはどう思うのか分からないが、演劇やステージパフォーマンスを好んで見る目には、優れたプレーヤーとして映るだろう。


ところで、この日の当日券は、S席は売り切れで出ていなかったが、A席は90席以上あった。いったいあの『ピアノ・バイオリンのS・A指定席に関しましては、前売券が非常に売れておりますので、当日ご用意出来る可能性がかなり低い状況となっております。』との事前告知は何だったのか、と。ちなみに、B席は300席以上出ていた。