華果西遊記(国立劇場歌舞伎鑑賞教室)の子役
国立劇場6月歌舞伎鑑賞教室「華果西遊記」(6月1日〜24日国立劇場大劇場、26日には山梨県立県民文化ホール)の子役は、
下記18名が、「悟空の分身」として、12人ずつの交互出演。(プログラム表記は50音順になっている)
明野響香 浅川柊哉 浅野加寿希 安齋菜々花 石井晏璃 稲田京也 稲田有梨 宇都宮知那 小笠原茜梨 小澤正憲 金子尚太郎 北村悠吾 坂本達哉 品川文音 下田澪夏 藤芳佳鈴 細川愛華 松井美瑳乃
歌舞伎公演ではおなじみの、あるいは松竹系の商業演劇に出演歴のある子たちにまじって、はじめて見る名前も何人か。
「華果(かか)西遊記」(三世河竹新七 作、石川耕士 脚本、市川猿之助 演出)は、
第一場 西梁国智籌殿の場
第二場 雲中の場
第三場 盤糸嶺山頂の場
の3場からなって、約1時間。
「華果西遊記」の前に「解説 歌舞伎のみかた」があって、これに、20分の休憩を合わせて、上演時間はトータル2時間弱。
以下、6日(土)に見た舞台の雑感。
子役が出る第二場は、第一場と第三場のつなぎの場で、転換のための幕前芝居にあたるシーンである。
猪八戒(猿弥)と沙悟浄(弘太郎)が蜘蛛の糸に捕われたと知った孫悟空(右近)だが、三蔵法師(笑也)の行方を捜すために助勢に行けないので、代わりに分身を大ぜい登場させる。
花道の孫悟空が毛を抜いて吹くと、本舞台で幕が振り落とされて、子役が演じる分身の小猿大ぜいが居並んで現れる。真ん中に小さい子がいて、端に大きい子と、左右に6人ずつ背の順の並びで、合わせて12人。揃いの拵え(下に着ている茶色のスパッツがかわいい感じ)で、みな鎌を持っている。
何で鎌かと思えば、その鎌で、蜘蛛の糸を「かっ切る」という訳で、「かっきれ、かっきれ」から「かっぽれ」になって、小猿たちがかっぽれを踊るという趣向。・・・というのは、上演台本(550円)を買っていたから、得心出来たところあり。
このあと、子役たちは、花道から退場。猿メイクで、どれがだれやら分からない。(そもそも、私は、孫悟空が市川右近だったのかどうかが分からなかった。そう書いてあるからそうなのだろうが、あの化粧は、とにかく「猿」としか見えないのだが…)
さて舞台は、敵役が女ばかりの国の女王姉妹(笑三郎、春猿)で、実は蜘蛛の精なので、劇中では、(「土蜘」のあの)蜘蛛の糸を、これでもかといっぱい投げ、後半には「小金吾討死」ばりの立ち回りがあったり、また、悟空が手品を見せるなど、歌舞伎らしい趣向+サービス精神が詰め込まれている。が、その割りには、全般に単調な印象。部分々々の面白さと、歌舞伎芝居としてのテンポとが、上手くとけ合っていない気がした。
「解説 歌舞伎のみかた」を担当しているせいもあってか、敵役のふたり(笑三郎、春猿)のほうが、主役の悟空よりも存在感が濃く思えてしまう。女王姉妹のダブル海老反りばかりが記憶に残っている。
第一場で、飲むと孕むという泉の水を飲んでしまい、懐胎して苦しむ八戒を、悟空が手術して「子胤」を取り出して治すというシーンがあるが・・・話がグロテスクで、ドン引きである(苦笑)。
最後に、メインキャストによるカーテンコールが付いた。
「解説 歌舞伎のみかた」では、歌舞伎のお約束を説明したり、差し金つきのボールでバレーボールをさせるというのもいいけれど、もっと「華果西遊記」そのものを楽しむための解説に時間を使ったほうがいいのでは?