壽 初春大歌舞伎 昼の部(歌舞伎座)


1月19日(月)に、歌舞伎座で、壽初春大歌舞伎 昼の部を見た。

昼の部は、染五郎七之助で「金閣寺」、玉三郎の「蜘蛛の拍子舞」、幸四郎魁春の「一本刀土俵入」

11時開演。

金閣寺」が12時33分まで、30分の幕間、「蜘蛛の拍子舞」が2時08分まで、20分の幕間、「一本刀土俵入」が3時50分までで、トータル4時間50分。


今月出演の子役については、→http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20150103/p2

歌舞伎座に入ると、3階まで上がって、舞台写真をチェック。「一本刀土俵入」のお蔦(魁春)や辰三郎(錦之助)の写真にお君ちゃんが写っているものがいくつかあった。ほとんど日下部大智くんのお君ちゃん(19日の出演も日下部くんだった)が写っていたが・・・ひとつだけはちがうのかな?

ほかに、庄屋女房(歌江)、武家女房(玉之助)の写真に角兵衛獅子の子が写り込んでいるのが2点あったが、ピントは合っていない。


さて、「一本刀土俵入」について少し書いておくと、

高麗屋の駒形茂兵衛は、私ははじめて見た。これまでに見た「一本刀土俵入」とは大きく異なるところがあった。

大詰第一場の冒頭に、戯曲にはないシーンが足されていた。

流れの三太郎の跡をとって、いまは親分と呼ばれている船戸の弥八(由次郎)を登場させ(本来、弥八は序幕にしか登場しない)、波一里儀十の子分たちとのやりとりがあり、ここで、波一里儀十が草相撲の三役だったという、もともとは戯曲のト書きにしかなかった設定をセリフにして観客に伝えたこと。「一本刀土俵入」は、クライマックスで、駒形茂兵衛と波一里儀十(歌六)が得物を捨てて、相撲での一騎打ちになるのだが、儀十が草相撲でならした男だということは戯曲を読んでいないと分からないから、なぜ儀十から誘って相撲での勝負になるのかが理解しづらい。そこを、今回の「一本刀土俵入」では、シーンを書き足すことで補っていた。

これが、以前から松本幸四郎が駒形茂兵衛を演るときには行われていた補綴なのか、今回がはじめてのことなのかは私には分からないが、今日日の観客向けに辻褄を合わせてすっきりしたと思うと同時に、長谷川伸の名作にあからさまに書き足したりしていいのかな?という疑問も抱いた。


演出面では、大詰で、お蔦の家のなかから外へと転換するときに、お蔦の家が舞台奥になるまで、舞台を180度回していたこと。他の役者の駒形茂兵衛のときには、舞台を回すにしても、回り舞台がなくてセットを動かすにしても、お蔦の家を上手側へ動かしていたはず。

そういえば、お蔦の家のなかの、お君ちゃんの手習いの机が、今回は、家内の上手側ではなく奥(窓のほう)に置かれていたが、これは、お蔦役の役者によってやり方にちがいがあるのかな?


序幕の利根の渡し場では、角兵衛獅子の子役ふたりが、正面向きで側転を右に左に連発して、びっくり。子役を見せるように舞台を使っていたり、ふたりがおあしをもらったあと、渡し船に乗ってからも、客席に顔を向けるようにしていた。(子役指導のひとがちがうとこんなに変わるの?!というくらいに、以前とはちがって見えた)


お蔦が茂兵衛のことを思い出すのは、頭突き、だった。

つい先日読了した、近代日本演劇の記憶と文化 2「商業演劇の光芒」という本には、
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20150115/p2

矢野誠一「二枚目の疵」(文藝春秋)からの引用で、頭突きを見て、お蔦が茂兵衛のことを思い出すというやり方は、長谷川一夫がやったことで、それが歌舞伎の舞台でも採られたものだと書かれていた。