劇団若獅子陽春公演(浅草公会堂)


4月16日(土)に、浅草公会堂で

劇団若獅子陽春公演を見た。午後3時30分開演の回。


観劇自体が久し振り(約5週間振り)のことだった。

震災以降の原発不安や収まらぬ余震で、いつ何が起こるか分からないなか、娯楽のために出かけることにそれなりの覚悟が必要な状況は相変わらず続いていて、4月以降の私の観劇は大幅に少なくなる見込み。この日(16日)も出かける前にけっこう大きな地震があって、行こうかやめようかと、かなり迷った。鉄道は、往路はその地震の影響で遅れが出ていて、復路は人身事故があって遅れていた。

東京メトロ(銀座線)の浅草駅には、いつの間にか、ホームがある地階に改札口が増えていた。


平成23年 劇団若獅子陽春公演は、特別出演として市川亀治郎を迎えて、

 一、「一本刀土俵入」(作:長谷川伸、演出:田中林輔)
 二、歌舞伎舞踊「保名」
 三、澤田正二郎立案に拠る「殺陣田村」(監修:田中林輔)


4月中に各地で上演されるこの公演、東京は浅草公会堂で、4月15日(金)〜4月17日(日)まで、全5ステージ。

公演プログラム、500円。

会場掲示の上演時間は、

「一本刀土俵入」序幕 55分
 休憩 20分
「一本刀土俵入」大詰 55分
 休憩 15分
「保名」 20分
「殺陣田村」 15分

終演予定は、6時30分だったが、カーテンコールも含めて、予定よりも、5、6分早く終わった。


劇団若獅子の公演を生で見るのは、2007年の、「国定忠治」42年振り全通し上演〜才兵衛茶屋より土蔵大捕物まで〜を見て以来になる。


長谷川伸の名作「一本刀土俵入」(2幕5場)は、六代目菊五郎が歌舞伎の舞台で初演してから、今年で80年になるのだという。ものの本によれば、戯曲の初出は、昭和6(1931)年の「中央公論」6月号。

また、公演プログラム(各公演地共通のようである)によると、前橋市には駒形茂兵衛地蔵というのがあり、駒形茂兵衛なる侠客は実在したらしい。


配役は、

駒形茂兵衛: 笠原章
お蔦: 市川亀治郎
清大工: 御影伸介
掘下げ根吉: 桂広行
河岸山鬼一郎: 水野善之
船印彫辰三郎/筋市: 中川歩・浅井弘二 (交互出演)
波一里儀十: 横澤祐一
船戸の弥八: 真砂皓太
老船頭: 細川智
いわしの北: 伊吹謙太朗
博労久太郎: 市川澤五郎
おぶの甚太: 功刀明
料理人/船夫: 貴田拳
籠彦/伊兵衛(若い夫): 新島愛一朗
若い船頭/赤金の升: 並木敏郎
盆持ちの良/惣六: 紘貴
行商人: 今井吉清
お松(酌婦): 南條瑞江
お吉(酌婦): 中條響子
おかね(花嫁の母): 舞戸礼子
子守娘: 根本亜季絵
老婆/おみな(若い妻): 柴田時江
子守児/お光(花嫁): 伊藤菜生
お君(子役): 角田深優


お君ちゃん役の角田深優ちゃんという子は、検索してみたところ、今年の1月に劇団フジの公演に出演したときに小学2年生と紹介されているから、この4月には3年生のようである。お君ちゃんの髪は、かつらではなくて、地毛で結っていた。

この若獅子の舞台では、お蔦は娘のことを「お君ちゃん」と呼ばずに「君ちゃん」といっていた。同じ市川亀治郎のお蔦でも、歌舞伎の舞台では「お君ちゃん」といっていたから、「君ちゃん」と呼ぶのは新国劇でのやり方なのだろうか?

その君ちゃんは、父・母への呼びかけは「おとっちゃん」「おっかちゃん」で、歌舞伎と同じ。

お君役の子役は、序幕の安孫子屋の場では、茂兵衛が船戸の弥八を頭突きで追い払ったあと、水を飲みに行った間に、巡礼の娘役でも少し出て、せんべいをかじっていた。

取手・安孫子屋の場では、お蔦が茂兵衛の名を訊くと、茂兵衛が親方の名を答えるという件りがあるが、この、親方やおかみさん云々は省いてあったようで、すぐに駒形だと名乗っていた。

利根の渡しの場の最初では、花嫁とその母親が出ていた。歌舞伎だと角兵衛獅子が出るところ。今年1月に見た、浅香光代公演の「一本刀土俵入」では、最初の安孫子屋の場で花嫁と母親を登場させていた。ということからすると、新国劇大衆演劇では、この花嫁が出るというやり方は、ひとつの演出として定着したものなのだろうか?


清元「保名」(市川亀治郎の安倍保名)は、花道を使わず、本舞台でのみ。


「殺陣田村」

『手取り 白扇』(シテ 笠原章、ツレ 伊吹謙太朗)
『居合い抜き』(シテ 水野善之、ワキ 伊吹謙太朗 功刀明 貴田拳 新島愛一朗 並木敏郎 紘貴 中川歩 浅井弘二)
薙刀』(シテ 笠原章、ツレ 真砂皓太、ワキ 功刀明 貴田拳 新島愛一朗 並木敏郎 紘貴 中川歩 浅井弘二)
『二刀流』(シテ 笠原章、ワキ 御影伸介 桂広行 水野善之 真砂皓太 他)

「殺陣田村」といえば、ユーチューブで動画(http://youtu.be/MI_nn6ueBKo)を見つけて、伊吹聡太朗の居合を見たときはうれしかったものだが、今回、はじめて生の舞台で「殺陣田村」を見た。(今回の若獅子公演にも出ている伊吹謙太朗という役者さんは、ご子息なのですね。商業演劇によく出ている役者さんだけれど、これまで子息とは知らなんだ)


オールキャストのカーテンコールがあって(お君ちゃんは2列目のいちばん下手端)、3優から(笠原章→市川亀治郎→南條瑞江の順に)挨拶があった。挨拶だけ聴いていると、まるで亀治郎丈が座長みたい。


なお、劇団若獅子の次回公演は、錦秋公演として、10月下旬〜11月に、三越劇場ほかで、緒形拳追悼「王将 坂田三吉の生涯」(北條秀司 作)を上演の予定。

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関連の過去ログ(抜粋)
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20110103/p3