市民ミュージカル「パック・ザ・リバー」(戸田市文化会館)


12月7日(日)に、戸田市文化会館で、

戸田市民ミュージカル「パック・ザ・リバー (Puck the River)」(作・作詞・演出:犬石隆、作曲・作詞:玉麻尚一、振付:岸田有子)

を観劇。

出演者は、60人。同日に2回公演あって、子役は、メインの役柄のほとんどはダブルキャスト(ただし、役替わり)で、午後1時開演が「青組」、午後4時半開演が「緑組」。

昨年の「ザ・リバー」再演のときの組分けは、「赤組」と「青組」だったが、今回は赤ではなく「緑」というのは、カッパが主人公だから、きっとそれにちなんだのだろう。

役付き以外の子どもたちは、「カッパたち」と、「河コロス・人間の子供たち・カワウソ軍」に分かれる布陣。
チラシの段階では「?」になっていた、国王・九九九左右衛門役には、演出家自らが出演していた。


2006年に戸田市市制施行40周年記念事業として上演され、2007年には再演された「ザ・リバー 二本の櫂」につづく2008年度の戸田市民ミュージカルで、「ザ・リバー」から派生したエピソードの第一弾としての新作ミュージカルである。
募集の際の概要等については、まだ、下記のエントリーからたどれましょうか…
 http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20081007/p1
 http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20080410/p1


昨年の「ザ・リバー」再演(→http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20071111/p1)は有料公演だったが、今回の「パック・ザ・リバー」は、再び、一昨年同様に往復はがきでの申し込み(無料)となったが、それもそのはずで、なんと、話が完結せずに、来年につづく、となってしまった。たとえていえば、二幕構成で各幕1時間ずつぐらいのミュージカルの、その第一幕だけを上演したような印象。面白かった分、おあずけを食わされた感じ。

上演時間は、1時間10分とアナウンスされたが、2回とも5分過ぎぐらいでのスタートだったから、1時間7、8分程度。


「パック・ザ・リバー」は、こんなお話だ。

カッパの国・キューリンパーは、カワウソの国・ウナウナ帝国から攻められ、窮地に陥っていた。男たちは戦いで死んだり、カワウソに捕われてしまい、国王・九九九左右衛門と総理大臣・九太郎以外には、いまや女、子どもばかり。

総理の九太郎がこの苦境を進言したところ、愛妾・マリリンの色香や美食(キュウリのステーキとか)に溺れる国王・九九九左右衛門は、ふたりの巫女を呼び出し占わせることにする。いい加減な巫女たちの託宣は、人間の子どもをカッパラッテ来いとのこと。(2回目のステージでは、この託宣が本当だと思うか否か、ここに1000人以上の人間がいるので訊いてみましょうと、九九九左右衛門と九太郎が客席へ問いかけるという件りが付いた)

そこで、カッパの男の子・勝九(かつきゅう)と、パックが指名され、ふたりは人間の子どもをカッパらうために地上へ向かう。

ちょうど飛ばされて来た帽子を拾ったパックと勝九は、その帽子の持ち主の小学生・川上みどりちゃんと中学生の姉・川上あおい、いっしょにいた姉妹の母・川上真弓の親子3人をカッパらうことに決め、カッパのおまじないをかけると、河のなかのカッパの国へと連れて行く。

キューリンパーへやって来たみどりちゃんたちは、むかしむかし洪水を鎮めるために女の子が人柱に立った話をカッパたちから聞かされたり(彼女はちょうどそれを宿題で調べていた)、人間の行なう工事でカッパの暮らしが脅かされていることを知る。そして、トートバッグに入れて持っていたパソコンでカワウソが夜行性で光に弱いことを調べてあげる。

そんなとき、カワウソ帝国のチュッパ隊長と内通していたマリリンの裏切りで九九九左右衛門が刺されて重傷を負い、キューリンパーはウナウナ帝国の攻撃にさらされる。なんとか持ちこたえたカッパたちだったが、チュッパ隊長に騙されていたマリリンをかばった勝九が、カワウソ軍に捕まってしまう。

捕虜になった勝九を助け出さなくては!でも、カッパのおまじないの魔法は3日しか効かず、いったん地上に戻らなくてはならなくなった川上親子。果たして、みどりちゃんはカッパたちの救世主になれるのか? 平和を願う総理大臣・九太郎には、過去に何やらカワウソのチュッパ隊長との因縁があるらしく…。それぞれの思い入れあって、幕。

このあとに、フィナーレ(カーテンコール)が付いて、新たにつくられた戸田市民ミュージカルのテーマ曲「漕ぎ出そう未来へ」がうたわれ、最後は、『To be continued』が出て、パックが「また来年お会いしましょう」といって、来年に続くとなった。


戸田に伝わる、荒川の河童伝説に想を得たという「パック・ザ・リバー」。「ザ・リバー」のエピソード第一弾と銘打っただけあって、人柱になって流されて来た少女を水神さまのもとへ導くのがカッパの役目だったとして、「ザ・リバー」でのメインナンバーのひとつ「水よ」を使って前作のイメージを喚起したり、パックと勝九がカッパらう人間を、「ザ・リバー」の川上家の次女・真弓とその娘たちとするなど、前作の登場人物のその後も織り込んでいて、年代記的な広がりをも期待させるつくり。

劇中のセリフによれば、大人になった(前作の)川上三姉弟は、今回の「パック・ザ・リバー」に登場した次女・真弓のほか、弟の弘史は鉄工所を継ぎ、長女の波恵が3人の父・宗男の面倒を見ているとのことだ。


頭にお皿があったり、「しりこだま」を抜くだとか、カッパの好物はキュウリ、といった河童伝説のお約束がちゃんと押さえてあるし、カッパの男は名前に「九」の字がたくさん付くほうが偉い、などの細かい設定もおもしろい。

棒を使ったカッパたちとカワウソ軍の戦闘シーンをはじめ、前作に劣らず、アンサンブルの見ごたえは、充分。


緑と黄緑の組み合わせによるカッパの衣裳が、シンプルだが鮮やかで、かわいい。同じカッパの子でも、上(ハイネックっぽいタイトなTシャツふう)が緑で、下(スパッツ)は黄緑の子と、色の組み合わせが逆の子がいて、そのあたりの工夫も目に楽しい。手袋の色も緑と黄緑の子がいたが、これは、スパッツの色と合わせてあったのか。


昨年公演(→http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20071111/p1)で印象的だった何人かのキャストには、自然と目を惹かれた。今年は、川上みどり役の女の子がよかったなぁ。人間役のメインだし、シングルということもあるけれど。

ということで、2009年には「パック・ザ・リバー」にどんな結末がおとずれるのか、楽しみにしたい。(欲をいえば、続きからでなく、「通し」で鑑賞したいものだが…)


ところで、戸田には「河童の金さん」というどら焼きのお菓子があるのだね。
http://www.smdc.or.jp/gochisou/chuo/toda.html
栗が入っているというから、機会があったら、ぜひ食べてみたいと思う。