SAMURAI 7 (新宿コマ劇場)


11月23日(日・祝)は、新宿コマ劇場

SAMURAI 7(脚本:渡辺和徳、演出:岡村俊一)

を見た。夜の部で、午後6時開演。

新宿コマ劇場は、いつもとはちがい、チケット売り場寄りを出入り口にするのではなく(そこは受付になっていた)、中央部分のドアを開けて、チケットをもぎっていた。

プログラムは、事前の告知どおり、2500円で販売。カラーというより、何色刷りとかいうみたいな色調のページばかりで、がっかり(客席のほとんどを占めていた女性ファンはこの内容で納得したのかしら?)。

脚本、演出は、ここ数年の商業演劇でいえば、明治座で2年続けて上演された「あずみ」のコンビのようだ。


ロビー表示の上演時間は、第一幕、第二幕とも70分で、幕間が20分。

ただし、11/23の夜の部は、6時開演の第一幕が終わったのが、7時20分。二幕〜カーテンコールの終了が、8時50分近く。

観劇した回の客席は、近年の座長公演の席割りでいえば、B席部分は音響操作卓がある以外、お客さんは無人。両端っこのA席部分も売ってなかった模様。それ以外のスペースのうちの、8割が埋まっていた感じ。


原作のアニメのことは全く知らなかったが、観劇後にアニメ版の公式サイトを少し見てみたところ、キャストの衣裳などは、アニメのイメージを損なわないように作られていたようだ。といっても、キララはおなかは出していなくて、衣裳の下には白のレオタード or ボディスーツを着用、子役のコマチは、下に白のTシャツを着ていた。


第一幕が、映画の「七人の侍」をベースにした部分で、第二幕が、天主(あまぬし)との対決、という展開。もとになっているアニメ版のストーリーと今回の舞台との異同については、私には分からない。

これまでの観劇であまり接したことがない、テンションの高いシーンが目白押しの活劇で、とても面白く見た。SF調の設定に入り込めるかとの不安もあったが、これは杞憂だった。


テンポの速さには驚かされる。照明を変え、役者の動きや出入りで次の場へ転換して行き、それに比例するように筋の運びも速く、めまぐるしく話が進んで、無駄な間や、転換つなぎとは無縁の舞台だ。

さらにそこに殺陣、というよりは、むしろブレイド・アクションといったほうがいいかも知れない剣戟シーンが、見せ場としてこれでもかと繰り出される。過剰ともいえる効果音と扇情的なライティングがアクションシーンを支え、彩る。コマ劇場の舞台機構も多用され、装置や美術というより劇場の機構をそのまま活かしたような印象。舞台奥で映像も使われる。

集まったサムライたちの個性や生き様、信頼やライバル関係、欲望や裏切り、仲間の死、権力との対峙、ヒロインの巫女・キララをめぐっての思惑などなど、旧来からあるドラマ的要素をふんだんに盛り込んで、それらのひとつひとつが、熱い演技、セリフで語られるにもかかわらず、スピード感あふれる展開とたたみかける剣戟シーンの連続に中和されてか、いずれもが、くどくならないのも舞台の面白さのポイントといえる。


新宿コマ劇場の座長公演だと、セットを替えるたびに幕を下ろすか、花道芝居になって、コメディアンや三枚目役者が転換つなぎの芸をしたり、幕前でナレーター役のキャストが説明ゼリフをしゃべり、バイプレーヤーが次の場への橋渡しになる芝居をするのが常套、あるいは、座長の演歌歌手の主題歌が流れて、観客は映写された歌詞や映像を眺めているなどというのもありがち。そのなかには、脇の役者が腕のあるところを見せて観客の目を惹いたり、楽しく笑わせてくれるケースもあるとはいえ、退屈な時間がほとんどだ。

そんな無駄な時間を削ぎ取った演出やテンポは、この劇場で見る芝居としては、とても斬新だと思った。と同時に、一幕の7、80分の上演時間が、客席にいて、2時間近く経ったようにも感じられるという、不思議な感覚も味わった。この感覚を自分なりに信じるなら、それだけストーリーが凝縮されていたのだろうし、また、一般的な座長公演のテンポからすれば、2時間で見せる内容を、7、80分で運んでいたという見方も出来そうだ。


各幕の開演前には、ヒョーゴ役のキャストが客前に登場して、このシーンでキャラクターの名前を呼んで欲しい、とか、こういう場面になったら合図をするから万歳して下さい、など、一部シーンでの観客参加をお願いしてからの開幕。(さすがに、ファンじゃないと、呼べないだろう…?)と思いつつも、強制されるほどでもないし、劇中に客いじりがある訳でもないので、とくに問題なく進行。


宮武美桜・祭姉妹は、大劇場の子役としては予想以上によかったし、揃ってかわいかった。

11月23日夜の配役は、

 コマチ: 宮武祭

 オカラ: 宮武美桜
ふたりはダブルキャストだが、役替わりで、キララの妹役のコマチがメインキャスト。コマチで出ない回は、オカラという神無村の娘の役(アンサンブルといったところ)にまわっていた模様。

宮武祭ちゃんのコマチは、アニメと同じに、赤い「まりも」みたいなのをふたつ髪につけていた(ヘアバンド状に)。舞台に立っているときは、親指をなかに入れて両手をグーにしていることが多かった。子役は、手のおさまりが悪いと上手に見えないことがあるから、そういう意味では、これはよかったと思う。
コマチの場合、テンションの高いシーンに、子どもがひとりだけ交じる、という絵面になるから、両手をグーにして握っているのは、緊張を感じさせもするし、姿勢のよさにもなっていた。(キクチヨの最期の場面のコマチは、ちゃんと見せ場になっていた)

宮武美桜ちゃんのオカラは、赤ちゃんを抱いていたりして、その赤ちゃんは人形。

コマチもオカラも、二幕の終わりのほうで、村人たちといっしょに踊るシーンが少しある。


千秋楽前日の夜公演とあって、カーテンコールでは、(主演の加藤雅也さんから)祭バージョンのコマチは最後だという紹介があった。コマチを演じた感想などをひと言いって欲しかったようだが、宮武祭ちゃんは、見に来てくれた客席へ、ありがとうございましたと普通に挨拶した。その後は、ちょっと涙ぐんでいる様子だった。


ロビー階段の踊り場に、宮武姉妹へ堀北真希より、の花があった。

なお、この舞台「SAMURAI 7」は、DVDとフォト&シナリオブックの発売が決まっている。ちょっと欲しいかも。