坂本冬美 藤あや子 特別公演「おさんとおしの」(明治座)


明治座創業140周年記念
坂本冬美 藤あや子 特別公演(9月1日〜27日)

 「おさんとおしの」(山本周五郎「さぶ」より、田中林輔 脚本・演出)
 冬美とあや子の麗しのショータイム


9月の明治座公演を、日程の終盤に、2ステージ観劇して、ダブルキャストの子役を1回ずつ見た。(プログラム入手が日程の後半になってからだったこともあり、思うように予定が立てられなかったのは、残念…)


劇場に掲出の上演時間は、

「おさんとおしの」第一幕 40分
 休憩 30分
「おさんとおしの」第二幕 55分
 休憩 30分
冬美とあや子の麗しのショータイム 1時間15分


公演プログラム、1500円。

「ダブル座長」だからなのか、普段の明治座公演よりチケットが、席種によって1000円〜1500円高くなっていて、プログラムも普段よりも500円高い値段設定。にもかかわらず、チケット購入時の残席状況や、観劇日の客席の状況からすると、かなりの人気公演だったようだ。席とりくんだと、A席13500円→12500円という割引があったのだけれど、あまりよい席が出ていなくて、千秋楽のチケットも劇場の窓口で買ったりしたので、結局、割引の恩恵は受けられず。


さて、「おさんとおしの」。子役は、「おさんとおしの」のおさんの妹役で、

おみつ: 千葉真子・小山やよい (ダブルキャスト)


子役の出演は、第一幕のみ。おみつは、「すみよし」という小料理屋で働いている姉のおさん(坂本冬美)を訪ねて来て、おとっちゃんのあんばいがよくない、おっかちゃんは死ぬしかないといっていると、泣きながら手紙を見せて金の無心をするが、姉のおさんにも金の都合をつけられるはずもなく、おむすびを持たされて帰る。

千葉真子ちゃんは、ほぼ泣きっぱなしでセリフをいっていて、舞台に登場してから退場まで、流れを切らさずに演じていた。じっさいに涙も流していたり、泣きながらの芝居が上手いことがよく分かる。約2年ぶりに、明治座の舞台で千葉真子ちゃんを見られたのが、何より。

小山やよいちゃんは、セリフのときとか、途中で何度か泣き止むので、そこが演技のアクセントにもなって、メリハリがあった。ふたりの演じ方のちがいも、興味深く見た。

最初に見たときは、第二幕にも出番があるのかな?と少し期待したが、二幕での、おさんの両親と妹は死んだというセリフを聴いて、がっかり。でも、第一幕に、妹がおさんを訪ねて来るシーンがあることで、後半(第二幕)になっての、おさんの両親は妹(おみつ)を道連れにしたというそのセリフに説得力が出ている訳だ。


「おさんとおしの」は、原作の小説「さぶ」をもとに、主人公を女性ふたりに書き替えて劇作したものとのことだが、芝居として面白いとはいいづらい。ひとつには、主人公のふたりが、揃って辛抱役といった役どころなので、見ていてしんどいということがある。また、登場人物や、人間関係のえがき方が設定止まりでもあり、演じる俳優陣の存在感や腕に頼った舞台だとも感じた。

そもそも、おしの(藤あや子)が、ひとに憎まれる女性、欠点のある人物として登場していないのだから、なぜ濡れ衣を着せられ人足寄場へ送られなければならないのかが納得しづらいし、無実が証明されるのも、当事者が改心して名乗り出たからというのでは、話が理不尽に過ぎる。

なお、劇中の役柄は、おさんが17歳、おしのが21歳とのことだ。

第一幕の終盤、事が起きる直前、酔った常連客の隠居を送って行くために、板前の清次(勝野洋)が店を出る。おしのにとって、いちばん頼りたい清次がいないときに事件が起こるようにつくってあったのが、上手いな、と思う。

人足寄場で、かたくななおしのの心をひらかせるために、同じ女人足のおとよ(紫城いずみ)が身の上話をするところが、なかなかいいシーンだった。(紫城いずみさんて、「細雪」の井谷夫人でおなじみのひとだね)


27日(木)の千秋楽は、歌謡ショーのあとに、オールキャストが舞台に揃うカーテンコールがあった。歌謡ショーのダンサー以外の、「おさんとおしの」のみの共演者は、すでにお着替えしての登場。

ダブル座長を真ん中に、前列に並んだキャスト(チラシの表裏に写真が出ているメインキャストの10人)から、あいさつがあった。

子役のふたりは、当初は後ろの列の両端にいたが、座長さんたちに呼ばれて真ん中に来て、カーテンコールの終わりまで、ダブル座長の間の真ん中に立っていて(向かって右が千葉さん、左が小山さん)、最後に、座長さんに促されて、マイクを向けられ、ひと言ずつしゃべった。

千葉真子ちゃんのお洋服は半袖で、まだ夏のイメージだったけど、小山やよいちゃんのほうは、すっかり秋の装いだった。

小山やよいちゃんて、プロフィール写真(http://www.g-tohai.co.jp/UserTalent/Detail/129)を見て思っていた以上にかわいいし、演技も上手いな。


余談だが、この公演は「ダブル座長」ということになっているけれど、タイトルでもプログラムの掲載順でも、坂本冬美さんが先になっていた。「おさんとおしの」では、役柄としては藤あや子さん演じるおしののほうがいい役なのに、おさんが配役のトップに来ていて(これは、原作がそうだということでもあろうが)、ふたりが並んだときも、上手側が坂本、下手側が藤という立ち位置だった。