死にぞこないの青


9月1日は、映画が1000円のサービスデーなので、夕方からミュージカルを見る前に、何か映画を見ようと思った。

「同窓会」「死にぞこないの青」「きみの友だち」が候補。(まだ上映していれば「地球でいちばん幸せな場所」がいちばん見たかったのだけれど、これは29日で終わっちゃっていた) 結局、時間が合うのは「死にぞこないの青」だけだったので、渋谷へ。

上映館は、はじめてだと道順がややこしいのだが、「口裂け女」のときに行ったことがあるので、迷わず到着。


死にぞこないの青」は、PG-12指定になっていた。それはそうかも知れない。長身で二枚目の担任教師・羽田(城田優)が、受け持ちの6年2組を掌握、コントロールするために、ひとりの児童・マサオ(須賀健太)をクラスのスケープゴートとして追い込み、彼に反撃の兆しが見えると、山の中に運んで殺してしまおうとする話だ。

担任教師のいけにえにされて、クラス中の標的にされてしまったマサオの前に、身体を縛られ、片目が潰れ、口が裂けた無残な顔の、青い少女(谷村美月)が現れ、彼に復讐をそそのかし、マサオは葛藤する。マサオは、はじめ、彼女を死んだ姉の幽霊かと思うが、「青(アオ)」は彼自身なのだという。映画のなかでは、マサオが少しずつ変わるに従い「青」も変化する。潰れていた目も開き、少しずつきれいになって行く。


脚本は「問題のない私たち」の森岡利行。そのせいか、体育の授業(ポスターやチラシがそれ)や、プールのシーンがある。
主人公の少年がいじめられて追い込まれて行く展開も、シンプルなえがき方なのに上手くて、見ていて、その理不尽さに猛烈に腹が立つ。


ここまであからさまで、悪意のあるケースはめったにあるまいが、教師から疎まれたり、担任と合わないということは現実のシチュエーションでも充分あり得ることだから、そういう意味で、こわい映画だ。

担任の羽田は、子どものときの母を亡くした水難事故をトラウマとして抱えて育ち、マサオは幼い頃に姉を亡くしている。ともに、その事故の現場にいて自分だけが助かったという経験をしている。羽田は、スケープゴートは誰れでもよかったと口にするが、無意識のうちに、身内を喪った現場にいた傷を持つ者同士が引き合ったのだと解釈しておいてもよさそうだ。


原作でどう書かれているかは知らないが、この映画では、夏休みに、マサオが羽田と命がけの対決をすることでひと皮剥けてハッピーエンドを迎え、理不尽と戦って成長する少年のストーリーにもなっている。
ただ、いじめられっ子がもうひとりの自分と対話するという話は、別の小説にもあったし、ホラーに徹した結末が見たかった、という気もした。

担任教師の仕打ちに苦しむマサオから、それとなく相談を持ちかけられた父親が、話し合えばいい、ダメでもとことん話し合う、というのだが、そんなきれいごとの無力さ、莫迦々々しさを、この映画はよく伝えている。


上映時間が、1時間35分と長過ぎないのが、いい。


パンフレット、500円。4つ折りのもので、試写会か何かで配布されそうなもの。

クレジットから(主役以外の)子役を抜き出すと、以下のようである。


瓜生美咲

三吉彩花 広瀬晶

槇岡瞭介 長内大祐 原周平 小林拓人 高橋里央 斉藤瑛梨寿 近藤真彩 酒井瑛莉 相馬美波 高橋優奈 竹内美宥 中田翠 原田真利奈 松井夢 内田賢人 加藤瑠惟 鈴木珠希耶 鈴木遼太 高山大貴 前田輝

内田流果 中村咲哉 谷山毅