音楽劇「ガラスの仮面」を見に行きました

8月12日(火)に、

彩の国ファミリーシアター 音楽劇「ガラスの仮面
(原作:美内すずえ、脚本:青木豪、演出:蜷川幸雄、音楽:寺嶋民哉)

を見に行きました。午後1時30分開演の公演です。


会場の、彩の国さいたま芸術劇場(大ホール)へは、自転車で行きました。正午に出発。久し振りにそこそこの距離を自転車で走ったら、存外な心地よさです。途中、信号待ちしていたら、昼食どきだったからか、歩道で宣伝のうちわを配っていて、もらうことが出来ました。思えば、今夏は、あちこちで、うちわをもらっていますが、もらえるとそれはとてもうれしいものです。犬も歩けば棒に当たるとはこういうことでしょう。扇子であおぐよりもいっぱい風が来ます。

途中、銀行に寄り道したり、バレエのチケットを買ったりしつつ(実質3列目だが端のほうだなぁ…)、ケッタで走って、与野の西友が見えれば、彩の国さいたま芸術劇場までは、もうすぐです。

開場の10分前くらいに到着すると、1階の情報プラザでは何やら演奏をしていました。ドレミの歌やエーデルワイスも演奏したようですが、私が着いたときには、それらの曲はもう終わっていたみたいです。自販機で冷たいものを買って、空いている椅子に座って水分補給をして、しばらく寛ぎました。


開演の15分くらい前に、階段を上がって、大ホールに入場しました。入口でくれるチラシの束のいちばん上に、「音楽劇 ガラスの仮面」のキャスト表がありました。これをチラシと合わせて見れば、プログラムは必要ありませんね。と思ったら、チラシより出演者が増えていて、また、チラシに出ていたのに、キャストに載っていないひともいます。

結局、1000円のプログラムを買うことにしました。奥村佳恵というひとのプロフィールも見たかったのですが、どこのバレエスクールなのかが書かれていなくて、残念です。

([追記] 出演者は、こちらに。→http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20080807/p3)

その後、ロビーに「水野弘子バレエ学園 水野永子」よりの花があるのを発見し、バレエスクールが分かりました。
ここ↓ですね。
http://www.mizuno-ballet.com/

水野弘子バレエ学園は、創立40周年記念として、8月10日には「白鳥の湖」の全幕公演があり、「ガラスの仮面」への出演がなければ、この「白鳥の湖」に出ていただろうことがサイト内に書かれています。


さて、「ガラスの仮面」。上演時間は、15分の休憩込みで、2時間50分。観劇回は、ぴったり4時20分に終わりました。

1階客席は、B列が最前列です。


開演前の舞台は、幕などで仕切られることもなく、いちばん奥まで開かれていて、この大ホールのステージの奥行きの深さが見渡せます。開演前には、出演者たちが、観客に紛れるように現れては、客席通路を通って舞台に上がります。お互いに挨拶したり、しゃべったりしながら、三々五々、舞台上で役者たちのウォーミングアップがはじまります。その横で、バックステージツアーのお客さんが説明を受けていたりします。

開演前にまだセットのない舞台をそのまま見せたり、役者たちがウォーミングアップするというのは、蜷川演出作品では見慣れた光景ですからおどろきはしませんが、演出家はインタビューのなかで、演劇が出来る過程をストーリーで見せる、劇場のおもしろさを子どもと若者に体感してもらいたい、というようなことを語っていましたから、舞台そのものの広さを見せておくことは、そうした効果もあるのかな、と思いました。じっさい、ステージそのものの広さを知った上で見るのと、組まれたセットや明かりの当たっている部分だけを見るのとでは、印象が異なりますものね。

場内には、ときどき、何分前です、という開演までの時間を知らせるアナウンスが流れますが、これも、観客に親切なサービスではなくて、舞台の上にいたり、客席から現れる出演者への時間通知なのでしょう。

そして、時間が来ると、役者たちがバーを並べてのダンスレッスンがはじまり、「コーラスライン」のオープニングみたいなダンスシーンがあって、すでにドラマの内なのか、ウォーミングアップの仕上げなのか、どっちかな?と思わせながら、はじまりはじまりです。


蜷川演出ではおなじみの、客席通路の使用が多用されます。出演者の客席出没も多いです。

通路だけでなく、C列とD列の間は、俳優が通ったり、立ち止まってセリフをしゃべったりもします。また、F列19番、20番の座席は俳優が劇中で使っていました。

舞台の使い方も面白いです。下手寄り・手前で演じていた北島マヤが、奥のセット前へ行くと場が替わり、そこへ上手からマヤを呼ぶ声がかかってまた次の場になる、といった、小劇場の芝居みたいな場面の動かし方があったり、ふたつの劇団が劇中劇で演じる「たけくらべ」を、上手と下手と同時進行で見せたり、片方の劇団が演じた続きがもうひとつの劇団のそれに替わったりなど、面白い見せ方があります。また、音楽劇の特性を生かして、いかにもマンガ的なシーンをダンスとうたで処理することもしていました。


雨が降るシーンは、理屈抜きで、本水の迫力に圧倒されます。私は5列目で見ていましたが、最前列にいたら、どれほどの臨場感だったでしょう。雨は、いちどならず、何度も降ります。これだけ降れば、雨そのものが立派な見どころです。もう惜しげもなく、といった感すらあります。

北島マヤはずぶぬれです。あれだけ雨に打たれたら「若草物語」の劇中劇での設定にも納得してしまいます。でも、大和田美帆さんは、色気がないのか、あんなにぬれても、いやらしさは全くありません。「たけくらべ」の競演も雨のなかで演じられ、また、青木麗(月川悠貴)がうたうソロナンバーでは、舞台の下手側だけ雨を降らせていました。

雨が降ったあとのお掃除も、その都度、スピーディーに行なわれます。雨を降らせば、水の片付けも欠かせませんが、その様子も観客に見せるのです。

セットとして舞台で使われる鏡も印象的でした。これも、「NINAGAWA十二夜」でも見ていれば新鮮さはありませんが、でも、とても効果的に使われていました。セットといえば、回り舞台ではないのに、ひとがセットを回すことで、舞台を回しているような見せ方をする転換も、水でぬれた舞台の処理と同じように、演劇のつくり方を見せるという意図的な演出なのでしょう。


ステージの奥行きを目いっぱいに使って、登場人物が歩くシーンは、とても心に残りました。とくに、舞台のいちばん奥から、照明だけの道を、まっすぐ前に歩いて来る、また別のシーンでは舞台を斜めに歩いて来る、その道のりのシンプルな美しさは、舞台というのは、こんなふうにストイックに使っても、観客を惹き込めるのだということを、改めて見せられているようでもありました。
これも、開演前から、舞台を観客の視線に開放していましたから、あの舞台をこう使っているんだ、と分かります。が、逆に、開演前に緞帳を下ろしていたらどうだったでしょう?舞台の奥行きを知らずに見たら、とてもおどろいたかも知れません。


月影千草夏木マリさんが、ひとりでマンガのイメージを象徴しているような存在感でした。ストーリーはともかくとして、北島マヤや、姫川亜弓は、マンガのキャラクターという感じは薄かったです。姫川歌子(月影瞳)と姫川亜弓(奥村佳恵)は、見た目が母娘らしくて、よかったです。


大和田美帆さんのマヤは、序盤に主役らしさを見せて、月影千草の前で、ひとり何役も演じ分けて見せるあたりで、精彩を放ちます。その後の劇中劇では、たとえば、終盤の、ジーナと5つの青いつぼ(でしたっけ?)をひとりで演じるところは、見足りない気がしました。いわばクライマックスなのですから、主人公の非凡さをもっと分かりやすく見せて欲しいと思いました。
もっと見たいといえば、奥村佳恵さんの亜弓がサロメを演じる舞踊のシーンも、もっと見たかったです。

原康義さんが劇画調の雰囲気を演じています。中村裕香里さんがけっこう目を惹きます。


カーテンコールは、奥村佳恵大和田美帆と出て、いちばん最後に夏木マリ、という順番でした。

プログラムのキャスト紹介の扱いも、大和田・奥村は1/2ページですが、夏木マリは1ページになっています。

ロビーでは、この公演の今後の日程のチケットを販売していました。買うと、ポスターをくれるといっていました。
舞台は楽しめましたから、好きな出演者がいれば、もっと見たいところですが・・・いちどで満足しておくというのも、ひとつの判断です。


観劇後、自転車置き場へ行くと、自転車で来ていたお客さんも、思ったよりも多かったみたいです。(えへっ)

帰りは、買い物したり、軽く食べたり、頼まれていたケーキをお土産に買ったりしました。そして、夕方、無事にお家に着きました。