常笑気流歌劇団「青山家の秘密」を観劇。


8月19日(日)は、ギャラクシティ西新井文化ホールで、

常笑気流歌劇団「青山家の秘密」(脚本:桐生梓、音楽:青木優、振付:hiro、演出:常笑気流歌劇団)

を観劇(これ→http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20070604/p1)


会場の西新井文化ホールへは、上野まで出て、日比谷線で折り返して行く予定だったが、宇都宮線が事故でしばらく動かないというので、急遽、東武線のいちばん近い駅までタクシーに乗り、東武野田線で春日部まで。そこから浅草行きに乗り換えて西新井駅下車という経路をとった。暑いのに、西新井では道をまちがえ、約5分のロスタイム。時間に余裕がなくきわどかったが、それでも、開演の10分前には会場に到着した。やれやれ。


常笑気流歌劇団は、2004年10月に正式結団し、足立区を中心に活動している歌劇団で、オリジナルミュージカルを生演奏で上演するというのが、この歌劇団の売りもののようである。今回の「青山家の秘密」は、同歌劇団のオリジナルミュージカルとしては、5作目となる。

常笑気流歌劇団を見るのも、会場のホールも、今回がはじめてだ。


チケットは、ぴあで発売日に指定席を買っていた。3列目だが傾斜がないので前のお客さんが若干被り、舞台奥は多少見づらいことがあった。

公演プログラムは、入場の際に無料配付。といっても、二つ折り4ページのもの(あらすじ、ミュージカルナンバーのリスト、配役、演奏、スタッフのクレジットに、歌劇団の沿革)。ミュージシャンを除くオールキャストは、18人だ。


午後2時開演。およその上演時間は、一幕45分、休憩15分、二幕55分で、トータル2時間弱。4時ちょっと前に終演。(プログラム記載のミュージカルナンバーだと、M11「ゴール目指して(R)」までが第一幕になる)


開演前には、最前列中央のお客さんに、買い物シーンに使う小道具(スーパーの商品)が配られたり、前方席のお客さんに幕開けのシーンで鳴らすクラッカーが配布されたりしていた。

(後援している地元のケーブルテレビだろうか?開演前にけっこう長いこと客席にカメラを向けていたが、ちょっと嫌だったな)


さて、開演。最初の「ハッピーバースデー」のシーンから、舞台に惹き込まれた。

これは、非常におもしろいミュージカルだ。こんな上質なオリジナル作品を上演するカンパニーが、西新井あたりに存在するのだねぇ。世の中は広い。そして、観客として見るべきものは、まだまだたくさんあるのだと再認識させられる。


青山家は、一美、二葉、三香、四織、五月、六摘の6姉妹。末っ子六摘のお誕生日のシーンから物語はスタートするが、このごろ、父と母は仲が悪い。それを心配した姉妹たちは、ふたりが若かった頃や、両親の出会いはどんなだったのだろうと、それを探るべく、青山探偵団を結成し、祖母や叔母など、両親のむかしを知るひとたちに聞き込みに出かける。

父親の優介には大学時代にいっしょにサッカーをしていた後輩で親友の大介がいて、ともに、(姉妹たちの母親になる)今日子を好きだった。今日子は大介と結ばれるが、事故で亡くなり、その後、傷心を癒してくれた優介と結婚したという経緯があった。長女の一美は、青山探偵団としての聞き込み中に、自分が、父の実の娘ではなく、亡くなった母の恋人、大介の子だという事実を知り、心揺れる。・・・というのが、大雑把な主筋である。


素材は、ありがちなホームドラマだが、美味しい味付けで、順序よく出て来て、量も多過ぎないので、のど越しもよく、後味もさわやか、といった感じの作品である。耳当たりのいい素敵なナンバーともあいまって、たいへんに楽しめる舞台になっている。

出演者の演技にも、ストーリーにも過剰なところがなく、青山6姉妹&たっくんを演じる子どもたちの演技や歌唱もナチュラルで、好感度抜群だ。
この公演を知って以来、公式サイト(http://josho.info/)の各コンテンツを定期的に見ていたが、それらからの印象に比すと、舞台の上の青山6姉妹&たっくんは、何倍もいいね〜。とくに、二葉役のはるかちゃんは、かなりかわいく、魅力的。

「ハッピーバースデー」や「青山探偵団」といった、ダンスも印象的なナンバーを何度か繰り返して使うという、ミュージカルらしい手法がさらに楽しさに拍車をかける。

一、二幕ともに、キャストが客席や通路におりての演出があったが、二幕の(白いマスクの)ゴーストたちは、あちこちに出没していて、ちょいとびっくり。ついでに、びっくりといえば、二葉ちゃんとたっくんが両想いという「秘密」にも、軽くびっくりだったり(笑)。

語り手として登場していた(正体不明の)女性が、じつは青山夫妻の7人目の子どもとなる七海であり、今日子のお腹のなかの彼女がストーリーテラーだったという、話の締め方も上手い。


青山家の秘密がいくつあるかとかいうことよりも、公式サイトに出ていた「伏線」が舞台を見て、なるほど、と頷けるところが私には面白かった。買いだしの布団というのはこれか、とか。あの衣裳は、これだったんだ、とか。(父親の件を知った)長女の一美の心情表現としてタップダンスが挿入され(タップ振付:中村弘子)、タップの練習というのは、この場面のことだったか。などなど、そういう照合が、観劇後の余韻になった。


ひとつ難をいえば、私がこのカンパニーを見慣れていないせいもあるが、女子大生時代の「過去」と「いま」を行き来して演じていた女優陣の見分けがすんなりとは行かずに、はじめのうち少し戸惑った。


ステージは、いちばん奥の紗幕の向こうに、ミュージシャンが4人いて、シルエットになっている。舞台では、左右に開閉する(つまり観音開きの)黒いカーテンが使われ、このカーテンを閉めると幕前になるかたち。

上手の端っこ(ソデ近く)に、キーボードがあって、出番でないキャストが交替で簡単な演奏をすることがあるのだが、あれはどうして、あそこで演奏するのだろう?カーテンが閉まっているときの、きっかけを兼ねているのかしら…

シーンによっては、キャストが胸前にマイクを付けていたが、それ以外のときの声の拾い方が、よく分からず(私の座席は、舞台からのナマ声がしっかり聴こえて来る位置だったから、どうでもいいといえば、そうなのだが。 [追記]→ 常笑気流歌劇団公式サイトの「団長日記」には『マイク無しで!』とありますね)。


開演前と、休憩時のアナウンスがおもしろかった。あのアナウンス、本当にまちがえたと思ったひとがいたにちがいない(笑)。


青山探偵団が気に入ったらしく、(ロビーで)Tシャツを買ってもらっている子どもがいたが、その気持ちは、分かる!たしかに、青山探偵団は、いいよね〜。

次回の公演も、ぜひ、見たいものである。