秀山祭九月大歌舞伎 昼の部(&かむろの出世)


今月の歌舞伎座秀山祭九月大歌舞伎を観劇しての雑感をまとめておこう。

以下、「寺子屋」を中心に昼の部の雑感と、末尾に今月歌舞伎座の子役出演者を付記。

 秀山祭九月大歌舞伎 夜の部については、↓に。
 http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20060909/p1


9月25日(月)は、NHKの収録が入っていて、場内放送でその旨のアナウンスがあり、舞台前には収録用と思われるマイクが並んでいた。

昼の部は、「菅原伝授手習鑑 車引」「双蝶々曲輪日記 引窓」「六歌仙容彩 業平小町、文屋」「菅原伝授手習鑑 寺子屋」。


寺子屋」は、寺入りがないと、小太郎(宗生)の出番が少なく、(菅秀才に対して)小太郎役の子役が損をする印象。

手習いのシーンで、他の寺子らに較べて、菅秀才(中村佳奈)の手本がどんどん進んで行くのは、やはり秀才だからなのか。

涎くり、秀才、小太郎の他に、子役の寺子は、7人出ている。(2004年6月の歌舞伎座では、寺子は5人だった)

今回の子役の、手習いの席順は、下手側から、「男の子・男の子・宮永歩海・速見里菜・涎くり・男の子・清水大喜・男の子」という並び。…見る目がなくて、4人(芦村瑞樹、太田幸輔、小作龍汰、小澤正憲)は判別出来ず。


冒頭、涎くりがへのへのもへじ顔を書いて、菅秀才に「いちにちにぃ、一字学べば三百六十字の教え…」とたしなめられるのだが、歌舞伎座内で入手したフリーマガジン「東京文花座」9+10月号(VOL.10)を読んでいたら、書道家武田双雲氏の書道教室では、子どもに「へのへのもへじ」を書かせる、というから、涎くりのしていることも、存外手習いの役に立つのかも知れぬぞよ。


親たちが迎えに来て、寺子がひとりずつ出て来るところは、最初にわんぱく(長太)、次がいちばん幼い子(岩松)で迎えはじい(祖父)、その次が涎くり、つづいて山家の子にしては器量よし(彦六)、あとは以下同文といった趣になる次第。今回は、宮永歩海ちゃんがいちばん小さくて、白く塗った器量よしが清水大喜くん(←この子は、昨年の歌舞伎フォーラム公演での小太郎役のひとり)。


武部源蔵という人物も、いくら忠義のためとはいえ、自分をお師匠と仰ぐ寺子を菅秀才の身代わりに殺そうと思う訳だから、よく考えれば、なんだか非道い話である。救いがあるとすれば、小太郎のことを聞いた菅秀才が、「われに代わると知るならば、この悲しみはさすまいに」とまともなことをいってくれて、この若君には徳が備わっていると、うかがえることである。

いろは送りになる件りで、戸浪が、(首のない)小太郎のなきがらを抱いて来て駕籠へ運ぶあたりは、いかにも歌舞伎らしい、(首実検以上に)生々しさを感じる場面だ。




秀山祭九月大歌舞伎の子役(御曹司、部屋子を除く)をメモしておくと、以下のよう。
昼の部「寺子屋
寺子 長太: 芦村瑞樹
寺子 岩松: 宮永歩海
寺子 彦六: 清水大
寺子 千太: 太田幸輔
寺子 太郎助: 小作龍汰
寺子 万吉: 小澤正憲
寺子 四郎蔵: 速見里菜



夜の部「籠釣瓶花街酔醒」
禿 みどり: 山口千春
禿 たより: 関根香純
禿 さとの: 鶴旨美祐
禿 しげり: 馬場紗耶



※ところで、昨年4月の歌舞伎座 夜の部「籠釣瓶花街酔醒」のかむろの配役は、次のようだった。
 禿 みどり: 今井満里子
 禿 たより: 藤井あゆみ
 禿 さとの: 関根香純
 禿 しげり: 鶴旨美祐

今月と比較すると、関根香純ちゃんが「さとの」→「たより」、鶴旨美祐ちゃんが「しげり」→「さとの」と、子役も配役上、ちゃんと出世しているのが分かる。