「芸能ビジネスを創った男 渡辺プロとその時代」他



ブックレビューを、とりあえず3冊分。





野地秩嘉「芸能ビジネスを創った男 渡辺プロとその時代」

(新潮社、1400円税別)

芸人や歌手のマネージメントをしてギャラの上前を撥ねるという旧来の芸能業務を、プロダクションがテレビ番組や映画の企画・制作を行ない、また音楽著作権を管理することによって、(現在では当たり前の)芸能ビジネスへと発展させた渡辺プロと、その牽引者として一時代を築いた渡邊晋という人物をえがいたノンフィクション。



大手企業の販促に歌手やタレントを送り込むことで、むかしながらのアウトロー的な興行師と関わらずに活動出来る下地をつくったこと、「スター誕生」をめぐる渡辺プロと日本テレビの確執は、これまでとかく、当時業界に君臨していた渡辺プロと後続のプロダクションとの対峙のようにいわれることが多かったが、新人歌手の発掘とその原盤権をプロダクション側で握っていたい渡邊晋と、テレビ局主導を目指した日本テレビプロデューサーの思惑が背景にあったことなど、週刊誌的報道とはちがう興味深い内容が少なからず詰まっている。

とても面白い。



病いを得て以後の顔写真ばかりが記憶に残っているが、収載されている若き日の写真を見ると、渡邊晋というひとがとてもハンサムだったことがよく分かる。



ちなみに、私が、先日、「夢見るアニー」を思い出したのも、じつは、この本を読んだことによる。





★小杉健治「父からの手紙」

(光文社文庫、648円税別)

家族や恋人などの過去をたどることで事件の真相や謎に迫る、というかたちのミステリーが私は好きだ。これも、そう。途中まで予想通りの展開だが、ひとひねりある。





草薙厚子「少年A 矯正2500日全記録」

(文春文庫、448円税別)

昨年出た、同じ著者による「追跡!「佐世保小六女児同級生殺害事件」」(講談社)は、加害女児の親への取材にこだわり過ぎてかえってもどかしい内容になっていた。

が、こちらは、医療少年院における加害少年の矯正に絞って書かれている。親本は、2004年4月に刊行。

改めて、いわゆる神戸の酒鬼薔薇事件から、もう9年も経ったのかと思う。