なんて見事な、中村鶴松くんのお茶々 (十二月大歌舞伎)



15日(木)に、歌舞伎座で、十二月大歌舞伎の昼の部、夜の部を観劇。(どちらも、三階の1列目から)



最初の「弁慶上使」は、見なかった。

寒いし、子役が出ない演目とあっては、とても11時の開演に間に合うようには身体が目醒めない・・・ので、坂田藤十郎襲名披露 壽初春大歌舞伎のチケット取りをしていた。チケットの動きが遅くて、普段の歌舞伎座の公演と、さほどかわらない様子で、早々に買うよりも、直前の出戻りを拾うほうがよさそうな感触。それでも、せっかくだから、昼・夜1回ずつ予約。今月(12月の歌舞伎座)のほうがチケットが売れているのでは?



12時半頃に、歌舞伎座到着。web予約していたチケットを引き出したら、つい先刻予約した藤十郎襲名披露のチケットもいっしょに吐き出してくれた。





「猩々」「三社祭」「盲目物語」と見て、夜の部は「恋女房染分手綱 重の井」「船辨慶」までの観劇。



昼の部、「盲目物語」は序幕での、中村鶴松のお茶々が出色。



清水大希くんは、どちらかといえば、男の子の役を演って上手い子役、だと思っていた。が、このお茶々では、挙措といい、セリフの声の出し方といい、どこから見ても女の子になっている。

男の子が禿などで女の子の役を演ると、見かけはかわいく拵えても、男の子の気配は消し切れないものだ。でも、今月の鶴松くんのお茶々は、どう見ても女の子そのものだ。座ったときにひざに組んだ手や目の伏せ方、木下藤吉郎がいるほうを指差したその指の先まで、男の子の気配を感じさせずに演じている。そのすばらしさに見惚れた。ついでに、妹役の女の子たちより、美形でもある。



8月の納涼や10月の御園座を見なかったことが悔やまれるほどで、部屋子になって鶴松くんは腕を上げた、と思った。





夜の部のお目当て、「重の井子別れ」は、すでに書いたが、いやじゃ姫の関根香純ちゃんの声が辛そうで、見ているほうも辛かった。調姫は子役だけれどお姫様なので、お手々のかたちがかわゆい。



関根香純ちゃんは、昨年10月の「伊賀越道中双六」、1月の「文七元結」、4月の「籠釣瓶花街酔醒」、6月の「良寛と子守」、…女の子としては、いちばんコンスタントに歌舞伎で使われている子役といっていいだろう。2006年はどんな役で登場するかも楽しみ。調姫では、周囲を気にするような目の動きが、少し気になった。



福助丈の重の井、児太郎くんの三吉が揃ってはっきりしていて分かりやすい演技(でも、母親としての感情が顔に出過ぎているようにも)で、時間が短く感じられる一幕だった。



いやじゃ姫がさいころを振ると、6の目ばかり出るが、あんなインチキは、いやじゃ、いやじゃ、いやじゃわいなァ(笑)。





「松浦の太鼓」は見ないで帰ったが、この大高源吾の逸話は「土屋主税」と同じだね。「松浦の太鼓」では大高源吾の妹が松浦鎮信に仕えていて、「土屋主税」では勝田新左衛門の妹が土屋主税に仕えている。そういえば、「御浜御殿綱豊卿」では富森助右衛門の妹が甲府宰相に仕えていた。赤穂浪士の妹はいろんなところにいる。