劇団東俳 座・プロローグこけら落とし公演「法廷の銃声」雑感


6月2日(土)に、劇団東俳の新社屋に併設の小劇場で、

座・プロローグこけら落とし公演

「法廷の銃声」

原作:リチャード・スペイト、脚本:東俳文芸部、演出:下村優

を観劇。

午後1時開演。

過去ログのこの↓公演。

http://d.hatena.ne.jp/kamuro/archive?word=%CB%A1%C4%EE%A4%CE%BD%C6%C0%BC

上演時間は、約2時間。(第一幕50分、休憩10分、第二幕60分)

公演プログラムは、700円で販売。

入場時には、チラシなどが、劇団東俳のクリアファイルに入れて配付された。


竣工間もない新社屋で、併設劇場のこけら落とし公演。

以前の劇団東俳といえば、玄関、受付のあるフロアが、1.5階に位置するような、ちょっと変わった建物だった。自主公演が上演された小劇場の東俳テアトロ館は半地下で、観客は外階段から客席へ出入りした。

新しくなった東俳の本社屋は、通常の建物と同様に、1階はふつうに1階の位置にあって、玄関を入ると右手に受付があり、すぐ左側には地階へ下りる階段。座・プロローグは、その階段で下りた地下にある。

今度は、半地下ではなくふつうに地階になっているが、場所的には、旧社屋の東俳テアトロ館があったのと同じところに、座・プロローグも位置しているようだ。客席への入り口を入ったところが後方座席で、前方の座席へは、階段状に通路をステージへ向かって下りて行くかたち。ステージが低い位置にあるのも、以前の東俳テアトロ館と同じ。

なので、おそらくステージの上手側にはソデはなくて、下手側は、客席前方部分の仕切りが動かせるようになっていて、キャストの出入りやステージの一部としても使われていた。(旧東俳テアトロ館も下手の客席寄りにキャストの出入り口があったよね)


座席は、中央の通路を挟んで、左右に4席ずつ。階段状に、A列からJ列まであって、I列までは各列8席(1番から8番)、J列は6席(6番まで)で、通常時の客席数は、78席。

チラシによれば、この客席は収納式で、後方に座席を収納して、フラットスペースとして使うことも出来るとのこと。

私が見た回は、階段状の通路に小さい椅子を置いて、補助席をいくつか出していた。


「法廷の銃声」は、今回が5演目とのことだが、前々回(2008年、東京芸術劇場 小ホール2)とも前回(2014年、シアター1010)とも、だいぶちがっていた。

今回は、シングルマザーの弁護士エレン・ヘイス(新川優愛)を主役にしていて、そのためか、最初に、エレンの落とし物をウェンディー・ロジャース(原野愛実)が拾って、ふたりが事件の前に偶然出会っていたという設定が加えられていた。

以前の上演のように、キャロル・ロジャース(菊川陽子)のほうからエレンに弁護を依頼するのではなく、今回は、エレンからキャロルの弁護を買って出るかたちなので、エレンと生前のウェンディーとの間にも接点をつくったのだろう。

また、今回は、フランク・ジョーダン(鈴木翔吾)がウェンディーを誘拐したあと、自室で殺害に及ぶ直前までが、シーンとしても演じられた。前回や前々回は、フランク・ジョーダンの犯行は舞台では演じられず、犯行の経緯は取り調べや裁判等でのセリフによって観客に説明されていた。

今回の「法廷の銃声」で、いちばん気になった(というか、個人的に違和感をおぼえた)のは、フランク・ジョーダンを多重人格にしていたこと。

取り調べ段階での手続きの不備から、裁判でフランクの供述が証拠採用されないというあたりは、省かれていて、裁判の経緯は以前の上演時よりも単純化していたようだ。


「法廷の銃声」は、以前の観劇時は、劇団東俳の自主公演のなかでは外部の劇場を借りて一般公演に近いかたちで行なう「むげん工房」として上演されていたのが、今回は、こけら落とし公演とはいえ本社屋内の小劇場での上演で、こじんまりした印象。

狭い、とも思ってしまうステージなのだが、紗幕を用いて前・後に使ったり、下手側の脇(階段)スペースを使用するなど、工夫を感じさせる見せ方をしていた。

たしか、前々回にはウェンディー・ロジャースの友人で子役が複数出演していたり、前回の上演ではウェンディーの兄・ジェフリーの演劇部のシーンがあってその部活仲間やガールフレンドの登場があったりしたが、今回はそういうシーンはなくなっていた。


前々回の上演でウェンディー・ロジャースを演じていた平本亜夢さんが、前回に続いて今回も出演していて、10年の時間の流れを思わされた。

前回公演でエレン・ヘイスを演じた菊川陽子さんが今回はキャロル・ロジャース(ウェンディーの母)に、前回はウェンディーの兄役だった鈴木翔吾さんが今回はフランク・ジョーダンに、・・・といった配役は、見どころになっていた。