文学座「女の一生」(三越劇場)


3月17日(火)に、三越劇場で、

文学座公演「女の一生

 (作:森本薫、補訂・演出:戌井市郎による、演出補:鵜山仁)

を見た。午後1時30分開演。

会場に掲示されていた上演時間は、2時間50分(第三幕まで、90分。休憩25分。第四幕以降、55分)。この日の終演は、午後4時33分ぐらいだった。

昨秋からの、九州、関西、静岡の演劇鑑賞会を中心としたツアー公演を経て、この三越劇場での上演となった「女の一生」。

文学座は、5年前に、江守徹の演出、荘田由紀の布引けいで「女の一生」を上演して、いわば、代替わりしたはずだったのに、今回はふたたび、平淑恵の主演にもどり、戌井市郎追悼として、その演出を継承するという鵜山仁演出補のクレジット。

プログラム(500円)に、大笹吉雄氏が書くところによれば、平淑恵のひとり芝居「化粧」を見た九州の演劇鑑賞会から、平淑恵で「女の一生」を見たいという要望が出て、それを請けるかたちで今回の上演になったのだという。演出もかつての平淑恵時代のものをベースに、「化粧」の演出もした鵜山仁で、ということなのだろう。


1階座席は、2列が最前列になっていた。

この芝居は、やはり、けいという女性の40年にわたる年齢と境遇(立場)の変化を、時代状況とともに、姿や雰囲気の変わり映えとそのときの心持ちとを、幕ごとに演じ分けて見せるところに、おもしろさと見どころがあると思う。

布引けいを演じる女優の上手さ、というか、役者としての「腕」に感嘆させられる舞台だった。第一幕の最初の場の老け方は、パッと見たとき、平淑恵だとは分からないくらいだった。そこから、一転して娘時代になったときの、早口でのセリフの口跡のよさ。

とくに、印象的だったのは、第五幕の節分の日の芝居で、なんともいえない情感と深みがあった。

布引けいという役は、演じる女優それぞれに、いちばんの見ごたえとなる幕が異なるようだ。そこにもまた、おもしろさがあると思った。

文学座や新派に限らず、もっと他でも見てみたいものだが、それは無理な話かな…


知栄の少女時代は、原島凛々ちゃんの出演だった。各地を巡演してステージ数を重ねていることもあろうけれど、セリフは強弱がついていて、たとえば、話をしている母・けいに呼びかけるときの呼吸とか、そのあたりには芝居心が感じられたし、舞台での動きにも段取りっぽさがないのがよかった。
花火は、舞台上手で。そのあと、知栄ちゃんが読んでいた本は、「桃太郎」だった。

カーテンコールでは、出演者12人の並びで、上手端から3人目が子役知栄だった。


[出演]

布引けい:平淑恵
堤しず:赤司まり子
堤伸太郎:大滝寛
堤栄二:上川路啓志
堤総子:松岡依都美
堤ふみ:松山愛佳
堤章介:石川武
堤知栄:藤崎あかね
野村精三、刑事1:鈴木弘秋
職人井上、刑事2:今村俊一
女中清:下地沙知
知栄の少女時代:原凜花(劇団東俳、交互出演)・原島凛々(テアトルアカデミー、交互出演)