第7回子どもオペラ学校成果発表公演「ヘンゼルとグレーテル」
7月26日(土)は、
日立シビックセンター(http://www.civic.jp/) 音楽ホールで、
第7回子どもオペラ学校成果発表公演 オペラ「ヘンゼルとグレーテル」
指揮:大浦智弘
演出・演技指導:山田大輔
振付・舞踊指導:小仲井宏美
を見た。
過去ログのこれです。→http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20140407/p3
チケットは、500円。券面には「子どもオペラ学校応援チケット」と書かれている。
上野から特急スーパーひたちに乗って1時間30分ちょっとで、日立。(茨城というと隣県のイメージだけれど、列車の乗車時間だけでいえば、のぞみで東京から名古屋へ行くのとほとんど同じくらいの時間なのだよね) 日立駅を出ると、日立シビックセンターはすぐそばである。
音楽ホールは上階にあって、入場路は、上へ行くエスカレーターの1本のみにしてあって(終演後は階段も開放していた)、全席自由なので、開場前から列が出来ていた。混乱を避けるためか、開場後も、いちどには客を入れず、少しずつの入場だったので、なかに入るまでにけっこう待たされた。
客席は、1階の中央ブロックの3列までを撤去、さらに4列目もつぶして、そこで、指揮&生演奏(ひたちオペラアンサンブル=ピアノ2、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットの6人)するので、それもあってか、1階席の前方の座席には、舞台が見づらいという但し書きが貼られていたが、どう考えても、横のブロックの最前列ならよく見えるはずだと思って、いちばん中央寄りの1列目の席に座った(じっさい、何の問題もなく舞台はよく見えた)。
午後2時開演。1幕、2幕で、40分。休憩20分のあと、3幕が35分ぐらい。
「ヘンゼルとグレーテル」そのままの上演ではなくて、全幕日本語上演のハイライト版というかたちのようだが、ちゃんと3幕構成になっている。
出演は、小学4年生から中学2年生の38名。ヘンゼル役とグレーテル役は、幕ごとに交代するトリプルキャストで、3人ずつ。
日立シビックセンターの子どもオペラ学校は、7回を数えているが、成果発表公演としては、毎回「ヘンゼルとグレーテル」を上演。成果発表公演を行うのではなく、日立シビックセンターで上演するオペラに子役や児童合唱として出演するケースもあったようだ。
成果発表公演の演目は、いつも「ヘンゼルとグレーテル」なので、この子どもオペラ学校に繰り返し参加しているメンバーは、回を重ねるごとに、ちがう役を経験して行くという、いわば配役の出世双六的なところもあるらしく、たとえば、以前にNHKの番組で取材を受けていた坂口千晴さんという女の子は、今回の舞台では、ヘンゼルとグレーテルのお母さん役で出演していたが、それ以前には、魔女役や、グレーテル役も演っている。
私は今回はじめてこの成果公演を見たが、何度も見に来ていれば、出演者の成長とともに役柄もステップアップして行く出世双六的な配役も楽しむことが出来るだろう。
子どもたちの多くは、複数の役で登場し、メインの役をうたう子も、ほかのシーンではアンサンブルをつとめていたりする。
ミュージカルを見慣れていると、オペラ的な歌唱が何より新鮮に聴こえる。
魔女の手下の、小魔女・小魔使いの4人が、かわいかったな。
演出者がプログラムに書いていた「演出ノート」は興味深い内容で、舞台を楽しむ上で参考になった。
この「ヘンゼルとグレーテル」というお話は、6月中旬(夏至の頃)の、夕方から翌日の明け方まで=午後6時から午前6時までの12時間の出来事で、ドイツのこの時季は、午後10時が日暮れで、朝は4時が夜明けだという。
陽が沈む西が下手、陽が昇る東が上手という舞台の約束に則って、照明も太陽の位置を考慮してプランを決めるとのことなので、登場人物への影のつけ方にも注目して見た。
登場人物の立ち位置も、上手、下手や高低を踏まえて決めていて、たとえば、オープニングでは、兄のヘンゼルを上手に、妹のグレーテルを下手にしているが、妹のほうがしっかりしているので椅子に座らせ、兄は低い床に寝そべらせている。森のシーンで、ヘンゼルが兄らしさを発揮しはじめると、ヘンゼルを上手に、グレーテルを下手にと立ち位置を替える。兄妹の父親と母親についても、そのとき、そのシーンでの力関係や気持ちの上下で立ち位置を入れ替えるなど、そうした約束事と演出の意図を汲み取りながら見るというおもしろさも味わえた。
近頃は、上手も下手も関係ないような舞台もあるけれど・・・今回のこのステージを見て、オペラというのは、歌舞伎と同じように、あるいはそれ以上に、舞台の約束事を利用して臨機応変に効果的な演出がなされるものなのだなぁ、と思った。
暑い夏の日に、またひとつ、よいステージにめぐり合えた。
このオペラの「ヘンゼルとグレーテル」を見たことで、バレエの「ヘンゼルとグレーテル」を見るときにも、きっと、次回はちがった発見や楽しみ方が出来るにちがいない。