あららぎは谷を越えてゆく (青山劇場)


かやの木芸術舞踊学園 舞踊ゆきこま会

東日本大震災復興支援東京公演
太鼓のあるミュージカル 連作 童んべたちの声 第一作

「あららぎは谷を越えてゆく」

原作・原演出:吉永淳一
制作・構成・演出・振付:平多宏之
太鼓作曲・演出助手・太鼓指導・演技指導:木原創
作曲:越部信義
美術:藤本久徳
衣裳デザイン・舞踊指導:平多陽子
台詞・演技指導:木原友里
歌唱指導:秋元洋子、井口恵美子
アナウンス:岩田伸子


8月17日(金)に、青山劇場で上演された「あららぎは谷を越えてゆく」を、2回見た。

開演は、11時30分と、15時30分。

ロビーに掲出されていた上演時間は、一幕 1時間15分、休憩15分、二幕 1時間。じっさいは、もう12、3分長くかかっていたから、カーテンコールも含めて、2時間40分余といったところ。


入場の際に、協賛企業からとのことで、「ぬちまーす」という塩と、東京公演記念・ゆきこま会名入りの鉛筆1本がもらえた。ぬちまーすというのは、沖縄の塩らしい(ゆで玉子でも食すときにかけるとよさそうだ)。

プログラムも、入場時に無料配付。
チケット代がけっこう高めに設定されていたので(指定席 8000円、自由席 6000円)、その分、プログラムは無料なのかな、と思ったが、なかを見ると、プログラムには配役も出演者も掲載されていないなど(スタッフクレジット以外は連名のようなものもない)、有料で販売するような内容ではなかったともいえる。

べに、あか、しろ、くろ、ちび、姉さま頭、といったメインの役柄であっても、何というひとが演じていたのか分からないし、出演者の総勢が何人だったのかも具体的にされていない。公演内容とも合わせて考えるに、アマチュアリズムに徹して特定の個人がクローズアップされることは望まないという姿勢だろうか?

子どもから大人まで、大人数の出演者だが、ストーリー上の主要な役柄に限っていえば、「ちび」という役だけが子役である。


津波で親を亡くした「べに」という娘が、村の親戚に引き取られて来る。閉鎖的な村の大人たちは、彼女を排斥するが、子どもたちは、大人に隠れて、べにを仲間として受け入れる。べには太鼓を教わり、生まれ育った飛騨で学んだ笠作りを村の子どもたちに伝えて、新しい友情が育まれる。しかし、貧しい村を襲った日照りや大雨までも、余所者が村に入り込んだせいだとする大人たちは、べにを呪い、彼女を追い出そうと企むが・・・べにが子どもたちに教えた笠作りが、新たな村の産業になると知った大人たちは、べにへの仕打ちを悔い、彼女を迎え入れる。

というのが、おおまかなストーリーだが、見せ場は、やはり、大勢による群舞や太鼓の演奏だろうし、いくつかのミュージカルナンバーもしみじみと心に響く。

あららぎというのはイチイ(一位)の木のことで、それを材として編んだ笠がイチイ笠。村で作ったイチイ笠が宿場で売れて、旅人によって、宿場から宿場へと谷を越えて行く。たくさんの笠が谷を越えて行けば、そのお金で村も潤って、希望が生まれる。タイトルの「あららぎは谷を越えてゆく」は、そんな意味である。


「あららぎは谷を越えてゆく」を見てみたい、というのは、およそ2年前からの念願だったので、今回、初の東京公演が行なわれ、その舞台を青山劇場で見ることが出来たのは、うれしいことだった。

30年前に初演されたということもあり、作品として完成していて、すでに古典といった趣きを感じる。ただ、ひとりの少女(演じているのは大人だとはいえ)が排斥され、家まで焼かれるという展開など、直截に過ぎて、見ていて少ししんどいと思うところもあった。


カーテンコールでは、主宰者からの挨拶が付いた。

挨拶といえば、開演前には、公演主体である「かやの木芸術舞踊学園・舞踊ゆきこま会」とともにこの東京公演を主催した「子ども芸術・文化を育てる会」の中田智洋氏(地元の岐阜県中津川市でサラダコスモ、ちこり村を経営しているひと)からの挨拶もあった。芸術団体が広く公演活動を行なうにあたっては、こうした人物のバックアップが大きいようだ。