プール・サイド・ストーリー(赤坂RED/THEATER)


J-Stage Navi produce
「プール・サイド・ストーリー」
作:高橋いさを×高橋卓郎、演出:高橋いさを(劇団ショーマ)、振付:宮田直美


赤坂レッドシアターで、8月28日(日)のステージを観劇。

過去ログのこの公演である。
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20110709/p3


全8ステージあった公演の千秋楽で、午後1時開演。上演時間は、1時間50分(校長・江戸川のセリフによる。出版されている戯曲では1時間45分)。終演は3時前だったので、これもセリフどおりの、2時間弱におさまったのでしょう。

満席で、補助席も多数出ていて、いちど席に着くと終演まで立つのははばかられるような状況。

若い男性キャスト目当てなのか、客席には若い女性客が目立った。「テニミュ」っていうのが当たって以降、若い男子キャストの集団が女性客を集める舞台が増えているようで、これもその傾向。(ひとむかし前だったら、この手の舞台は、若い女子キャスト目当ての男性客が多くを占めて、満席にもなっていないと思う)

じっさい、この舞台を見た率直な感想として、女子水泳部のキャストよりも、男子水泳部の面々のほうに、魅力や個性が感じられたし、私が見てそうなのだから、女性の観客からすれば、もっとそうだろう。

水着は、練習用と文化祭の演技のときとで、2タイプ。女子キャストは、水着の下に肌の色とほとんど同色のタイツ着用なので、水着は水着でも舞台衣裳っぽさが漂う。そういう意味では、男子水泳部キャストのほうが、露出度が高くて、そんな点でも女性ファンを惹きつけるのかも知れない。


ロミオとジュリエット」の翻案でタイトルは「ウエストサイドストーリー」のもじり、ということもあり、戯曲を読んだときは、語り手の校長が冒頭で述べる不幸な出来事とは何なのか、だれが犠牲になるのか、ここがあの場面のパロディだ…みたいな興味を持って読み進めたが、ナマの舞台を見ていると、目の前で繰り広げられる若い出演者たちの芝居の熱気もあって、シーンの流れをそのままに楽しんだ。

劇中の制服は、戯曲のト書きとは変えて、男子が白、女子が紺のポロシャツスタイルだった。ボスの部屋で岬が食べるチョコレートが、この舞台では(チョコアイスの)ピノになっていたり、あややがAKBになっていたりと、そんなちょっとしたちがいもおもしろかった。

キャストのなかでは「ヘレン」が上手かったなぁ、と思う。


セットは簡素。舞台は、後方に高いステージを設けて、そこが基本的にはプールサイドで、シーンによっては下手端が(バルコニーならぬ)岬の部屋の窓になったりもする。前方のベースとなるステージは、手前(客席スぺースとの境目)に水色の幕を張るとプールのなかに変わる。つまり、シンクロナイズドスイミングのシーンでは、水色の波幕がキャストの下半身を隠して水中にあるように見せる。
赤坂レッドシアターの客席はひな壇状になっていて、後方へ行くにしたがって席位置が高くなるから、後ろの席からでは、波幕の効果がどんなだったかは分からないが・・・2列目からだと、ちゃんと、それっぽく見えた。

上演時期も、戯曲の設定にぴったりだった。


[配役]

伊佐岬:大沢ひかる
しずか:横田美紀
邦子:相原えみり
春江:藤本沙紀
良子:胡桃知恵
のり子:渡部夕貴

中嶋一平:佐藤ユウ
ヘレン:祁答院雄貴
たけし:皆川暢二
信男:藤井貴
三郎:広瀬斗史輝
真一:下牧慎治

崎さん:高橋まさかず(劇団ショーマ)
ユーミン名雪佳代
江戸川(語り手):青山勝(劇団道学先生)
ボス:井之上隆志




この舞台を見てみて、演劇における「翻案」のおもしろさや可能性に気づかされた。