夏の家族 A Summer Family (UPLINK X)
※この映画は『18歳未満入場不可』ですので、その旨、あらかじめお断りしておきます。
先日、渋谷のUPLINK Xで、
「夏の家族 A Summer Family」(監督・脚本・撮影:岩名雅記)
を見た。
モノクロで、画質もよくない作品なのだが、それがかえって声の印象を強くしているので、声だけを入れている諸星すみれちゃんの、その声(による演技)を堪能することは出来る。
パンフレット、500円(シナリオの採録付き)。キャストのひとりとして、諸星すみれちゃんのコメントも載っている。
事前にウェブやチラシに出ていたものと、パンフレット記載のものとでは、登場人物の年齢や上映時間などが一部異なっているが、以下は、会場で販売していたパンフレットに基づく。
モノクロ・スタンダード、画面比4:3 79分20秒
[出演]
アキコ(47歳):吉岡由美子
ユズコ(33歳):若松萌野
カミムラ(63歳):岩名雅記
マユ(8歳)の声:諸星すみれ
その他の出演者は、南ノルマンディの住民や監督である舞踏家の知友、舞踏関係者とのことである。
この映画は、『国内上映は、18歳未満入場不可』であるが、映倫の審査を経てのものではなく、製作者と上映館(アップリンク)との話し合いで自主規制をして公開する、というかたちになったのだという。
声はすれども画面に登場しない娘・マユの謎とその正体が次第に明かされて行くサスペンスタッチの筋が織り込まれているし、監督本人が演じる舞踏家が鳩に襲われるホラーっぽいシーンなどはあるものの、結局、これはプライベートフィルムというべき作品だろう。
舞踏家というものは、自身の性行為までも表現として見せたいものなのか。舞踏家のそれは、ポルノグラフィーではなく舞踏というパフォーマンスの範疇として成立し得るものなのか?…考えさせられると同時に、問題の「18禁」シーンからは、監督で主演者である舞踏家の「業」のようなものも浮かび上がる。
舞踏家を取り巻く南ノルマンディの人びとの姿や風景に加えて、メインキャストの女性ふたりが、一般的には全く無名の出演者であることにより、映画のなかの出来事があくまでも虚構に過ぎないのか、あるいは彼らの人間関係の一面または日々の延長でもあるのか、その虚実の境がはっきりしないところがあって、そこに、この映画の面白さと不気味な見心地がある。
つまり、スクリーンに映る舞踏家カミムラの姿は、たとえば舞踏シーンにおいては、そのまま監督でもある岩名雅記そのものでもあろうが、妻や愛人(として登場する女性)との関係は、スクリーンのなかだけの虚構なのか、それとも、(カミムラでない)岩名雅記本人ともそれなりの関係を持つ女性なのか?岩名雅記という舞踏家の存在を、この映画以前には全く知らなかった私には、そのあたりの虚実が判然としない。そのことが、人間の営みの底深さを想像させ、奇妙に落ち着かない気分にもさせるのだった。
会場で、監督である舞踏家ご当人が配っていた印刷物によると、「朱霊たち」、今回の「夏の家族」に続く三作目の映画として、「童は見たり」を撮影予定。
「童は見たり」は、これまでより広範な観客を対象とした一般向け映画を目指す、とのことで、モノクロ、ビスタサイズ、想定時間90分、想定予算1000万円。2013年4月東京、8月フランスで撮影予定。出演者、スタッフ、資金協力者、制作者を募集している。
昭和26年の東京、菜銀(なぎん)という8歳の少女を主人公にするようだ。
予定通りに製作されるならば、見てみたいので、忘れないようにしたい。