歌舞伎座さよなら公演 御名残四月大歌舞伎


建て替えとなる歌舞伎座。最後の本興行となった、

歌舞伎座さよなら公演 御名残四月大歌舞伎

第一部を4月11日(日)に、第二部を16日(金)に、第三部を23日(金)に観劇したので、以下は、雑感。


この4月の歌舞伎座は、月も終わりに近づくに連れ、また、ここ数日のマスコミ報道等もあり、千穐楽かそのあとの閉場式を見ないことには、ほとんど観劇した意味がないような雰囲気も感じられて、その盛り上がりからは取り残されてしまった気分。といって、千穐楽に特に何かがあったようでもないのだが。

御名残四月大歌舞伎は、三部制になったこともあり、これまでで最高の観客動員だったらしいが、入れ替え時や場内の混雑ぶりに辟易したと同時に、名残を惜しむどころか、気ぜわしく芝居を見たという印象だった。普段は、昼・夜の二部制で、4時間〜5時間も上演し、休憩もたっぷりあって、もっと短くてもいいとさえ思うのに、三部制だととにかくあわただしくて、気持ちに余裕が持てなかった。

料金を襲名公演並みにしても、二部制のままやってくれたほうがゆっくり出来てよかったのに、と思ったが、そもそも歌舞伎座という建物に愛着がある訳でもない私のような観客が、あれこれいうのは筋ちがいかも知れない。


第一部は見るつもりはなかったが、11日の予定が空いてしまったので、前日の夕方にチケットを購入しての歌舞伎座詣で。

御名残四月大歌舞伎はチケットの入手難が予想されたが、ふたを開けてみれば、通常月と同じように、公演日間近や前日にチケットWeb松竹にチケットが出て来ていた。最近では珍しく、第二部と第三部は、一般発売初日に前売りを買っていたので、あとは良席があればというぐらいの気持ちでときどきアクセスしてみたが、普段の月と較べて、チケットが現れる時間が遅かったようだ。


第一部は11時開演。およその上演時間は、「御名残木挽闇爭」が20分、幕間15分のあと「熊谷陣屋」が1時間25分、幕間が30分あって、「連獅子」が55分。

第ニ部は午後3時開演。およその上演時間は、「寺子屋」が1時間20分、幕間15分のあと、「三人吉三巴白浪 大川端庚申塚の場」が30分、幕間が15分あって、「藤娘」が20分。

第三部は午後6時20分開演。およその上演時間は、「実録先代萩」が1時間、幕間が25分、「助六由縁江戸桜」が2時間。終演予定は、9時45分だったが、観劇日は、7、8分押しての幕であった。


第二部の観劇のときに、舞台写真を購入。入場するとさっそく売り場へ向かったが、三面にわたって掲示された舞台写真の周囲は、じつに殺人的な混雑だった。

助六」から、禿しげり(上村吉太朗)の写真をひとつと、禿たより(中村玉太郎)としげりが並んでいるのをひとつ買う。

たよりとしげりが並んでいる写真は、履き物(ポックリ)の高さで子役ふたりの身長を揃えてあることが舞台写真ではっきり分かるので、これは持っておきたいとの思惑。

第三部を見た折りに、たよりとしげりのポックリの件は、確認したが、たよりとしげりばかり見ていて、しげのときよののほうをよく見なかったのは、失態。須田あす美ちゃんと飯森雄太くんだったと思う。

舞台写真といえば、ながめすがめつすれど、一般の子役がまともに写っている写真は見当たらず。

寺子屋」の寺子長太(松本錦成)を面改めする春藤玄蕃(坂東彦三郎)の写真も買った。
舞台では、隣の涎くり(市川高麗蔵)とこちゃこちゃやっていたり、アドリブっぽいやりとりが見られたのは、寺子長太が部屋子ゆえのことだろうか?

その第二部の「寺子屋」は、御曹司の菅秀才(松本金太郎)が小さいから(5歳)、菅秀才の身替りになる小太郎の子役も合わせて小さい。小さ過ぎる気がした。

ところで、私が、「寺子屋」をはじめて見たとき、菅秀才は武部源蔵によって押入れに隠されて、これが印象的だったのだが、今回の舞台では、押入れに隠れなかった。…5月の新橋演舞場の「寺子屋」ではどうやるだろうか。

第二部の「三人吉三巴白浪 大川端庚申塚の場」は、歌舞伎を代表するような有名な場面のひとつだが、私はナマでこれを見たのは、今回がはじめてだった。


第三部の観劇では、「実録先代萩」が、意外とおもしろかった。変に力まずに、見ていられて、1時間の上演時間も長く感じない。
御名残四月大歌舞伎は、第一部に「熊谷陣屋」、第二部には「寺子屋」と、我が子を身替りにする話が置かれていて、もし第三部に「伽羅先代萩」の「御殿」となると、我が子を犠牲にする話が三つ並ぶことになり、さすがに気が重くなりそう。

伊達亀千代(片岡千之助)の見映えがよかったので、幕間に、立ち姿の舞台写真をひとつ買うことにした。

その舞台写真の掲示してある下あたりに、和樂ムック「市川海老蔵 成田屋の粋と艶」(4月19日発売、2300円)の見本があったので立ち読みしてみたら、新橋演舞場で演じた「伊達の十役」の政岡の写真に子役の千松が写っているのを発見したので、いちおう、控えておく。

助六由縁江戸桜」は、何より「口上」(市川海老蔵)がすばらしく、5月の新橋演舞場公演の「助六」を、大いに期待させるものだった。

第一部では、中村屋親子の「(三人)連獅子」が相変わらずの、見ごたえ。
で、ふと思ったのは、アイ狂言の宗論のこと。狂言や歌舞伎の「宗論」は、無宗教の身には見ていて面白いが、さて、観客に熱心な信者がいたとしたら、どんな心境で見るのか、と。案外、自分のこととは思わずに、他所事として笑えるものだろうか?




さて、4月も終わり、5月になってのとりあえずの不安と楽しみは・・・チケットWeb松竹がどのような使い勝手にリニューアルされておりますことやら。