かつしかミュージカルカンパニーオリジナル版「霧のむこうのふしぎな町」


11月29日(日)に、かめありリリオホールで、

かつしかミュージカルカンパニーオリジナル版
ミュージカル「霧のむこうのふしぎな町

を観劇。

原作 柏葉幸子
脚本・作詞 高橋亜子
作曲・音楽監督 酒井義久
監修 河田園子
演出 坂口阿紀
衣裳 神崎七海
企画・制作・指導 ミュージカルカンパニー イッツフォーリーズ

 過去ログ(抜粋)は↓
 http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20090910/p2
 http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20091114/p2


(かめありリリオホールでミュージカルを見るのは、沢田研二前田亜季の「ペーパームーン」以来になろうか)


霧のむこうのふしぎな町」は、かつしかシンフォニーヒルズの企画でミュージカルカンパニー イッツフォーリーズが演出や制作等を手がける区民参加ミュージカルの第三弾。「漂流記」「ジャンプ!」と上演され、今回の、かつしかミュージカルカンパニーオリジナル版 ミュージカル「霧のむこうのふしぎな町」で、3年間にわたるイッツフォーリーズによる葛飾区の市民ミュージカル創りは、ひと区切りとなるらしい。

また、「霧のむこうのふしぎな町」を紹介した東京新聞の記事(11/22付)によると、
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20091122/CK2009112202000058.html
2003年度から区が実施してきた区民ミュージカル事業が、本年度で終了する』とのことであり、かつしかミュージカル自体がこれをもってひと区切りとのこと。


会場が、かめありリリオホールなのは、かつしかシンフォニーヒルズが工事中だからだろう。

11月29日は、1回目の公演が、12時30分開演。2回目の公演が、16時開演。

上演時間は、15分の休憩を含めて、2時間10分。とのことだったが、じっさいは2時間5分ぐらいだった。

出演者(43人)はワンステージに全員出演するが、子どもの配役は、1回目と2回目で一部がダブルキャストになっている。

カーテンコール以外でも、イッツフォーリーズからの賛助出演あり。


原作の「霧のむこうのふしぎな町」は、夏休みを「霧の谷」で過ごすことになった小学6年生の女の子・上杉リナが、「働く」ことでその町の住人たちと交流しながら経験するちょっと不思議な出来事が、淡々と綴られて行くのだけれど、このミュージカルでは、ひとりの女の子が親もとを離れた異世界で他者と触れ合いながら成長するストーリーとして、起伏ある構成に組み立てられている。

ピコットばあさんが3人いたり、ジョンが女性になっていて役名もジョジョだったり、猫のジェントルマンや虎のタマは登場しない、ナータは登場するものの本をめぐるエピソードは使われておらず、オウムのバカメも原作とはちがう設定がほどこされている、ランプを探しに来るのが船長ではなく少女に変えてあるなど、原作とのちがいは目立つものの、原作以上にドラマティックになっているといえる。

引っ込み思案だったリナが、「仕事」を上手くやって自信をつけたと思ったらすぐに調子に乗って失敗し、素直に反省することを学び、不安と迷いを乗り越えて、さらに人の役に立つことで成長するという展開は、原作のアレンジの仕方や、原作にはないエピソードの織り込みも効果的で、とても面白いミュージカルになっている。ナンバーの楽しさ、美しさも秀逸で、ミュージカルらしさがあふれる。

序盤をショーアップする「めちゃくちゃ通りはめちゃ楽しい」は、まさに、めちゃ楽しい!


イッツフォーリーズのレパートリーであるもともとのミュージカルと、(子どもたち中心に大勢の出演者による)かつしかミュージカルカンパニーオリジナル版とでのちがいもいろいろあるようで、たとえば、会場で販売されていたCDを聴くと、本来のイッツフォーリーズ版にはナータと本をめぐるナンバーが収録されているが、これは、今回のかつしか版にはない。


主役のリナを演じたのは、じっさいに設定と同じ6年生の女の子とのことだが、彼女のリナが、すばらしい。セリフのひとつひとつが活きていて、説得力があったし、うたも上手く、魅力たっぷり。「気になる瀬戸物」での表現力や、また、「魔法使いの子孫の子孫」の歌唱は心に沁みた。

リナの衣裳もかわいい(白のオーバーブラウス+黄色のちょうちんブルマという不思議なコーディネート)。リナの靴は、踵が脱げないようにしてあったりも、おもしろい。

バカメ(1回目)の女の子も、とてもよかった。前回の「ジャンプ!」でココを演った子をまた見られるのを楽しみにしていたから。他に、霧の精やバレリーナ人形、(2回目の)小鬼での一輪車。

ダブルキャストになってる役は、たとえば、「バカメ」の裏が「小鬼ニノ」になっていたり、「サンデー」の裏が「小鬼ビビ」になったいたりするのだけれど、アンサンブルで出るシーンでは2回とも同じ役を演っているなど、2回公演を続けて見ると、また、おもしろさも2倍。

サンデー役(2回目)の子は、「ジャンプ!」のときに目を惹かれた女の子だったから、今回、いい役で見られて、うれしかった。ボーダーの衣裳が、かわいかった。

擬人化されたピエロの傘は、3人の女の子がワンステージの間でバトンタッチしながら演じていて、チューリップの役はピエロの傘での出番がない他のふたりが演っているなども、見逃せない配役のひとつ。

大人のキャストでは、シッカ、キヌさん、ジョジョの3人の演技が上々。


2回目の公演では、二幕の最初の「ミラクルパワー」で、風船が割れてしまうハプニングがあったが、ものともせずに進行。

前回公演の「ジャンプ!」も見ごたえ充分で、作品そのものがオリジナルなのに加えて、オーケストラピットでの生演奏というスケール感があったが、今回の「霧のむこうのふしぎな町」は、イッツフォーリーズのレパートリー作品としての質のよさが市民ミュージカルの晴れ舞台との相乗効果を生んでいて、これまた格別。


季節に関わらず四季の花が咲いているとか、最後は、ピエロの傘が再びリナのもとに戻って来るなど、原作を読んでいる観客を頷かせるディテールや、余韻も捨てがたい。

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かつしかミュージカルカンパニー、前回公演の雑感は、
 →http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20090301/p1