佐倉義民伝 (十二月大歌舞伎 昼の部)


2日に見た、十二月大歌舞伎(歌舞伎座) 昼の部より、「佐倉義民伝」について、少しく書いてみる。

今月出演の子役は、前に書いたとおり。→http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20081202/p3
(なお、出演情報のすり合わせで「高時」の子犬が1名判明したので、追記済み)


大歌舞伎の「佐倉義民伝」を見たのは今回がはじめてだった。上演は、渡し場から、宗吾内、子別れ、直訴。

前進座の「佐倉義民伝」(2005年5月、国立劇場)を以前に見たことがあったが、そのときは、門訴から子別れまで。堀田家門前の場がまずあって、渡し場、宗吾内〜子別れまでの上演だった。

渡し場から子別れまでを比較したとき、今月歌舞伎座の「佐倉義民伝」と前進座(平田兼三 改訂)とで気になるちがいは、ひとつは、前進座は子役をふたり(彦七、徳松)しか使わなかったが(他に赤ん坊がいた)、大歌舞伎では子役が3人(彦七、おとう、徳松)であること(赤ん坊も合わせると子は4人)。

もうひとつは、幻の長吉で、前進座公演では、長吉は役人の手先という設定で「渡小屋」に登場したが、大歌舞伎での長吉はお尋ね者の悪党で役人に追われているらしく、(渡し場ではなく)木内宗吾が帰った家に現れる。

まず、幻の長吉については、前進座の改訂のほうが、分かりやすい。歌舞伎座の幻の長吉は、彼がいったい何者で、なぜ、宗吾を脅しに来るのかが不明瞭に思える(通し上演されればそのあたりははっきりするのだろうか?)。
なお、2005年の前進座では、宗吾内で、百姓たちが訪れて、手が回ったことを知らせに来るという件りがあった。

子役は、彦七、おとう、徳松と子役が3人出る大歌舞伎に、断然見どころが多い。男の子ふたりだけなのと、おとうがいるのとでは、舞台の色からちがって見えるし、家の裏手になってからも、窓から顔を出すなかに娘がいることで、子別れに切々たる雰囲気が増し、ぐんと面白さがある。


歌舞伎座の宗吾内では、子役のふたりがお菓子を食べるのも見どころだ。母のおさんから、3人がお菓子をひとつずつもらう。徳松とおとうは、それぞれパクッと食べる。いちばん上の彦七は、食べずに、少しして自分の分を弟の徳松にあげる。すると、徳松がまたパクッと食べる。このあたりが、見ていて、なかなかおもしろい。
彦七は、弟思いなのだなぁ、と見ることも出来るが、穿っていえば、彦七はセリフが多いので食べないほうがよいのかも。


前進座(嵐圭史の宗五郎)の「佐倉義民伝」は、「雪」に実感があって、その雪の苛酷さと宗五郎の立場の厳しさとが重なって見えた記憶がある。今回の松本幸四郎の宗吾は、家庭人(父親)としての部分に味があるが、これは、あとに、「直訴」の場があるから、そこで公・私の対照が出せる、ということもあろうか。