ウィキッド

6月21日(木)は、電通四季劇場[海]にて、「ウィキッド」を観劇。

[海]に着くと、開演までまだ40分あるのに、すでにロビーを開けていて、並ぶことなく入場出来た。開幕して間もない人気公演での早い開場は、親切である。

プログラムの購入では、列に並ぶことになった。2階の売店で買ったのだが、順番が来るまで値段が分からず、やきもきした。
一般料金、1700円。会員料金、1500円。よく見える場所に値段を表示してくれていたら、あらかじめ、会員証ぐらい取り出して待ったのに、順番が来てから会員の方ですか?と訊かれるから、私に限らず、会員証を取り出す手間で、ロスタイム。それもあって、なかなか列が進まない様子だった。


初日から数えると、3ステージ目となる6月21日は、午後1時30分開演。ただし、じっさいは、5分押して、はじまった。

天井には、目が赤く光って、要所でくねくね首が動く鳥獣(ドラゴンらしい)がいる。私のいた2階席後方の廉価な座席からだと、この鳥獣の頭の影になり、舞台奥の高い位置(たとえば橋の上)が見えないことがある。スペクタクルな舞台の仕掛けが見ものの作品だから、橋の上の人物などよりも、鳥獣がよく見えたほうがいいともいえそうだが。


冒頭に、沼尾みゆき扮するグリンダを見たときは、この女優がいま劇団四季の「李香蘭」でもあるなんて、世も末だ、本物の「李香蘭」がよく文句をいわないものだ、といささかあきれる思いさえ抱いたのだったが、舞台が進み、劇中のグリンダが成長するにつれて、演じている沼尾みゆきというひとの印象も変わりはじめ、最後には、タイトルロールはエルファバなのに、クレジットではグリンダがトップになっていることにも納得してしまったから、観劇体験とは、ときに不思議なものである。

それこそ「ウィキッド」の魔法にかかったということなのか、あるいは、私のような浅薄な客には見えない魅力が沼尾みゆきさんのなかにあるということか。いずれにしても、ひとりの役者に化かされたようで、これが見どころの第一であった。

見どころの第二は、エルファバ(濱田めぐみ)のドラマティックな歌唱。

第三には、スペクタクルなステージの仕掛けと、ストーリーの仕掛け。私は、「オズの魔法使い」という舞台は、まともに見たことがないのだが・・・ブリキにライオン、それに、かかしもちゃんと登場し、表裏の関係として創られていることは分かり、それなりに楽しめた(ドロシーが影絵なのには、微苦笑を誘われた)。エルファバには「力」があるが、それゆえに魔女になるというよりも、為政者によって魔女に仕立てられてしまう。「魔女」というものが政治的につくられた存在であること、それを利用して人心を掌握しようとする権力への批判の視点が重ねられていて、単なるファンタジーではない奥行きになっている。

難をいえば、内容に比して、上演時間が長く感じること。そう感じてしまうのは、ひとつには、主役のふたりから慕われる男としては、フィエロ(李涛)に魅力が乏しいために、件の三角関係が、設定だけのものに見えるからではないか。(この役には、もう少し芝居に長けた俳優の起用を望みたい)

ディラモンド教授(武見龍磨)に、味がある。

瑣末なことかも知れないが、赤ん坊エルファバの人形(緑色)は、つくりがリアルで、いささか気味が悪かった。


観劇日は、カーテンコールの回数も多く、終演は、午後4時34分頃。(休憩込みで)ちょうど3時間といった按配。

面白かったが、繰り返し見たいミュージカルかといえば、余程に惹かれるキャストの登場がない限り、私は、1回の観劇で充分である。


6月21日(木)13時30分開演の配役は、以下のよう(初日と同じキャスト)。

グリンダ:沼尾みゆき
エルファバ:濱田めぐみ
ネッサローズ:小粥真由美
マダム・モリブル:森以鶴美
フィエロ:李涛
ボック:金田暢彦
ディラモンド教授:武見龍磨
オズの魔法使い:松下武史

男性アンサンブル:清川晶、西野誠、永野亮彦、成田蔵人、脇坂真人、白倉一成、品川芳晃、上川一哉、三宅克典
女性アンサンブル:長島祥、間尾茜、あべゆき、宇垣あかね、今井美範、有美ミシェール、荒木美保、レベッカ ヤニック、遠藤珠生