おいしい!ミュージカル チキン・カレー

3月25日(日)は、セシオン杉並ホールで、おいしい!ミュージカル「チキン・カレー」(シノザキスタジオ)を観劇。

公演の概要などは、過去ログ
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20070113/p2
http://d.hatena.ne.jp/kamuro/20070302/p1
を参照して下さい。


午後5時開演。終演は、6時26分頃。
休憩なしで、装置の転換もない一幕もの。

座席は、指定席(3000円)と自由席(2000円)。
自由席は、通路より前方のシートと、通路より後ろの両端側。つまり、指定席のほうが自由席より後ろになる座席割り。(私が座っていた)自由席からだと、えりかが調理をするときの手もとが見えない、キッチンセットの陰になって一部死角が出来てしまう。そういう意味では、やはり通路より後方が良席だったのだろうか?


パンフレット、無料配布(5月6日の朗読劇「ライオンのおはなし」のチラシが挟み込まれていた)。パンフレットには、劇中でえりかが作るカレーのレシピが載っていて、本番でじっさいに作って、えりかと祖母が食べるというのが、このミュージカルの眼目のひとつ。炊飯器にはご飯が炊けていて、調理が進むにつれて、カレーもだんだんと湯気がたって、客席には匂いが漂って来る。


夏。怪我をした祖母の世話をするために、北海道から高校生の孫娘えりか(垣内彩未)がやって来る。車椅子の祖母(井口恭子)は、えりかに細かい指図をしてチキンカレーを作らせる。ほとんど交流のなかった祖母の言動や、東京でひとり暮らしをつづけて来た老人らしい頑なさに、えりかは反発しながらも、カレーを作る。祖母にとって、チキンカレーが死んだ息子(=えりかの父親)の思い出の味だと分かり、その思い出と味を共有することで、ふたりの距離が近づくというお話。これに、通いのヘルパーの女性(平田朝音)が絡む。パンフレットによれば、演出家は意図的に介護の問題を扱おうとしているようで、途中で起こる祖母のアクシデントは、年をとって怪我をした彼女の現実を示唆して、苦い。

えりかが抱えている大学進学についての葛藤や、母親(声の出演、三島由起子)に対して積み重なった不満が、祖母というもうひとりの家族と言葉を交えることで、なんとなくガス抜きされて行くあたりは、現実的で上手いと思った。えりかの気持ちをうたにした場面や、登場人物3人が「ハーモニー、ハーモニー♪」とうたい上げる幕切れは、ミュージカルならでは。


ただ、見終わった後には物足りなさも残る。食事にたとえれば、もう一品添えて欲しい、あるいは、美味しいチキンカレーだが、量が少ないな、みたいな印象。料金からすれば、もっと食わせろというのは強欲かも知れないが、もうワンシーンでも、ミュージカルらしい見せ場があれば、と思った。(たとえば、男優と子役を使って、えりかの父親との思い出を見せて、それを祖母とえりかのうたにつなげる、とか)


垣内彩未さんは、じっさいも役柄も高校生だが、もっと大人っぽく見えた。マイクは胸の辺りに付けていたが、私のいた席だと、前から生の声が聴こえるので、拡声状況については不詳。エプロンを着けるときに、ノイズが入っていた。