通し狂言「伽羅先代萩」

歌舞伎座で、吉例顔見世大歌舞伎の昼の部を観劇。
前日は中日劇場へ行くなどしていて、さて、「花水橋」に間に合うように起きられるかどうかと思っていたが、思いのほか早くに東銀座に着いたので、新橋演舞場まで寄り道出来たわいなァ。
で、筋書きは、歌舞伎座が1200円、新橋演舞場の花形歌舞伎が1300円。


歌舞伎座の昼の部は、「伽羅先代萩」(花水橋〜刃傷まで)の通しと、そのあとに、坂東三津五郎の舞踊2題(「源太」「願人坊主」)。
先代萩」を「通し」で見るのは、はじめて。花道がよく見える1階の座席を買っておいたので、見えない場面もなく、最後まで楽しんだ。
「床下」のどろどろ、成田屋の仁木弾正がよかったな。
仁左衛門の八汐が、憎々しいなかに、客席を沸かせるユーモアを備えて、台詞劇の「竹の間」を面白くしていた。菊五郎の政岡なので、「御殿」での飯炊きは、なし。子役のしどころも減って、あっさり進むが、その分テンポがある。(ちなみに、先代萩」の子役は、鶴千代に下田澪夏、千松に原口智照、細川勝元の小姓に渡部駿太)
仁左衛門の八汐は、千松に懐剣を突き立ててグリグリ、のところで、正面を切らずに、右肩を前にするかたちで、千松は半分隠れるような按配だった。
「対決」と「刃傷」の場をはじめて見たが・・・問註所が、まるで町奉行所のお白州並で、こんなところで、大大名のお家騒動を裁くのか、との違和感があった。権一の鬼貫は悪役味が薄かったが、ああいう役なのかしら?「刃傷」での仁木弾正は、妖術まで使うという設定の割りには外記左衛門(段四郎)を仕留めることも出来ずで、存外に腕が立たないのには、いささかがっかり。深手を負っている外記左衛門に、ひと指し舞えと命ずる細川勝元(仁左衛門、二役)には、首を傾げてしまうが、歌舞伎の裁き役というのは、えてして、さわやかな顔をして意外と冷たいことをしゃらっといったりする、といった印象。

足利鶴千代の下田澪夏ちゃんが、出色である。今夏の、第五回亀治郎の会の「奥州安達原」でのお君もすばらしかったが、この鶴千代もまた格別だ。こういう上手い子役が、ときどき現れては、芝居に可憐な華を咲かせるものなのだなァ、と思わせる。
セリフのキレがいいのに加えて、目が大きくてぱっちりしているから、顔立ちが化粧に敗けずに、明瞭な雰囲気がある。目線をきちんとキメているので、下を見て俯き加減になったり目が泳いだりすることもほとんどなくて、ために、自ずとお殿様らしい居ずまいと品位が出来上がって、見映えがよく立派。


初日の昼の部の終演は、午後4時9分頃だった。
  ----------------------------



産経新聞エナックに、今月歌舞伎座の紹介記事があったので、参考までに、
菊五郎流 円熟の政岡を披露』 ↓
http://www.sankei.co.jp/enak/2006/nov/kiji/01stagekikugoro.html