「かさが飛んで来ました」



ただいま、外は、雪が降っています。



 雪は降る、あなたは来ない〜。

 雪は降る、あばたは出ない〜。



どうして、共通一次、じゃなくてセンター試験の日は、雪になる確率が高いのだろう。



先週の土曜日に、雪が降らなくてよかった。観劇の日に雪だと難儀だから。でも、先週の土曜日は、午後から雨がどしゃどしゃ降ったけれど。



さて、話は、雪のことではない。



過日、こんなことがあった。



猫に飯を食わせていたら、玄関先に怪しいひと影。小窓を開けると、髪を短く整え妙にさっぱりしたスーツ姿の若い男がいる。「何か?」と訊くと、手にしていた傘を持ち上げて見せ、「いま、そこを歩いていましたら、この傘が飛んで来たのですが、こちら様の傘ではありませんか」という。

「ちがいますよ」と冷たくいってやると、「はぁ。…困りました。ご近所でどこか心当たりはありませんか」という。「よその家の傘なんて、いちいち知りませんよ」といったら、また「はぁ」といってじっと立っている。



「おひきとり下さい」といったら、立ち去ったが、いまどき、傘ぐらい落ちていたからって、見ず知らずの通りすがりの人間が、周辺の住民をいちいち訪ねて、傘の持ち主を探し回るなんてことはあり得ない。それだけで、充分に不審人物だ。



一見気が弱そうに見えて押しつけがましい態度は、どこぞの宗教の勧誘といった印象だったが、おひと好しの年寄りか子どもが対応に出たら、つけ込んで悪さをしよう、何か売りつけようという類かも知れない。注意しないといけない。

それにしても、歩いていたら傘が飛んで来たとは、いうことが奇想天外だ。あなたの傘でしょ?



(たとえば、「あぁ、それ、うちのです。ありがとう」と受け取ったら、どんな展開が待っているのだろう。気味が悪いね)