気づかいルーシー (東京芸術劇場 シアターイースト)


気づかいルーシー

原作:松尾スズキ(千倉書房「気づかいルーシー」)
脚本・演出:ノゾエ征爾

東京芸術劇場 シアターイーストでは、全11ステージが上演されたが、そのうち、8月22日(土)午後5時開演と、8月29日(土)午後7時開演の2ステージを観劇。8月22日は、初日。午後5時開演の初日は、6時25分ぐらいの終演だった。

開演前のロビーでは、カーテンコールでキャストといっしょに踊りましょう、ということで、「気づかいのうた」の振付のレクチャーも行なわれていたようだった。

出演は、

ルーシー: 岸井ゆきの
王子さま: 栗原類
馬、王の馬: 山中崇
おじいさん: 小野寺修二
兵隊、アーティスト、神父、お妃: 川上友里(はえぎわ)
兵隊、アーティスト助手、王様: 山口航太(はえぎわ)

楽家さん(作曲、演奏): 田中馨
楽家さん(作曲、演奏): 森ゆに


東京芸術劇場 シアターイーストの客席は、C列が最前列になっていた。

音楽は、「音楽家さん」のふたりが、ステージの上手や下手で、複数の楽器を適宜演奏する。ただのミュージシャンというよりも、パフォーマー的なところもあり、また、森ゆにというひとが、劇中ナンバーをうたうこともある。

舞台の上には、積み木(大きなジェンガのようである)があって、キャストは、その積み木の上に乗ったり、積み木の一部を動かしたり、組み立てたりして、物語のシーンをつくる。その大きな積み木(本体)は可動式にもなっている。
また、劇中、影絵の手法も用いられる。

舞台の様子。→https://twitter.com/kidukailucy/status/635088101782630401


おじいさんに拾われて育てられた女の子・ルーシーが、じつは、国を追われた王様とお妃様の娘だったと分かったことで、最後にはめでたく王子さまと結婚出来ちゃうという、いちおうはめでたしめでたしの結末なのだけれど、ストーリーとしては、ブラックユーモアを効かせたナンセンス童話、といった感じ。
皮を剥いで、それをかぶってなりすます。皮を剥がれても、中身だけで生きていたりとか、そんな展開の連続は、ふつうなら、すんなりとは受け入れ難いところだが、意外や、おもしろく見てしまえるのであった。

でも、馬の皮を被っていたのが王様&お妃だったのなら、おじいの皮を被って成り代わるのも、馬じゃなくて王様かお妃かのどっちかでなきゃ理屈に合わないよね、とか・・・・まぁ、そんな野暮なことは、いいっこなしか。

意外といえば、この舞台は、思った以上に子どもウケがよいみたいだった(客席に子どもは多くなかったにもかかわらず)。


なんといっても、タイトルロールのルーシーが文句なしに魅力的で、岸井ゆきのさんのルーシーのかわいさは、まさに無敵!(ルーシーハイキックって、あれ、いいね。けっこうスゴ技かも知れない・・・) 小劇場なので、座席の近さで、いっそう楽しい。

音楽や劇中ナンバーが作品世界にマッチして、いい味を出していた。


開演して早々に、ルーシーに握りつぶされる「おはぎ」と、「馬糞」の粘土が、どうにも気になる。引きちぎられ、片付けられ損ねた馬糞のかけらが舞台に落ちて、それを馬が踏んづけたり、積み木にくっついたりもして。

積み木に「馬鹿」と書いてあるのや、王子さまが「王子」と書いたのに、「、」を付けて、「玉子」になるのなどが、妙に可笑しかった。

上演時間(1時間20分と表示されていた。途中休憩なし)も、お手頃な長さだった。