新しい広場をつくる


平田オリザ「新しい広場をつくる 市民芸術概論綱要」(岩波書店、1900円+税)

http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/02/9/0220790.html


少し意地悪く読むと・・・「公共」という場に演劇を持ち込むことで、演劇人の職域を広げ、税金を食い扶持にする道を開拓して来た平田オリザ的演劇人の活動をPRする本、なのかな、これは。

著者が、キラリ☆ふじみでしたことを具体的に書いていたり、観客オンリーの立場からは見えづらい公共ホールの問題点、このところ増えている市民ミュージカルなどの市民参加型舞台の功罪を指摘したあたりは、なるほどと思ったり、おもしろく読んだ。

ただ、私は、観劇といえば娯楽だと思っているし、演劇はエンターテインメントとして興行的に成立することがふさわしいあり方だと思っているので、平田オリザ一派(?)みたいな演劇人が、公共ホールの芸術監督等で、地方自治体やその関連団体のなかにポジションを得るなどして税金に食いつこうとする動きは、なんだか疑問に感じるのだよね。
だいたい、そうなると、その芸術監督になった人物に近い劇団もくっついて来て、いっしょにいい思いが出来そうだし。

蜷川幸雄野村萬斎が芸術監督なら、その名前だけでも宣伝効果があるし、メリットがありそうだけれど、一般的には知名度のない(平田オリザ氏の息がかかったような)人物を芸術監督に迎えたとして、どんないいことがあるのだろう? もし、たとえば青年団出身のほとんど知られていない演出家が、自分の住んでいる市のホールで芸術監督になったとしたら、きっといやだな。
それに、「ホームレスプロジェクト」とか持ち出されると、そういうことは、こまばアゴラ劇場で存分にやってみたらいいじゃん、とか思ってしまう。